地球文化の発達のため、今やビジネスの場は、世界から宇宙へと広がっています。
多くの企業が宇宙ビジネスに取り組み、宇宙開発は急速な成長を遂げているのです。
将来、宇宙開発に携わりたいと考えている人は、宇宙開発の意義、日本の現状などを把握しておきましょう。
本記事では、宇宙開発のメリット・デメリット、仕事の種類などについても詳しく解説します。
※本学の教授が「宇宙開発の未来」や「航空宇宙工学の魅力」について解説している動画も参考になりますので、ぜひご覧ください
目次
宇宙開発とは
「宇宙開発」と聞くと、ロケットの打ち上げや、宇宙ステーションなどの取り組みを思い浮かべる人が多くいます。
しかし、宇宙開発は、これらの取り組みだけではありません。宇宙開発の理念は広く、宇宙空間を人類のために役立てる活動全般が含まれます。通信放送、人工衛星、ロケットの開発や、それに伴う技術も宇宙開発の一部です。
例えば、近年では超小型衛星の打ち上げが盛んに行われていますが、環境保護や地球観測だけにとどまらず、インターネットの高速通信や技術検証などにも利用されています。
宇宙開発には、多くのテクノロジーが必要です。そのため、研究機関だけではなく、大学や民間企業も宇宙開発分野に相次いで参入し、市場が拡大しています。
世界的規模で宇宙開発を行う理由
現在、宇宙開発は世界的な規模で行われています。その理由は、大きく分けて3つあります。
- 人類や文明の発展
- 宇宙空間の解明
- 地球と地球環境保護
宇宙開発の主たる目的は、宇宙空間を開拓し、地球環境や人類の生活をより良くするためです。宇宙空間を研究し、その研究成果として人類の生活に役立てることを目指しています。
日本における宇宙開発の現状
宇宙開発は大きな可能性を待つ分野のため、世界の国々が積極的に取り組んでいます。日本も他国に遅れを取らないように、様々な取り組みを進めていますが、欧米との差は否めません。
日本は、欧米に比べ、技術水準・予算・人員などに限りがあります。そのため、最初の段階から遅れが見えているのが現状です。また、経済の停滞も、宇宙開発に大きく影響を及ぼしています。
これらの現状を受け、日本政府は、2020年6月に「宇宙基本計画」を5年ぶりに改定し、以下の4つの柱を掲げました。
- 宇宙での安全保障の確保
- 多発する災害や地球規模課題の解決への貢献
- 科学探査の推進
- 経済成長とイノベーションの実現
組織やプロジェクトの効率化を図り、プロジェクトの優先順位を明確にすることで、合理的な宇宙開発を目指しています。
出典:内閣府(宇宙開発基本計画概要)
宇宙開発のメリットとデメリット
宇宙開発は主にメリットが大きく取り上げられますが、デメリットも存在します。宇宙開発のメリット・デメリットの両方を知ることが大切です。
宇宙開発のメリット
宇宙開発は、科学的技術や知識の向上が期待できます。科学的技術が向上することで、人類の生活に活用できる点がメリットです。
また、宇宙開発事業が盛んに行われることで、経済的効果や雇用の増大などにもつながります。宇宙開発は大型公共事業としての働きも持ち、携帯電話などの社会インフラの提供に貢献できるのも利点です。
宇宙は大きな可能性を秘めているため、宇宙開発に取り組むことで、食糧難や人口問題などの解決にも役立つでしょう。
宇宙開発のデメリット
宇宙開発には、莫大な資金が必要です。研究にはコストがかかり、研究期間も長くなるため、たびたび資金がネックになります。莫大な公的資金を投入したとしても、期待通りの成果を得られるかどうかもわかりません。
また、宇宙にロケットや人工衛星を飛ばすことで、「スペースデブリ」と呼ばれる宇宙ゴミの増加も問題視されています。
さらに、宇宙飛行士の健康被害の問題もあります。
- 心循環器や骨などに影響
- 宇宙放射線の被ばく
など、宇宙飛行士の体への負担は大きいです。
宇宙開発のために研究した技術が、テロなどに悪用されるリスクもあるでしょう。
宇宙開発の仕事の種類
ここまで、宇宙開発についての概要や現状に触れてきましたが、具体的に、どのような仕事があるのでしょうか。
宇宙開発に携わる仕事は数多くありますので、代表的な仕事をいくつか紹介します。
宇宙開発技術者(宇宙開発エンジニア)
宇宙開発技術者は、宇宙開発に関する技術開発と研究を行います。主に研究機関や大学、民間企業などに所属するのが一般的です。宇宙産業を支える技術者として、様々な場所で活躍しています。
ロケットや医療技術の開発から宇宙観測など、仕事内容は多岐にわたり、宇宙開発の研究活動の中心となるリーダー的存在です。
人工衛星開発技術者
過酷な宇宙空間でも、データ収集や探索を行える人工衛星を開発するのが人工衛星開発技術者です。
人工衛星に使用する素材の開発から、プログラミング、カメラの開発などに携わります。高度な機械工学や電気工学、宇宙工学などの知識と技術が必要な職業です。
主に、JAXA(ジャクサ:宇宙航空研究開発機構)や企業の宇宙開発部門で活躍しています。
宇宙機関の職員
宇宙開発を行う機関である宇宙機関は、主に国などによって運営されている公的機関です。機関内には、有人宇宙開発部門や情報システム部門など、数多くの部門があり、それぞれに職員がいます。
部門によって役割や仕事内容が異なりますが、一般企業のように人事や総務、広報なども存在するのが特徴です。
運用管制官
運用管制官は、地球から宇宙空間での作業をサポートする仕事です。地上のミッションコントロールセンターから、宇宙のロケットや宇宙ステーションに向けて様々な指示を出したり、飛行状況を確認したりします。
