大学の工学系学部・学科から先生になるには?目指せる教師や教員免許の種類、メリットも解説

工学教育

先生になるための進路選びとして前提となるのが、自分が教えたい教科・科目の教員免許が取得できる進路先を選ぶことです。

数学や理科、工業などの理系分野の先生になりたいと考えている人のなかには、「大学の工学部や工学科を進路として考えているけれども、自分がなりたい先生の教員免許は取れる?」「大学の工学部や工学科から先生になるにはどうすればいい?」と考えている人も多いでしょう。

大学の工学系の学部や学科から先生になることは可能です。さらに教員免許を取得する以外にも多くのメリットがあります。

この記事では、大学の工学系学部や学科から先生になりたい人のために、目指せる教師や教員免許の種類、工学系学部や学科を進路として選ぶメリットを解説します。これからの進路選びに、ぜひ役立ててください。

工学分野の先生になるために必要となる教員免許

工学系など分野を問わず、学校の先生になるためには、教員免許の取得が必須となります。

教員免許を取得するには、取得したい教員免許の種類に応じた単位を取得し、卒業時に教育委員会への申請が必要です。

教員免許には教えられる学校や学歴によって以下の種類があります。

教えられる学校での教員免許の種類

  • 幼稚園教諭免許状
  • 小学校教諭免許状
  • 中学校教諭免許状
  • 高等学校教諭免許状

学歴での教員免許の種類

  • 二種免許状(短大卒相当)
  • 一種免許状(大学卒相当)
  • 専修免許状(大学院卒相当)

まずは、どの学校で何の教科・科目を教えたいかで進路を選びましょう。

教員免許の種類や取得方法については、こちらで詳しく解説しています。

次に、大学の工学系学部・学科で取得できる教員免許について解説します。

大学の工学系学部・学科から目指せる学校の先生の種類

大学の工学系学部・学科から目指せる学校の先生の種類を解説します。

中学校・高校の教員免許

教職課程のある大学の工学系学部・学科を必要な単位を修得して卒業または修了することで、「中学校教諭一種免許状」や「高等学校教諭一種免許状」の取得が可能です。

なお、高校の先生の教員免許は大学院卒業相当の「専修」または大学卒業相当の「一種」の2種類のみ設定されています。高校の先生になるためには、一般的に高校卒業後の進路は大学または大学院のみとなるのを覚えておきましょう。

中学校と高校の教員免許は、多くの大学で同時取得が可能です。中学校と高校の教員免許を同時取得するメリットとデメリットを以下にまとめました。

メリット

  • 採用で有利になる
  • 受験できる教員採用試験の選択肢が広がる

中高一貫校や付属高校のある私立中学など、同じ職員が中学と高校両方の授業を担当する、または中学と高校で異動が発生する学校があります。中学校と高校の教員免許を両方持っている場合、中学校と高校両方で教鞭を取れるため、採用で優遇されることが多いです。

公立学校の教員になるためには、地方自治体ごとの教員採用試験に合格しなければいけません。ただし、東京などの中学校と高校が共通募集となっている地方自治体では、受験には中学校と高校両方の教員免許が必要です。中学校と高校の教員免許両方を持っていれば、受験できる教員採用試験の選択肢が広がります。

デメリット

  • 大学生活がやや忙しくなる
  • 中学校にない教科や科目もある

高校の教員免許のみを取得するより、中学校、高校両方の教員免許を同時取得する方が大学で必要な単位数が多くなります。大学で履修が必要な教科や科目が増えたり、教育実習の期間が延びたりするため、大学生活がやや忙しくなるのがデメリットです。

教員免許の教科・科目の中には「工業」「情報」のように高校の教員免許にのみ存在しているものがあります。元々高校の教員免許にのみ存在している教科や科目は中学校の教員免許にはありません。

中学校と高校の教員免許を取得したい、または中学校の先生を目指したいなら、別の教科や科目を選択したり、別に特定の教科や科目を履修したりする必要が出てきます。場合によっては取得したい教員免許の教科・科目に合わせて進路先を見直す可能性も出て来るでしょう。

小学校の先生になれるチャンスもある?

