AIと聞くと、ビジネスシーンでの活用をイメージする人が多いですが、実は私たちの日常生活で使用されている多くの製品にも実装されています。
身近なものでいえば、スマートフォンや自動車、家電やWeb検索などが挙げられます。
今後も発展が見込まれるAIの分野は需要が高く、興味がある人も多いでしょう。
本記事では、AIの活用事例から開発に必要なプログラミング言語、学ぶことのメリットなどを解説していきます。
将来AIの分野に進みたい人はもちろん、日常生活にどのように関わっているのか興味がある人もぜひチェックしてみてください。
目次
そもそもAI(人工知能)とは
AIとは、Artificial Intelligenceの略称で、日本語に訳すと「人工知能」のことを指します。人間のように学習を繰り返すことで、機械に知能を持たせる技術です。
AIが学習する手法の一種である「ディープラーニング(深層学習)」は、大量のデータからその特徴を導き出すことができます。
AIと混同されがちなロボットは、一定の動作ができるようプログラミングされたものであり、自動で学習する機能は搭載されていません。
AIプログラミングの活用事例
AIプログラミングを学ぼうとしている人にとって、AIがどのように活用されているか興味があるでしょう。
ここでは、AIで何ができるのか、各業界でどのように活用されているのか事例とともに紹介していきます。
金融
金融業界では、株価や仮想通貨の価格予想にAIが利用されています。
AIに過去の膨大なデータを学習させることで、価格が上下する傾向を導き出すので、精度の高い予測が立てられます。
人間が同じ量のデータを読み込むには多くの時間を要するうえに、誤差も生じやすくなります。
しかしAIを活用することで、効率的かつスピード感を持って取引ができるため、今後も導入する企業が増えるでしょう。
小売
さまざまな商品を販売する小売業ですが、こちらでもAIの導入が進んでいます。
たとえば、商品の仕入れを予測するシステムや、AIカメラを実装したセルフレジ、夜間の問い合わせや受付業務などが挙げられます。
これらによって効率化やヒューマンエラーの防止、人材不足の解消などの効果を発揮しているのです。
物流
オンライン通販の普及により消費者の利便性が向上した一方で、物流業への負担が増加していますが、こうした課題の解決にもAIが役立っています。
たとえば、配達する荷物の倉庫管理や仕分け、配達ルートの最適化やドライバーの居眠り運転防止などが挙げられます。
さらに、AIシステムが搭載された自動配送車も登場するでしょう。
医療
医療の現場でもAIが活用されています。
たとえば、臨床診断でAIを用いることで、膨大なデータからの患者の症状の分析や、見逃しそうなわずかな異常の発見などにも役立っているのです。
このように、医師の診断とAIの診断を掛け合わせることで、診断結果の精度も向上しています。
また、最近では自身で撮影した写真から症状を診断するサービスもあり、病気の早期発見や通院するか否かの判断にも役立っています。
福祉
AIによる自動運転技術は福祉でも役立てられており、例えば車いすにも組み込む試みがされています。
マップと融合させることで、目的地まで迷わずにたどり着けるほか、車いすでも無理なく通れるルートが利用できるようになります。
これにより、車いす利用者の負担が大幅に軽減されることが期待できます。
電動化や自動化によって移動が楽になることで、体力がない人はもちろん、介助者の負担を気にせず外出できるようになるのです。
参考:車や飛行機だけじゃない!車いすにも使われる自動運転技術
教育
経済産業省が推進しているように、教育現場でもAIの導入が急速に進んでいます。
たとえば、試験の採点をはじめ、生徒に合わせた学習アドバイスシステムなどがあります。教師の負担や人件費の軽減、授業内容を属人化せず均一なレベルに保つ効果などが挙げられるでしょう。
教育現場へのAIの導入は学校だけではなく、オンライン学習の場でも活用されています。
AIを作るために必要なプログラミング言語8選
AIも他のシステムやツール同様、プログラミング言語を用いて開発されています。
どのプログラミング言語を使用するかは「AIで何がしたいのか」「開発しやすいのか」などによって変わります。
また、初めてプログラミング言語を学ぶ人は、途中で挫折しないためにも習得する際の難易度も意識しましょう。
Python
Pythonは、AIを作ることができる言語のなかで最もメジャーなものです。
人気が高い言語であるため、ライブラリも充実しており、コードもシンプルなので初心者でも学習しやすいことも特徴的です。
また、PythonはAIだけではなくWebアプリの開発でも使用される言語なので、習得することでWeb系の分野に進む選択肢を持つこともできます。
Julia
Juliaは2012年に登場した新しい言語であり、他の言語の良いところを取り入れていることが特徴的です。
高速計算が得意で、膨大なデータを解析する必要があるAI開発の場では重宝されています。コードの文法も非常にシンプルで、Pythonを扱える人であればスムーズに習得できるでしょう。
JavaScript
Web開発で有名なJavaScriptも、実はAI開発で使用できるプログラミング言語です。AI開発の場でJavaScriptのよくある使い道として、WebブラウザからのAIを実行することが挙げられます。
いきなりAI開発を目指すのではなく、まずはWeb開発でJavaScriptやPythonを学んでから、AI開発へシフトしていく方法もあります。
C++
C++は、有名な開発言語であるC言語の拡張言語であり、現在あるプログラミング言語のなかでもトップクラスの処理速度を誇ります。
処理速度の速さから、AI以外に金融や公共の業務システムの開発、スマホアプリやWebアプリの開発でも用いられています。
ただし、環境構築が難しく、制御文や関数なども他の言語より記述が多いので、初心者が習得するには難易度は高めです。
R
AIには統計学が必須ですが、Rは統計解析が得意な言語なので、習得するとAIを作る際にも役立てることが可能です。
