久留米工業大学
新着情報
2021.09.03航空と宇宙は成長産業。これからの日本・世界を支える航空宇宙工学人材を育てたい。
高校生のみなさんは、航空と宇宙の産業に世界中のお金が集まり、急成長していることを知っていますか?
これから世界は、成長し続ける航空宇宙産業を支える人材の不足が問題になると考えられているそうです。
空飛ぶクルマや輸送ドローン、民間ロケットの開発など、航空宇宙工学人材の存在感が増しています。
数学に少し自信がない方でも問題ないそうです。少しでも興味があれば、最後まで読んでみてください。今回は、久留米工業大学で新しいロケットエンジンなどを研究している麻生教授に、航空宇宙工学の魅力などをお話してもらいました。
麻生茂教授のプロフィール
所属 : 久留米工業大学 工学部 交通機械工学科 特別教授 (九州大学名誉教授)
学位 : 工学博士(九州大学)
学会 : 日本航空宇宙学会 / 日本流体力学会 / アメリカ航空宇宙学会
経歴 :
2019年4月 - 現在久留米工業大学 工学部交通機械工学科 特別教授
1999年4月 - 2019年3月九州大学 工学研究院 航空宇宙工学部門 教授
1986年6月 - 1999年3月九州大学 工学部航空工学科 助教授
1981年4月 - 1985年5月九州大学 工学部航空工学科 助手
<研究分野>フロンティア(航空・宇宙) / 航空宇宙工学 / 航空宇宙流体力学
<研究キーワード >小型電動航空機 / 宇宙往還機工学 / ハイブリッドロケット / 空力加熱 / 空気力学 / 航空宇宙工学
本日はよろしくお願いします。高校生にワクワクする楽しい世界をお見せできればと思います。
現在私は、電動で動く航空機や輸送用ドローン、ハイブリットロケットエンジンなどを研究しています。
世界は持続可能な社会を実現させるために、環境に配慮した技術の開発に熱気を帯びています。
先進国をはじめとした世界中の多くの国が、環境に配慮した国策を打ち出していることもあり、世の中が大きく変わろうとしています。まさに変革期を私たちは生きています。
高校生のみなさんは電動で動く車の話題が身近かもしれません。ガソリンを燃やして動く乗り物は、地球温暖化や大気汚染に影響を及ぼしていると言われており、環境に優しい電動乗り物への乗り換えが進められています。このような背景があり航空機の電動化も加速しています。
こちらは燃料エンジンがついていたセスナ機ですが、今はこちらに設置する電動パワーユニットを開発しており、近いうちには電動で飛べるようにする予定です。
こちらは地域のドローン開発会社と連携し、開発している輸送用ドローンです。5kgまで運べる仕様で、2021年度中には実証実験する予定です。現在は校内のグラウンドで飛ばしながら開発を進めています。
将来的には200kgを運べるように開発を進めており、人間2名を運べる空飛ぶクルマに発展させる予定です。
(約150Nの推力を出している新規開発中のハイブリッドロケットエンジンの燃焼実験の様子)
固体ロケットエンジンと液体ロケットエンジンの長所を合わせたハイブリッドロケットエンジンを研究しています。
こちらも世界最先端の研究になります。ロケットを飛ばすコストを劇的に下げ、重量がとても軽くなり、さらに環境にも優しいロケットエンジンです。まさに革命が起きると思います。
ありがとうございます。多くの人が同じイメージを持たれていると思います。
技術も進んでおり、最近の電動モーターは、ガソリンエンジンより軽いにも関わらず、同じぐらいの大きさと力強さを兼ね備えています。
さらに、電動モーターを使った電動パワーユニットの方が運行費用が安く、環境にも優しいです。
また、ガソリンエンジンの場合と比べて1/4のエネルギーで同じ距離を飛べます。
現在は、より安全により力強く飛ばせるように研究しており、さらにより大きな航空機も飛ばせるようにしたいと考えています。現在開発中の電動航空機は4人乗りです。
ちなみに、久留米工業大学には複数の模型や航空機を置いており、実際に乗ったり触ったり飛ばしたりできます。
