高校教員になるために必要な教員免許(高等学校教諭一種免許状)とは?取得方法や大学の選び方も解説

工学教育

専門教科を教えるだけでなく、生徒への指導や学校運営なども行う高校教員。高校教員になるには、教員免許の取得が必要です。本記事では、高校教員に必要な教員免許の種類や教えられる科目、教員免許を取得するための学校選びなどを解説しています。教員免許取得を考えている人はぜひ参考にしてください。

高校教員免許の基礎知識

高校を含め、日本の学校で教員になるために必ず取得しなければいけないのが「教員免許」です。免許は小学校・中学校・高校など教育機関ごとに分かれており、高校教員の教員免許の正式名称は「高等学校教諭免許状」といいます。

教員免許を取得するには、教員免許制度に従った手順を踏まなければいけません。文部科学省によれば、教員免許を取得するには以下のステップが必要です。

  • 1.希望する免許状に対応している教職課程のある大学・短大等に入学する
  • 2.法令で定められた科目・単位を修得して卒業する
  • 3.各都道府県教育委員会に教員免許状の授与申請を行う

出典:文部科学省

以下の記事では、高校教員以外の教員免許の種類や、取得するメリットなど詳しくまとめています。こちらもぜひ参考にしてください。

高校の教員免許の種類と教えられる科目

教員免許の基本的な部分を理解したところで、ここからは高校の教員免許について具体的に解説していきます。

高校教員の免許の種類

高等学校で教えるために必要な教員免許には、

  • 普通免許状
  • 特別免許状
  • 臨時免許状

の3種類があります。

上記の中で、一般的なルートで取得できるのは「普通免許状」です。

さらに高校の普通免許状は以下の2つに分けられます。

  • 高等学校教諭一種免許状
  • 高等学校教諭専修免許状

一種免許は4年制大学卒業相当、専修免許は大学院修了相当の違いがあります。ただし、実際に高校の教員として指導できる範囲や内容などに差はありません。また、最初に一種免許を取得してから3年間教員として働き、専修免許を取得することもできます。

ちなみに高校教員の普通免許状には、短大卒業相当の「二種免許」がありません。短大では高等学校免許状は取得できないため、高校教員を目指す場合の進路は、4年制大学が一般的です。

高校教員免許で教えられる教科・科目の一覧

高等学校の教員免許で教えられる教科や科目は以下の通りです。

・専修および一種免許
国語、地理歴史、公民、数学、理科、音楽、美術、工芸、書道、保健体育、保健、看護、看護実習、家庭、家庭実習、情報、情報実習、農業、農業実習、工業、工業実習、商業、商業実習、水産、水産実習、福祉、福祉実習、商船、商船実習、職業指導、外国語、宗教

・一種免許のみ
柔道、剣道、情報技術、建築、インテリア、デザイン、情報処理、計算実務

ただし、次の免許に関しては専修・一種に加えて別途取得が必要です。

  • 特別支援学校教諭免許状
  • 養護教諭免許状
  • 栄養教諭免許状(平成16年度から)

出典:文部科学省

高校の教員免許は科目により細分化されています。小学校や中学の教員よりも、専門的かつハイレベルの教育を担うのが高校教員の特徴です。

高校の教員になるには?教員免許取得のための大学選び

高等学校の教員免許を取得する最初のステップは、「自分が高校で教えたい科目は何か」を考えることです。次に、その科目を履修できる大学・学部を進学先として選びましょう。まずは大学の学部の違いから解説していきます。

教育学部

教育学部とは、文字通り「教育」について学ぶ学部です。将来教員になることを前提とした養成過程のほか、子供の発達、しつけなどの家庭教育や企業における人材教育など、教育に関する学習や研究を幅広く行います。

教育学部で学ぶと、高校の教員のほか、小学校・中学校の教員、教育に関する行政機関の職員、企業の人材育成や社員教育を行う部署、自立支援を行う企業などが将来の職業の選択肢になります。

