将来性が期待されるロボット工学、学習内容・知識を活かせる仕事などは?

工学教育 機械・ロボット

ロボット工学は世界的に研究が進んでいる学問ですが、とりわけものづくり大国として知られる日本でその注目度が高まっています。

理系・工業系の学部へ進学して将来的に就職にも役立てたいと考えている人にとって、チェックしておきたいジャンルの1つと言えるでしょう。

本稿ではロボット工学の基本的な内容に触れつつ、将来どのような仕事に役立つのかを解説します。

ロボット工学とは何を学ぶ学問?

「ロボット工学」は英語で「Robotics(ロボティクス)」と呼ばれる学問であり、ロボットを人の役に立てるための領域横断的な研究を行います。

例えば製造業などの工場で使用される産業用ロボット、掃除や施設案内などで活躍するサービスロボットなどを目にした人もいるでしょう。

月面のような宇宙空間や災害地域など、人間が立ち入る事のできないエリアで作業するロボットも存在します。

これらのロボットはロボット工学に基づいて開発されたものです。ロボット工学ではロボットの構想・設計段階から始まり、実際の製造プロセスや運用方法も含めて総合的な知識・スキルを身に付けます。

ロボット工学を学んだ人材は、業界で即戦力として重宝される存在となるでしょう。

ロボット工学で学ぶ内容

ロボット工学ではロボットを作り、実際に動かして運用するために必要な幅広い分野の知識を学びます。

ここではロボット工学で学べる具体的な分野についてチェックしていきましょう。

ロボットの理論

ロボット工学では以下の工学分野の理論を学びます。

機械工学

機械力学・熱力学・流体力学・材料力学の4つをベースにし、機械の仕組みを理解するための学問で、ロボット工学における基礎的な知識として挙げられます。

ロボットを設計・製作する上でフレームや機構にどのような負担がどの程度かかるのかを把握し、正常に動作する条件を整えるために必要な知識です。

電気電子工学

電気電子工学は、ロボットを稼動させるために電気の流れを正しく組み込む必要があり、そのために用いられます。簡単に言うと、ロボットの脳を設計・製作するというイメージです。

「電気工学」と「電子工学」の領域横断的な学問で、電気エネルギーの仕組み・管理方法および電子回路の制御・通信技術について理解を深められます。

各部品における電気エネルギーの伝わり方、内部回路で半導体や電子管が果たす役割などソフト・ハードの両面からロボットを理解するのに役立ちます。

計測・制御工学

ロボットが正しく動作するための物理的・電気的な理論を学びます。

計測工学はロボットが物理量を正確に把握するためのセンサー機能において、制御工学は数学や物理の知識を基にロボットの挙動を電気的にコントロールするのに用いられるのが一般的です。

計算と実際の挙動の間に生じた誤差を修正するためにも、計測・制御工学が必要とされます。

情報工学

IT化が進んだ現代社会において様々な分野で活用され、ロボット工学を構成する重要な要素の1つとなっています。

ネットワーク・システム構築・プログラミングといった知識を中心に学び、これらの知識をハードウェアに組み込むためのスキルを身に付ける事も含まれます。

ロボットのブレーンである電子回路から発せられた命令・指揮系統を整備するのに用いられ、プログラム・データベースの開発や通信処理といったプロセスで役に立ちます。

機械学習

自律したロボットの判断精度を高めるために用いられるのが機械学習です。

コンピューターがアルゴリズムによって自動的かつ反復的に学習する仕組みを用い、法則性・傾向の分析を行って予測や判断の精度を向上させる事を目的とします。

ロボット工学においては主に自律型ロボットが経験を積む事によって、より正確な判断とアクションを実現するために必要。

これらのことから、人工知能(AI)の完成に重要な役割を果たしている研究の1つだと言えます。

ロボット製造の技術やスキル

ロボット工学は座学としての理論や知識だけではなく、ロボット製造のための実践的な技術やスキルも身に付ける学問です。

したがって、製作実習などを通じてインプットによって定着した知識を適切にアウトプット出来るようにします。

とはいえ、最初から大型ロボットの製造に取り組む訳ではなく、初期段階では小型モーターや簡単なプログラムを用いて、球技用ロボットを適切に制御する練習などを行うのが一般的です。