パソコンの中で絵を描くだけ。パソコンの中でシミュレーションするだけ。そんな大学ではありません。久留米工業大学の強みはものづくりですから。
チームで考えて、作って、成功したり、失敗したり。とても楽しいと思いますよ。
輸送用ドローンですが、本当に幅広い可能性を秘めています。
山間部の高齢者は買い物にいくこと自体が大変です。車の免許も返却しており、生きるための物資を手に入れることに、多大な労力を要します。
ネットにも弱く、なんとか下山して買い物をするか、買い物代行に依頼するか。とにかく大変です。
そういう方々に、食べ物や消耗品などを定期的に運べるだけでも、とても大きな社会貢献になります。
200kg輸送が実現すると空飛ぶ自動運転車と呼べるでしょう。そうなれば自由に買い物に行くことができます。
空飛ぶクルマになるとさらに幅は広がります。渋滞に巻き込まれないよう空を飛んだり、離島で海を渡るのが困難な場合も自由に行き来できたり。
高度100〜200メートルぐらいを飛行することを想定しています。
久留米工業大学の近くにはドローンを開発している会社があり、本学内には自動運転を研究開発している教授がいます。
いい環境だと感じています。
★ 日本だけでなく世界中の先進国で高齢化は問題とされています。本当に多くの人のためになる研究開発ですね。ハイブリッドロケットエンジンについては、まだピンときていないのですが、決定的な違いは何になりますか?
そうですね。ハイブリッドロケットエンジンの最たる特徴は、構造が簡単で、エンジンをつけたり消したり自由にできることです。
これまでの固体ロケットエンジンでは、一度点火してしまうと、途中で消すことができません。もちろん点火し直すこともできないです。なので、一度飛ばしてしまうと飛ばしっぱなしになりますが、ハイブリッドロケットエンジンは、つけたり消したりコントロールできることが素晴らしい点です。
液体ロケットエンジンもつけたり消したり自由にできますが、構造が複雑でとても重量があります。
これまでのロケットの機体は、ほとんどが使い捨てで、エンジンもろとも飛ばして終わりでした。ハイブリッドロケットエンジンは、機体の再利用が可能で、燃料部分を入れ替えると、また飛ばせます。
(ワックス燃料の写真)
エンジンの仕組み自体はとてもシンプルです。燃料はワックスやプラスチックで、酸化剤(酸素など)を入れて燃やすだけです。酸化剤の供給を止める消えます。
やり方はシンプルですが、これを制御するシステムなどの研究開発が大変です。しかし、そこが創意工夫できる面白い点でもあります。
ちなみに、ざっくりのお話になりますが従来のロケットでは1つ機体を打ち上げることに約80億円かかります。先日宇宙旅行に使われたハイブリッドロケットエンジンをのせた宇宙飛行機は、1飛行1人当たり約2,800万円でした(30分の飛行、5分の無重力体験)。将来的にはコストを10分の1以下に下げることが可能だと思います。
海外旅行に行く感覚で、宇宙旅行に行ける日が近づいています。
世の中を変える可能性を持った最先端の研究をしていること、優秀な先生方がいること、そして机上に終わらさず、実際に触って、考えて、作って、試行錯誤できる環境が整っていることです。
教授と学生が近いことも魅力です。
世界の産業の中で5%成長を実現できている分野はほぼないと思います。航空宇宙はこれからますます人材不足になります。
航空宇宙工学は夢がある工学です。「航空宇宙分野で活躍したい、移動で活躍したい」そんな思いを持った方はぜひチャレンジしてほしい。一緒に学びましょう。一緒に世界を盛り上げましょう。久留米工業大学で待っています。
▼航空宇宙システム工学コースの特設サイト▼
https://www.kurume-it.ac.jp/kotsu/
(2019年4月に完成した航空宇宙実習棟の外観写真)
取材者:高田樹彦
久留米工業大学 広報コーディネーター
株式会社サンカクキカク 企画営業部 / 新規事業開発部 / 広報PR部 マネージャー