教育に関する知識が身に付くため、子育てなどでも、学んだ知識を活かせるのがメリットです。一方、教育に関して広く学ぶため、ひとつの学問や分野に関して専門的に学びたい場合には向いていません。高校の教員として特定の教科や科目を生徒に教えたい場合は、次に解説する教職課程のある学部や学科へ進学するのが一般的です。

教職課程のある学部

学部の必修科目に加えて、教員免許を取るための科目を設けているのが教職課程のある学部です。文学部、経済学部、理工学部などで専門的な知識を学びながら、同時に教職課程も履修していくことになります。

自分が興味のある専門的な知識を学べることから、将来自分が高校の教員として生徒に教えたい教科や科目に直結した勉強ができます。

一方、学部での単位取得に加えて教職課程での履修も必要になるため、教職課程を取っていない人より大学で学ぶ時間が増えます。教育実習も必要になるので、大学生活では単位取得や就職活動、卒論などのスケジュールをたてて、計画的に進めていく必要があります。

新たに令和3年4月1日から教員免許状を取得できる大学は、文科省が一覧にしているので参考にしてください。

参考:文部科学省

次に、高校の教科別で教員免許の取得におすすめの学部や学科を紹介します。

高校の数学の教員をめざせる学部や学科

高校の数学の教員をめざす場合、高等学校教諭一種免許状(数学)を取得できる大学へ進学します。以下の学部や学科が該当します。

  • 教育学部教育学科
  • 工学部建築学科、社会工学環境学科など
  • 理学部数学科
  • 理工学部物理学科、情報システム工学科など
  • 情報学部情報学科
  • 情報メディア学部情報メディア学科
  • 経営情報学部経営情報学科
  • 経済学部経済学科
  • 建築学部 など

高校の社会の教員をめざせる学部や学科

高校の社会は「公民」「地理」「歴史」に分かれているため、対応する免許状も「公民」「地理歴史」があります。大学の学部によって両方取得できるところと、いずれか一方しか取得できないところがあります。

そのため、高等学校教諭一種免許状(公民)(地理歴史)両方を取得できる学部や学科を選ぶと、より教えられる科目の幅が広がるためおすすめです。

以下の学部や学科が該当しますが、同じ名前の学部や学科でも実際に取得できる免許の種類は大学によって異なるので、両方取得できるかを確認しておきましょう。

  • 教育学部教育学科
  • 文学部人文科学科、文化総合学科など
  • 人文学部比較文化学科など
  • 法学部法学課程、法学科など
  • 経営学部経営学科、地域経済学科など
  • 社会福祉学部社会福祉学科など

高校の理科の教員をめざせる学部や学科

高校の理科の教員を目指す場合、高等学校教諭一種免許状(理科)を取得できる大学へ進学します。以下の学部や学科が該当します。

  • 教育学部教育学科
  • 薬学部薬学科など
  • 農学部森林科学科、応用科学科、生物資源科学科など
  • 工学部生命科学科、社会工学環境学科、化学バイオ学科など
  • 理学部科学科、生物化学科、物理学科など
  • 理工学部物理学科、情報システム工学科、自然エネルギー学科など
  • 生命環境学部地球学科、生命自然学科など
  • 危機管理学部動物危機管理学科など

なお、中学・高校の理科の教員については、以下の記事に別途まとめているのでぜひ参考にしてください。

高校の国語の教員をめざせる学部や学科

高校の国語の教員を目指す場合、高等学校教諭一種免許状(国語)を取得できる大学へ進学します。一部の大学では、高等学校教諭一種免許状(書道)も取得可能です。以下の学部や学科が該当します。

  • 教育学部教育学科、国語地域学科など
  • 文学部文学科、人文科学科、日本語学科、日本文学科など(一部大学で書道も取得可)
  • 人文社会学部人文社会学科、人間発達文化学科など
  • 外国語学部国際言語学科、日本語学科
  • 学芸学部日本文学科
  • 文教育学部言語文化学科など