ロボットの研究

先端技術であるロボット工学では、既存のロボット製品について学ぶだけではありません。

既存技術の応用や新しい組み合わせによって、今までにないロボットを構想・研究する事もロボット工学の重要な取り組みの1つです。

大学や専門学校といった教育機関でも盛んに研究が行われていますが、より一層高次元な構想を練るために大学院へ進学する人も少なくありません。

ロボット工学を学ぶメリットとは

これからの進路を考えるにあたって、その学問を研究する事のメリットが気になる人も多いでしょう。以下ではロボット工学を専攻した場合の将来的なメリットを紹介します。

ロボットを自由に動かせる

ロボット産業の需要は右肩上がりで伸び続けていくと予想されています。

そのような情勢の中で普及が広まるロボットの構造を熟知しておく事は、日常生活でも仕事でも大きなメリットになるでしょう。

例えば便利な生活家電ロボットが発売された時、その製品をすぐに使いこなしてQOLを向上させる事が可能です。産業ロボットがビジネスシーンに普及すれば当然それらを管理運用する多くの人材が必要になります。

ロボットの組み立てや制御が出来る人材は市場価値が高く、就職や転職にも有利に働くでしょう。

ロボット工学を学んだ先の就職についてもっと知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。

ロボット業界へ就職するには?業界の将来性やロボットに関わる仕事内容について

AIを有効利用できる

ロボット工学を取り巻く先端技術には様々なものがありますが、中でも親和性が高いとされているのがAIです。

AI技術の導入・活用が進められている業界は多岐におよび、中にはロボットにAIを組み込んだサービスも少なくありません。

これからはAIを搭載したロボットによるサービスの展開が進んでいくとされていますが、AI技術だけではロボットを実際に製造・運用する事が出来ないため、ロボット工学の知識とスキルが不可欠です。

ロボット工学を学んでおけば、今後のビジネス界で大きな潮流を生み出すと期待されるAI技術を有効活用出来ます。

活躍が期待されているロボット工学から生まれたロボット

世界有数の技術大国である日本では、既にロボット工学を応用したロボットが多くの現場に導入されています。

ここからはロボット工学から生まれたロボットの中でも、特に活躍が期待されている注目のジャンルを見ていきましょう。

産業用ロボット

新エネルギー・産業技術総合開発機構が2010年に作成した将来市場予測によれば、日本におけるロボット産業全体の市場規模は2035年に約9.7兆円に上るとされています。

中でも大きなウェイトを占めるのが産業用ロボットの市場であり、2035年には単独で2.7兆円ものお金が動くと言われています。

製造業は作業員の技術的・肉体的負担が比較的大きく、安全面はもちろん品質維持の観点からもロボットによるオートメーション化が進められてきました。

産業用ロボットは単一の業務プロセスに特化した製品が多く、工場全体のロボット化となると大規模な金額になります。

特に自動車・鉄鋼・半導体製品などの製造が主要輸出産業としても機能しており、現場への産業用ロボット導入が経済を支えるカギとなるのです。

参考:新エネルギー・産業技術総合開発機構 「2035年に向けたロボット産業の将来市場予測」

介護用ロボット

多様な業界・分野を含むサービス分野のロボット市場も大きな成長が見込まれており、2035年には分野全体で約4.9兆円まで成長するという予想です。

そのうち、日本の少子高齢化社会を支える介護用ロボットには特に大きな期待が寄せられています。

介護業界は要介護者に対して介護士の人数が足りていない状況が続いており、本来2人体制で行うべき介護業務に支障が出ているケースも少なくありません。

ロボット工学によって生み出された介護用ロボットは、移動・入浴・排泄など日常生活の様々なシーンで活用されていくでしょう。

久留米工業大学では、車いすとベット間の移動動作を補助する装置を開発しました。

医療用ロボット

業務品質の向上という意味では、医療用ロボットの開発が注目を集めています。

医療業界では目視での確認や医師の手作業による処置に限界があり、細かい部分の検査や精密さが要求される作業にはこれまでも専門機器が使用されていました。

ロボット工学によって開発された医療マシンは、主に手術補助や調剤支援に用いられています。

医療の現場ではロボット工学が医師の負担を軽減するだけでなく、患者の安全性を保護する結果にも繋がっているのです。

ロボット工学の学び方

本格的にロボット工学を学ぶには大きく分けて「大学」「専門学校」「大学院」という3つの選択肢があります。それぞれでメリットが異なるので、自分に合った進路を見極めるためにここで確認しておきましょう。