小学校の先生になるためには「小学校教諭免許状」が必要です。小学校の先生は基本的に担任が全教科・科目を担当するため、小学校教諭免許状を取得するには教育学部や教育学科など、教員養成を目的とした学部・学科の履修が前提となります。

ただし中高いずれかの教員免許を取得していると、小学校で教科の指導、総合的な学習の時間(取得している教員免許の教科に関するもののみ)道徳、特別活動の指導が可能となります。

小学校の教員不足への対策や、小学校における専門性の高い指導へのニーズの高まりを受けて、特定の教科のみを指導する小学校の「専科教員」が採用されるケースも多くなりました。

後程くわしく説明しますが、工学系学部・学科で取得できる教員免許の教科や科目は、専門性の高いものが多くなっています。工学系学部・学科で取得した教員免許を活かし、将来小学校の専科教員として活躍することも可能です。

また、東京都教育委員会では中高教員免許を取得済みの人に対して、小学校の教員免許取得の要件を緩和する案も議論されています。将来的に工学系学部・学科で取得した教員免許を元に、小学校の担任教員として活躍できる日が来るかもしれません。

工学系学部・学科の大学で取得できる教員免許の教科・科目

工学系学部・学科ではおもに以下の教科・科目の教員免許が取得できます。

  • 数学
  • 理科
  • 技術
  • 工業
  • 情報

それぞれの教科や科目が取得できる工学系学部・学科とともに解説します。

数学

おもに以下の工学系学部・学科で数学の教員免許が取得できます。

学部学科
理工学部理工学科、システム理工学科、情報システム工学科、電子光工学科、計数工学科、物理工学科、数物科学科、システム創成工学科、数理・電気電子情報学科など
工学部建築学科、社会環境工学科、電子情報工学科、情報工学科など
コンピュータ理工学部コンピュータ理工学科
基幹工学部機械工学科、電気電子通信工学科
先進工学部情報メディア工学科
システム理工学部環境システム学科、機械制御システム学科、数理科学科、生命科学科、電子情報システム学科など
生産工学部数理情報工学科など

数学の先生になるための情報は、こちらのページもぜひ参考にしてください。

理科

理科の教員免許は、ひとつの教員免許で生物、科学、物理と異なる科目を教えられるのが特徴です。以下の工学系学部・学科で理科の教員免許が取得できます。

学部学科
理工学部応用科学生物学科、自然エネルギー学科、数物科学科、地球環境防災学科、物質創生科学科、化学・生命理工学部など
工学部生物科学科、生命環境科学科、応用理工系学科、環境社会工学科、情報エレクトロニクス学科、化学・バイオ工学科など
創造理工学部環境資源工学科、社会環境工学科
先進工学部応用科学科、環境科学科、生命科学科
先進理工学部応用科学科、応用物理学科、生命医療学科など
生産工学部応用分子科学科、機械工学科、創生デザイン工学科など

理科の先生になるための情報は、こちらのページもぜひ参考にしてください。

技術

技術は中学校教員免許のみに存在する教科です。中学校の技術家庭科の技術分野における教科指導を行います。

以下の工学系学部・学科で技術の教員免許が取得できます。

学部学科
理工学部理工学科など
工学部システム情報工学科、機械工学科、電気電子工学科、土木建築工学科、創生工学科など
基幹工学部機械工学科、電気電子通信工学科など
先進工学部ロボティクス学科、情報メディア工学科など
システムデザイン工学部デザイン工学科
生産工学部応用分子科学科、土木工学科、創生デザイン工学科など

工業

工業は高校の教員免許のみに存在する教科です。工業の免許ひとつで50以上の関連科目を教えられます。さらに、工業の教員免許は「専門科目の履修をもって教職課程を履修したものとみなす」という特例措置があるため、ほかの教員免許よりも取得に必要な単位が少ないのが特徴です。

前述の技術とともに工業の教員免許取得には実技が必要な観点から、通信教育過程での教員免許取得が難しくなっています。技術や工業の先生になりたいときにも、工学系学部・学科をはじめ教員免許が取得できる大学へ進学するのが一番の近道となります。