高校の英語の教員をめざせる学部や学科

高校の英語の教員を目指す場合、高等学校教諭一種免許状(英語)を取得できる大学へ進学します。以下の学部や学科が該当します。

  • 教育学部教育学科
  • 商学部商学科
  • 文学部人文科学科、英米文化学科、英文学科など
  • 外国語学部英語学科、英米語学科、国際コミュニケーション学科など
  • 言語コミュニケーション学部英語コミュニケーション学科
  • 言語文化学部言語文化学科
  • 国際学部国際学科、国際理解学科、言語文化学科など
  • 社会学部社会学科など

高校の教員免許取得に必要な単位

高等学校の教員免許を取るには、定められた単位をすべて履修する必要があります。ここでは、教員免許取得に必要な単位について解説していきます。

高校の教員免許取得に必要な科目の単位数

大学在籍中に高校の教員免許を取得する場合、必要な単位数は以下の通りです。

所有資格教科に関する科目教職に関する科目教科又は教職に関する科目特殊教育に関する科目その他(※)合計
専修免許状202340891
一種免許状202316867

※その他の科目は日本国憲法、体育、外国語コミュニケーション、情報機器の操作

出典:文部科学省

教科に関する科目とは、数学や社会、英語など教科に関する専門的な科目です。教職に関する科目とは教育の理念や指導方法など、教員や教育に関する分野をあつかう科目を指します。

ただし、上記はあくまで教員免許取得のために必要な単位であり、卒業に必要な単位も履修していかなければいけません。必要な単位数が多いため、大学入学後は早めに履修を進めていきましょう。教育実習や卒論、就職活動もあるため計画的な履修が重要です。

中学と高校両方の教員免許の取得が可能

大学での単位の取り方次第では、高校だけでなく中学の教員免許も同時に取得できます。

大学生活はやや大変になりますが、同時に取得しておくと将来的に有利になるのでぜひ検討してみましょう。中高両方の免許がある教員なら、学校側がフレキシブルに人材を配置できる場合があります。

東京都の例を挙げると、後述する教員採用試験を中高一括で募集する場合があります。応募には中学と高校両方の免許が必要です。

ただし、中学の教員免許も同時に取得するとなれば

  • 必要な単位数が増える
  • 教育実習の期間が伸びる
  • 介護等実習が必要になる

などのデメリットもあるので覚えておきましょう。

4年次には教育実習が必須

教員免許取得のためには、大学の講義で取得する単位だけでなく、教育実習の単位も求められます。

教育実習とは、大学4年次の4~5月ごろ実際に学校(一般的には母校)へ赴き、2週間(中高の免許を同時に取得する場合は3週間)教壇に立って授業をしたり、ほかの教員の授業を見学したりする実習です。

教育実習では担当の教員から指導を受けながら、授業やホームルームを行います。最後は一から自分で指導計画を立て、研究授業を行います。

実習期間は毎日勉強で大変ですが、人生において貴重な経験になるでしょう。

高校の教員免許を取得する別の方法

すでに短期大学や4年制大学を卒業した人や社会人で、高校の教員免許を取得する場合は、次の方法が利用できます。

通信制大学の教職課程に編入する

通信制大学の教職課程に編入し、高校の教員免許を取得する方法です。教員免許取得と同時に、大学卒業資格である学位も修得できます。高卒や専門学校卒、または短期大学や4年制大学を中退しているなどで、教員免許と一緒に大卒資格も修得したいときの選択肢になります。

通信制大学は、レポートの提出、科目履修試験、大学やオンラインで授業を受けるスクーリングを組み合わせて単位を修得し、卒業と教員免許取得を目指します。

科目履修生になる

すでに大学を卒業していて、教員免許取得に必要な単位だけ修得したい場合の方法です。通信制大学などで教員免許取得に必要な単位を履修します。単位の履修が目的のため、教育実習を含めて必要な単位を修得した時点で修了となります。

通信制大学への編入も含め、すでに大学や短期大学、専門学校で修得した単位は再度取り直す必要がありません。

免許取得後、高校教員として働ける場所

教員免許を取得した後、高校教員として働ける場所やそのための方法を順に解説していきます。

採用試験を受けて公立高校で働く

公立の高校教員として働くには、教員免許取得後に各自治体の教員採用試験(正式名称:教員採用候補者選考試験検査)に合格しなければいけません。

自治体の教員採用試験は、以下のスケジュールで進んでいきます。

  • 3~5月 応募
  • 6月 受験票到着
  • 7月 第一次選考
  • 8月 第二次選考(面接)
  • 9月 第二次選考(実技)