工学系学部を有する大学に進学する

ロボット工学を学ぶ方法として最もポピュラーなのは、大学の工学系学部に進学する事です。学部内でロボティクス専攻・ロボット工学コースなどのように細分化していればなお良いでしょう。

大学進学のメリットはロボット工学に限らず、自分が興味関心を持っている分野の学問を体系的に幅広く学べるという点です。

ロボット工学の学習に役立つ補助的な分野を学ぶも良し、一般教養を学ぶも良しなので、大学は知的好奇心を満たしてくれる場となります。

学べる科目は大学によって変わりますので、どのような科目が開講されているのか調べてみることをおすすめします。

工業系の専門学校に進学する

工業系の専門学校では技能および資格の取得を目的としているため、ロボット工学を集中的に学ぶ事が可能です。

学生の就職を前提とした運営体制をとっているため、卒業時に応募出来る求人の数や種類も豊富に揃っている傾向にあります。

学校の方針にもよりますが、専門学校は一般的に2年で卒業となっているので短期間でロボット工学を学んで早く仕事に就きたい人におすすめです。

また、大学はあくまで学問としての教育を行っていますが、専門学校ではより実践的で現場で役に立つノウハウも学べる場合があります。

大学院へ進学

大学を卒業後、大学院へ進学してさらにロボット工学の研究を進めるというのも1つの方法です。

大学院は一般的に2年間で卒業の修士課程と、3年間で卒業の博士課程に分かれています。

学問として突き詰めていくため、まだ実用化に至っていない研究に従事する事も珍しくありません。

大学を卒業しても2~3年間は自分が好きな学問を研究できるほか、高度な専門知識を身に付けて就職先の選択肢が増えるメリットがあります。

特に研究職を目指す場合は修士・博士の学位が有利に働き、一般企業でも大学院卒の新入社員は厚待遇となる傾向があります。

ロボット工学を学んだ後に目指せる職業

理系の学問は実用性が高いとされているため、自分が学んだ事を実際にどのような仕事に活かせるのか気になる人も多いでしょう。ロボット工学の知識を活かして働ける代表的な職種は以下の通りです。

ロボット開発技術者

ロボット開発技術者は所属先企業やクライアントからの指示を受けて、コンセプトに沿ったロボットの設計と開発を担当する職種です。

求人によってはロボットエンジニアと記載されている事もあるので留意しておきましょう。ロボット工学で学んだ実務的な知識・技術をフル活用して、設計図の作成やプログラミングに従事する業務が中心になります。

基本的には開発チームに所属して役割を分担する事になるので、コミュニケーション能力やアイディアの提案力といったスキルも求められます。

ロボット設計技術者

ロボット設計技術者はロボット開発における上流工程を担当する職種で、一般企業の商品企画部のようなポジションです。ロボットデザイナーと呼ばれる事もあります。

消費者のニーズや市場の動向を踏まえた上でどのようなロボットを開発するかのアイディアを練るのが主な仕事で、ロボット工学に加えてマーケティングの知識も求められるでしょう。

また、社内で自分の意見を採用してもらうためには、周囲を納得させるだけのプレゼンテーション能力やロジカルシンキングも必要です。場合によってはロボット開発技術者と兼任する事もあります。

ロボット整備士

ロボット産業の保守運用を司るのがロボット整備士と呼ばれる人達です。ロボット整備士は技術的スペシャリストとしてロボットのメンテナンスや修理を担当します。

目まぐるしく進化していくロボット技術に対応していくため、常に最新技術をチェックして自身の知識をアップデートしていく必要があるでしょう。勤務形態はケースバイケースで、比較的小型のロボットであれば自社工場で修理・メンテナンスを請け負う事もあります。

一方で、大型の産業用ロボットは搬入搬出に難があるため、現地出張で対応するのが一般的です。機械好きで手先の器用さや地道な作業に耐える忍耐力・体力に自信があるという人が向いています。

ロボット工学を学んで日本の将来を担おう

ロボット産業は世界的に見ても競争が激しく、日本の未来を左右する業界の1つです。

ロボット工学での学びは知識・技術力を磨くだけでなく、新たな視点から物事を考える柔軟な発想力を養う事にも繋がります。

ロボット工学は、自己研鑽と社会貢献の高さを兼ね備えた魅力的な学問です。これを機に興味を抱いた人は、ロボット工学への道も検討してみてください。

 

ロボット工学を学べる学科

 

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