宇宙飛行士の安全と命を守るために、センターは24時間休みなく監視を継続します。適切なアドバイスを求められるため、宇宙活動への知識と、状況判断力が必要な職業です。
宇宙物理学者
宇宙物理学者は、宇宙の起源や法則性などを研究します。宇宙は解明されていないことがほとんどであり、宇宙物理学者は宇宙活動で得たデータに基づいて様々な謎を解明することが目的です。
研究には長い時間が必要なため、根気強く研究を続けられるだけの精神力も求められます。また最先端の研究のため理数系の知識も不可欠です。
宇宙開発に関わる仕事に就くには
宇宙開発に携わることを希望する場合には、様々なルートがあります。自分のなりたい職業に合わせて進路を選択することが重要です。宇宙開発に関われる仕事に就職するための方法について紹介します。
専門知識を学べる学校へ進学する
学生の方は、まず自分が、宇宙開発のどの分野で活躍したいのかを明確にしましょう。次に、その分野が勉強できる大学や、専門学校に進学するのがおすすめのルートです。
例えば、宇宙物理学者になりたい場合には、「宇宙物理」を学べる大学でその分野に強い研究者に師事します。
また、宇宙船や飛行機、ロケットの開発に関わりたい場合には、機械設計や製造を学べる「航空宇宙工学」を選択できる学校を選びましょう。航空宇宙工学については以下の記事にまとめています。
大学院に進学する
大学での研究を続けるために、大学院へ進学する方法もあります。
大学院に進む際には、十分な研究ができる設備が整っているか、学習支援などがあるのかなどを確認しましょう。
また、大学院からの就職実績も参考にするのがおすすめです。大学院生のみを採用対象としている場合もあるので、事前にチェックしておきましょう。例えばJAXAの研究員になるためには、大学院への在学または修了の必要があります。
民間企業に就職する
宇宙開発は、長い期間にわたり国主導でしたが、多くの民間企業も取り組みはじめています。
ロケットの打ち上げサービスを提供する企業や、宇宙関連の機器メーカーなどです。その他にも、調査や探索を行う企業、衛星運用を行う企業などがあります。
また、内閣府が発表した「宇宙産業ビジョン2030」によって、宇宙開発がより身近になり、宇宙ビジネスも大きく伸びています。特に、宇宙ベンチャーは就職先としても人気を集めています。
宇宙業界の就職先については、以下の記事にまとめているので、参考にしてください。
出典:内閣府(宇宙産業ビジョン2030)
研究施設で働く
宇宙に関する研究施設は、JAXAがあります。JAXAは宇宙科学研究・航空宇宙技術研究・宇宙開発事業を行っている機関です。
JAXAでは様々な部門で採用がありますが、研究者として採用されるためには、大学院への在学、または修了が必要となります。その他にも任期付プロジェクト研究員採用や招聘(しょうへい)職員採用があるのも特徴です。
宇宙開発関連で働く際に必要な資格やスキル
宇宙開発に関わる仕事を希望する場合に、どのような資格やスキルが必要になるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
特別な資格は不要
宇宙開発に関しては、特別な資格は必要ありません。「この資格を取っておかないと宇宙開発の仕事に就職できない」ということはないので安心してください。
ただし、専門的な技術や知識は求められるため、それらは身につけておくべきです。また、円滑な業務のためには、後述する語学スキルも必要になります。
学んでおくべき学問
宇宙開発に関連する知識として、工学を勉強しておくと就職先の幅が広がるのでおすすめです。
具体例として、大学に進学して航空宇宙工学を学んだ場合には、航空宇宙産業への就職が期待できます。自動車メーカーや、電機メーカーなどへの就職にも有効です。
必要とされるのは英語力
宇宙開発に関わる仕事に就きたい場合に、重要となるのが語学力です。宇宙開発は、ビジネスの場が国内だけでなく海外にも広がります。国際的なコミュニケーションが頻繁に行われるため、意思疎通が問題なくできる程度の英語力が必要です。
専門知識や技術があっても、英語スキルが低すぎると、自分の能力をフルに生かすことができない可能性があります。例えばJAXAの職員においても、他国とのコミュニケーションはすべて英語です。技術文章も多くは英文であるため、英会話だけでなく英語の読み書きもできなくてはいけません。
参考までに、JAXAの事務系部門ではTOEICは650点程度の英語力が望ましく、衛星搭載観測センサに関する研究開発者は、TOEIC700点以上が望ましいとされています。英検で言うと事務系部門では2級、研究開発者では準1級程度が必要です。
希望する部門によっても、必要となる英語スキルのレベルに違いがありますが、高い英語力を身につけておくと採用に有利になります。
急成長中の宇宙開発に注目しよう
宇宙開発は、人類にとって大きな可能性を持っている取り組みです。国単位で進行していた宇宙開発は、民間企業の参入によって大きく変化しています。
仕事の種類は、宇宙開発技術者や宇宙機関の職員、宇宙物理学者など多岐にわたるため、幅広い選択肢があります。
宇宙開発に関わりたいなら、まずは学校で専門知識を学習し、余裕があれば、英語スキルも同時に伸ばしていきましょう。
※本学の教授が「宇宙開発の未来」や「航空宇宙工学の魅力」について解説している動画も参考になりますので、ぜひご覧ください