試験会場は届いた受験票に指定があります。東京都の場合は東京会場、大阪会場、宮城会場などのように、地方の受験者のために自治体以外の会場を用意している場合もあります。

第一次選考では教職教養60分、専門教養60分、論文70分の筆記試験を行います。第一次選考を通過し、第二次選考では集団面接と個人面接を行います。その後、音楽、美術、保険体育、英語の教員希望者を対象に実技試験が行われます。但し、自治体により選考内容が異なりますので、早めに確認しておいた方が良いでしょう。

教員採用試験は、受験日が重なっていなければ複数の自治体の併願が可能です。不合格の場合でも、臨時的任用教員(臨任教員)や非常勤講師になりながら再度教員採用試験に挑戦する道もあります。

ちなみに、公立高校教員は自治体の職員のため地方公務員にあたり、給与は自治体によって公表されています。

私立高校の教員をめざす

公立高校よりも個性的な校風の学校が多い私立高校の教員になるには、私立高校の採用試験に合格する必要があります。自治体の教員採用試験との併用も可能です。

また私立高校の中でも、付属中学がある一貫校の採用試験を受ける場合は、自治体の教員採用と同じく、中学の教員免許を持っていた方が有利です。

私立高校の教員は高校に直接雇用されるため、会社員(正式には学校法人の職員)と同じ立場です。そのため、給料は高校によって異なり一般的には公開されていません。

高校の教員免許取得には年齢制限はある?

教員採用試験の受験要綱には「平成〇年4月2日以降出生」など、年齢制限を設けている自治体も多いです。一方、年齢制限を設けない自治体も近年増えてきました。

文部科学省が令和2年度採用選考の実施方法を取りまとめた資料によると、「受験年齢制限なし」とした自治体は前年度より11県市増加、日本全国では41県市にのぼります。

年齢制限緩和の背景には、

  • 多様な人材の採用
  • 氷河期世代の救済

上記の2つの理由があります。

教員経験者や社会人経験者など、年齢問わず多様な人材を採用することで、学校現場に専門的な知識を持つ人材を登用できるからです。

また、就職氷河期世代と呼ばれる35~54歳程度の年齢層のなかには、教員免許を取得したものの募集がないなどで教職をあきらめてしまった人も多いです。

このような背景を受け、年齢制限を撤廃または緩和した自治体もあります。

出典:文部科学省

高校教員として採用される難易度

自治体の採用試験を見てみると、小学校教員、中学校教員と比較し高校教員の倍率は高くなっています。

たとえば東京都は、2019年度の小学校教員3.6倍に対して中高教員の倍率は9.7倍です。

  • 小学校教員、中学校教員よりも比較的免許取得をしやすい
  • 地歴、情報など教科によっては教職課程の単位の修得も難しくない

などの理由が考えられます。

一方高校教員を含めて、教員採用試験全体の倍率は下がっています。

東京都は2019年度9.7倍だったのが2020年度は5.0倍、大阪府は2019年度13.1倍が2020年度11.7倍まで下がりました。教育現場では人手が足りない状況が続いています。

そのため教員をめざしている人にとっては、チャンスは十分にあると言えるでしょう。

高校の教員を目指すなら教員免許取得が第一歩

高校の教員になるには、まず自分が何の教科や科目を教えたいかを踏まえて、教職課程のある学部や学科を選ぶ必要があります。選んだ学校で必要な科目を履修して教育実習をこなし、無事に教員免許を取得できれば高校教員への道が開けるでしょう。

高校の教員は生徒に専門的な知識を教えるだけでなく、子供たちを人生の進路を導くうえでも重要な立場にあります。大学や社会に巣立つ生徒への指導は、とてもやりがいのある仕事です。

ぜひ大学で教員免許の取得を目指してみましょう。

高校の教員を目指せる学科

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