以下の工業系学部・学科で工業の教員免許が取得できます。

学部学科
理工学部理工学科、創造工学科、機械科学科、化学・生命理工学科、情報電子工学科など
工学部システム情報工学科、機械工学科、電気電子工学科、土木建築工学科、創生工学科、建築学科、など
先端理工学部機械工学ロボティクス科、電子情報通信学部など
先進工学部ロボティクス学科、情報メディア工学科、機械理工学科など
システムデザイン工学部デザイン工学科、システムデザイン工学科
生産工学部応用分子科学科、土木工学科、創生デザイン工学科など

工業の先生になるための情報や教員免許については、こちらもぜひ参考にしてください。

情報

情報は高校にのみ設定されている教員免許です。以下の工学系学部・学科で情報の教員免許が取得できます。

学部学科
理工学部共生システム理工学科、工学システム学科、情報システム工学科、電子情報工学科、システムデザイン工学科、管理工学科、システム創成工学科、数理・電気電子情報学科など
工学部情報エレクトロニクス学科、電気電子工学科、電子情報物理工学科、情報通信工学科、情報工学科、創生工学科、など
コンピュータ理工学部コンピュータ理工学科
先端理工学部数理情報科学科、知能情報メディア学科
先進工学部情報メディア工学科
システムデザイン工学部システムデザイン工学科
基礎工学部情報科学科
生産工学部数理情報工学科など

工学系学部・学科から先生を目指すメリット

工学系学部や学科で取得できる各種教員免許は、大学の他の学部・学科でも取得可能です。工学系学部・学科から先生を目指すメリットを解説します。

自分の学びたい専門的な分野が選べる

工学系の学部や学科は、ITやシステムに関連するものから建築、デザインに関するもの、生命や環境、科学に関するものなど幅広い学部やコースがそろっています。

自分が学びたい専門的な分野を大学でしっかりと勉強できるのは、大きなメリットです。専門的な知識や、自分の得意な科目のおもしろさを生徒に教えたいという人にもぴったりでしょう。

教えたい教科・科目に応じて進路が選べる

工学系の学部や学科では、数学や理科、技術、工業、情報と理系のさまざまな教科・科目の教員免許取得が目指せます。

「高校で数学を教えたい」「中学校で技術の先生になりたい」「工業高校の先生になりたい」など、先生になりたい人が持つ将来の希望は人それぞれです。

工学系の学部や学科によっていろいろな教科・科目の選択肢があるため、将来教えたい教科や科目に応じた進路が選べます。

卒業後取得が難しい技術や工業の教員免許が取得できる

「教職課程を取らずに大学を卒業したが、先生になりたい」「大学の卒業単位は履修できたが、教職課程の単位が足りずに教員免許が取得できなかった」という場合でも、大学で履修した単位はなくなりません。
大学卒業後、通信制大学などで必要な単位を履修すれば教員免許取得は可能です。

ただし、通信制大学などで取得が難しい教員免許の教科・科目もあります。工学系学部・学科で取得が目指せる中学校の「技術」と高校の「工業」もそのひとつです。

中学校の技術や高校の工業の教員免許は取得に実技が必要なため、レポート提出やスクーリングで単位を取得していく通信制大学では必要単位の履修が難しくなっています。

中学校の技術や高校の工業の教員免許取得を目指すには、高校卒業後に取得ができる大学を進路として選び、必要な単位を履修して卒業するのが一番の近道です。工学系の学部・学科を進路に選ぶことで、中学校の技術や高校の工業の教員免許もスムーズに取得できるでしょう。

