1. 本ビジョンの位置づけ
本ビジョンは、本学の現状・課題認識を示した上で、「2021年ビジョン」を達成するために必要な取り組みの方向性を体系的に整理したものである。今後、「2021年ビジョン」へ向けて大学が実施する各年度の施策・取り組みは、本ビジョンの方向性に沿って検討・立案されるものとする。
また、「2021年ビジョン」とは、学校法人久留米工業大学(以下、本法人)が策定・推進する「実施計画」等を踏まえ2021年を目処として、「大学が目指すべき姿」を明らかにしたものである。本法人では、これまでに「前期実施計画(2013~2015年)」を策定・推進してきた。現在は「後期実施計画(2016~2018年)」を推進中であり、その後次期の実施計画を策定する見通しとなっている。次期の実施計画が終了する2021年度末には「2021年ビジョン」に掲げた大学像を概ね達成できるよう、本計画に沿った各種の施策・取り組みを推進する。
以下、「2.大学が目指すべき姿(2021年ビジョン)」において、具体的に4分野のビジョンを提示する。
2. 大学が目指すべき姿(2021年ビジョン)
前述のとおり、学校法人久留米工業大学が策定・推進予定である「次期の実施計画(2019~2021年)」が終了する2021年度を目途に、建学の精神「人間味豊かな産業人の育成」を具現化した大学像である「2021年ビジョン」を以下のとおり策定する。今後の各種施策は、当該ビジョンの実現に資するものとして企画・実施・評価される。
(1)「教育」ビジョン
経済のグローバル化が急速に進む中、久留米市周辺でもグローバルビジネスへ参入する中小企業が増加し、産業においては「ものづくり」と「サービス」の融合が進展している。本学ではこうした情勢を教育内容に反映し、建学の精神である「人間味豊かな産業人の育成」の実現を目指す。
まず、カリキュラム・教育組織を継続的かつ柔軟に検討・改善できる体制を整えることで、産業・経済の情勢・ニーズに最も適した教育を常に提供する。久留米大学他の近隣大学との連携を強化し教育機能を相互補完することで、「ものづくり」と「サービス」の融合やグローバル化へ対応したカリキュラムを実現する。
小規模な大学であることを強みとするため、学生全員に「目が届く大学」を目指す。具体的には、いわゆるIR(Institutional Research)を確立し、その結果に基づくエンロールメント・マネジメントを導入する。これにより、学生個々人の能力・意欲に合わせた学習・生活指導の仕組みを確立し、不必要な退学・休学に至る学生を最小化する。また、IRのデータは前述のカリキュラム・教育組織の検討・改善へ継続的にフィードバックし、エビデンスに基づく教育の質向上の仕組みを確立する。
以上のような取り組みにより教育の質を本質的に高め、「グローバル展開するものづくり産業人教育の総合大学」となることで、その時々の産業・経済から求められる「人間味豊かな産業人」を育成・輩出できる大学を実現する。また、それを種々のステークホルダーへ効果的に広報し、高いプレゼンスを地域で確立することで、学生(受験生)の量・質の安定的確保と卒業生の高い就職満足度を実現する。
(2)「研究」ビジョン
筑後・鳥栖地域には有力な工業地域が数々存在するが、これらと連携できる理工系大学は本学以外に存在しない。本学は、工学系単科大学としての強みを地域貢献という形で活かしやすい立地にある。そこで本学では、地域のニーズを踏まえつつ研究活動と社会貢献活動を一体的に実施することで「地域の技術基盤」としてのプレゼンスを確立する。
戦略的予算配分や種々の研究支援といった全学的な仕組みを確立する。また、公平な教員評価制度を確立すると共に、柔軟に教育・研究・社会貢献・組織運営の負荷配分を調整できるよう人事制度を抜本的に見直し、教員がモチベーションを高めつつ研究へ注力できるようにする。
本学における強みとなり得る複数の研究領域を「重点支援領域」として指定する。そして、特に重点的な予算的・人的サポートの下で研究水準を引き上げ、企業からの受託研究や大型外部資金獲得、知的財産権取得を目指す。
「重点支援領域」以外の個別研究テーマについては、学内競争的資金の創設によって予算的サポートを行い、研究水準を向上させ、科学研究費補助金の申請数・獲得率上昇を図る。また、研究に対する事務の支援体制、若手教員の教育体制など、研究支援の体制を全学で整える。
こうした支援によって研究水準の向上、地域内でのプレゼンスの向上、産学連携の活発化による外部資金獲得につながり、それが更なる研究水準の向上に資するという好循環を確立する。また、教育面(特に大学院)の改革によって大学院学生を安定的に確保し、大学院学生を研究や産学連携に参加させることで、相乗的に質の高い(大学院)教育・研究を提供する。
(3)「社会貢献」ビジョン
久留米市は福岡県の中でも有数の工業地域であり、そこに設置された工学系単科大学である本学は、地域企業と連携して地域活性化に資することは大学の重要なミッションである。久留米工業大学は、地域の大学・企業と緊密なネットワークを構築することで、「地域の技術基盤」として技術面での中核的役割を担う。
産学連携の観点では、既存の枠組み(久留米工業大学地域連携推進協議会など)を最大限活用しつつ、近隣の中小企業との共同研究や技術指導、企業技術者の再教育などを継続的に実施することで、地域産業の技術水準向上に貢献する。既に高い技術力を有する一部の中堅企業や大企業については、組織的・包括的連携を深化させ、競争力向上に資する研究開発成果を継続的に創出できるようにする。
これらを実現するため、大学自身の研究力を高める不断の取り組みを推進すると共に、地域の高等教育機関のネットワークである「高等教育コンソーシアム久留米」を実質的に機能させ、本学と近隣高等教育機関との間で機能補完をしつつ、一体的な産学連携体制を確立する。
こうした取り組みや成果を通じて、本学が「地域の技術基盤」としてのプレゼンスを地域において確立する。また、産学連携を継続的な外部資金獲得につなげることで、研究水準を向上させ、それがさらなる産学連携へ結びつくという好循環を確立する。
(4)「経営」ビジョン
小規模地方大学である本学は、大学の人的・物的資源を最大限に有効活用し、能力を発揮させていくことが重要である。そして、今後の大きな環境変化の中で持続的に発展していくためには、従来の活動を安定的に継続していくことよりも、環境変化に応じて柔軟に対応できることが求められている。そこで本学は、適切なガバナンスと組織を実現し、高い専門性を有する人材、十分な財源、そして客観的情報を確保することによって、こうした要請に応える経営を行う。
多様な構成員の意見を集約しつつも、学長のリーダーシップのもとで、専門性を持つ者が権限と責任を委譲され、迅速な意思決定を行うことができるようなガバナンスを実現する。
教育研究は教員所属組織を母体とし、教育活動の単位である教育プログラム、研究活動の単位である研究プロジェクトを柔軟に編成することにより、効率的で自由度が高い教育研究活動を行う。また、教育研究支援組織の専門化と分業化を進め、教育研究、業務の高度化を実現する。
トップレベルの教員及び専門的な職員の確保は大学経営の最重要項目であり、全学的視点からの採用、育成、評価を可能とする制度と権限を確立する。
学納金のみに限らない多様な財源を確保して安定的な財政基盤を確立し、将来への投資として学内配分を行う。
そして大学の活動状況を客観的な情報として把握していくことによって、問題意識の共有、科学的かつ合理的な経営判断を可能としていく。
平成28年11月16日