教員免許以外にも卒業後有利となる資格取得が目指せる

専門的な技術やスキルを勉強できる工学系学部・学科では、以下のような教員免許以外にも取得を目指せる資格が多くあります。

  • 電気主任技術者(1・2・3種)
  • 社会教育主事
  • 学芸員
  • 自動車整備士(3級、2級、ガソリン・ジーゼル)
  • 建設機械施行技士(1・2級)
  • 衛生工学衛生管理者
  • 労働衛生コンサルタント
  • 労働安全コンサルタント
  • 技術士補
  • 情報処理技術者
  • 第1級陸上特殊無線技士
  • 第3級海上特殊無線技士
  • 建設機械施工技士(1・2級)
  • 電気通信主任技術者
  • 弁理士
  • 基本情報技術者
  • システムアドミニストレータ
  • 危険物取扱者(甲種)
  • 毒物劇物取扱者
  • 衛生工学衛生管理者
  • 公害防止管理者(大気・水質・ダイオキシン類)
  • 放射線取扱主任者(1・2種)
  • 作業環境測定士(1種)
  • 環境計量士
  • 中小企業診断士
  • 建築士(1・2級)
  • 建築設備士
  • 木造建築士
  • 建築施工管理技士(1・2級)
  • 消防設備士
  • アーク溶接特別教育
  • 車両系(整地等)運転技能講習
  • フォークリフト運転技能講習
  • カラーコーディネーター

教員だけでなく、一般企業への就職に有利となる資格取得が同時に目指せるのも、工学系学部・学科で学ぶメリットです。

工学系学部・学科から先生になるための大学選びのポイント

先生になるために大学の工学系学部・学科を進路とする場合、大学選びに迷う人も多いでしょう。これからの志望校選びにも参考になる、工学系学部・学科から先生になるための大学選びのポイントを解説します。

教職課程のある大学を選ぼう

大学で教員免許を取得するためには、卒業に必要な単位とともに教員免許取得に必要な単位を履修していくことになります。教員免許取得に必要な単位を在学中に取得できるのが、教職課程です。かならず工学系学部・学科に教職課程が設けられている大学を選びましょう。

自分が取得したい教科・科目の教員免許に対応しているか

教職課程が設けられている工学系学部・学科でも、それぞれの学部や学科で取得ができる教員免許の教科・科目が異なります。自分が取得したい教科や科目の教員免許に対応している学部・学科を選びましょう。

たとえば久留米工業大学には5つの工学系学科があり、すべての学科で教職課程を設けていますが、取得できる教員免許の教科・科目が異なります。

また、教育創造工学科では4種の教員免許の取得にトライできます。

取得できる教員免許取得できる学科
中学校教諭一種免許状(数学)
高等学校教諭一種免許状(数学)
教育創造工学科
中学校教諭一種免許状(理科)
高等学校教諭一種免許状(理科)
教育創造工学科
高等学校教諭一種免許状 (工業)機械システム工学科
交通機械工学科
建築・設備工学科
情報ネットワーク工学科
高等学校教諭一種免許状 (情報)情報ネットワーク工学科

各大学では、学部・学科で取得できる資格一覧を公開しているため、自分が取得したい教員免許の教科・科目に対応している学部・学科を選びましょう。

資格取得の条件や実績も確認しておこう

工学系学部・学科では、教員免許だけでなく、ほかのいろいろな資格の取得を目指すことも可能です。特定の資格を取得するための受験条件を満たせる学部や学科もあれば、在学中に資格取得を目指すためのフォローやサポートを行っている大学もあります。

キャンパスやコースの特色などもチェック!

工学系学部・学科は多くの大学に併設されています。自分が取得したい教員免許が取得できるのはもちろん、充実した学生生活が送れるかどうかもチェックしておきましょう。

大学の構内設備や講座の内容、就職の実績やサポート、イベントやコースの内容などもしっかりチェックすると、より納得のいく大学選びにつながります。

大学の工学系学部・学科から先生を目指そう!

工学系学部・学科で取得できる教員免許の種類と、大学選びのポイントについて解説しました。工学系学部・学科からは専門性の高い、いろいろな理系教科・科目の教員免許取得が目指せます。

まずは自分が将来何の先生になりたいかを考えたうえで、学びたい内容、取得したい資格もふまえ大学選びをしましょう。

工学系学部・学科は将来的なニーズも高いITやシステムに関連したもの、建築や設備、電気など生活に必要なもの、生命や科学、環境と持続可能性と関連したものなど多彩な学びが期待できます。ぜひ工学系学部・学科から先生を目指してみましょう。

 

工学分野の先生を目指せる学科

 

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