特にRはPythonのように汎用的ではなく、統計解析に特化した言語であるため、解析用のAI開発をしたい人におすすめできます。
学習面においては統計学の知識も必要になってくるので、難易度は高めです。
Java
学習するプログラミング言語選びに悩んでいる人におすすめなのがJavaです。
AI開発だけではなく、あらゆるシステム開発で使用される非常に汎用性の高い言語であるため、開発言語の習得に悩んだら候補に入れておくと良いです。
数多くの企業で使用されている言語なので、習得することで就職先の選択肢を広げられるでしょう。
Haskell
プログラミング言語の習得に余裕がある人にはHaskellもおすすめです。
こちらの言語は、バグが発生しにくいという特徴から数学との相性が良く、AI開発の現場でも活かせます。
このような特徴から、株取引や仮想通貨などのシステムで使われているので、金融系のシステムに興味がある人は学んでみると良いでしょう。
ただし、学習の難易度は非常に高いので、初心者は別の言語から習得することをおすすめします。
Matlab
Matlabは、行列計算が得意な言語です。
こちらの特性を活かしてAI開発でも用いられてきましたが、現在はPythonをはじめ他の言語が発展したことで、新規開発での使用機会は減少傾向にあります。
ただ、既存システムでは使用されていることもあるので、コードは書けなくても、読み取りができることで実践の場で役立つことがあります。
AIプログラミングについては、こちらの記事でも紹介しているので、ぜひ参考にしてください
参考:大きな注目を集めるAIプログラミング!基礎知識から将来性まで解説
AIプログラミングを行う前にやっておくべきこと
AIプログラミングに限らず、何事においても事前準備は重要です。ここでは、AIプログラミングを行う前にやっておくべき3つのことを紹介します。
目標を明確にする
まずはAIでどんなことを実現したいのか、目的や解決したいことを明確にしましょう。AIでできることは幅広く、目的によって学習する内容が異なるためです。
いざスキルの習得を始めてから「自分が学んでいることではやりたいことが実現できない」といった事態に陥らないよう、目的や言語でできることを把握しましょう。
Pythonの基礎内容をマスターする
現代において、AI開発の場ではPythonがもっとも使用されている言語です。
Pythonは、AIプログラミングをするうえで避けては通れないといっても過言ではないので、基礎内容のマスターを目指しましょう。
なお、PythonはWebアプリでも用いられるので、Web開発で経験を積んでからAIプログラミングにシフトする方法もあります。
数学・統計の知識を学ぶ
AIでは、機械学習や深層学習のために膨大なデータの抽出・分析を行います。
そのためには、プログラミングの知識だけではなく、微積分や線形代数など数学や統計学の知識も必要です。
数学知識は決して廃れることはなく、社会のあらゆる物事を数値化できるので、社会人になってからも非常に役立ちます。
AIプログラミングを学ぶメリット
AIプログラミングを学ぶメリットとして、今後も発展が見込まれ、需要が高い人材を目指せることが挙げられます。
習得する過程で多くのIT知識やスキルを身につけられるので、IT人材が不足している現代において就職しやすいことも魅力的です。
また、AIの発展は人材不足を補い、効率的で生産性の高い社会の実現に役立っています。AIプログラミングを学ぶことで市場価値の高い人材となり、かつ社会貢献性の高い仕事ができるようになるのです。
AIプログラミングに関わる職種と活躍できる業界
AIプログラミングに関する職種では、AIを開発するAIエンジニアや、大量のデータから必要なデータを抽出・分析するデータサイエンティストが代表的です。
活躍できる業界については、IT業界のほかに次のような業界があります。
- 製造業
- 金融、保険業
- 不動産業
- 小売
- 医療
- 建築業
- 物流業
- 農業
- 水産業
上記からも分かるように、AIプログラミングは非常に多くの可能性を秘めており、さまざまな業界で活躍できます。
これら、職種について詳しく知りたい方は以下の記事でまとめています。
参考:これから伸びるAI、IoT分野で活躍が期待される職業とは?
AIプログラミングの学習方法
これからAIプログラミングを勉強しようとする際「どうやって勉強すれば良いの?」と疑問に感じている人もいることでしょう。
ここでは、AIプログラミングのおすすめ学習方法を3つ紹介していきます。
学校に通う
大学や短大、専門学校に通って学ぶ方法です。AIに関する知識やスキルの習得だけではなく、IT全般に対して体系的に学ぶことができるので、将来の選択肢を広げることができます。
また、ITパスポートや基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験といった、資格取得に対する支援や、就職相談などをすることもできます。
進学先で悩んでいる人は、将来性や需要の高い人材を目指せる工学部や情報学部、理工学部などを選択肢に入れてみましょう。
その際には学部だけでなく学科にも目を通して、どのような内容を学べるのかしっかりリサーチしてください。
久留米工業大学では、AI・数理データサイエンス教育プログラム「地域課題解決型AI教育プログラム(応用基礎)」が文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(応用基礎レベル)MDASH Advanced Literacy+(プラス)」に選定されています。
独自の学習環境が用意されているので、ぜひ参考にご覧ください。
https://www.kurume-it.ac.jp/news/ai_mdash_advanced_literacy.html
Webサービスを利用する
費用負担を減らして勉強するなら、Webサービスを利用すると良いでしょう。
多くの情報がインターネットで手に入る現代において、注目度の高いAI関連の学習サイトは数多く存在します。
ただし、無料で勉強できる反面、不明点があっても直接人に聞けないデメリットもあります。
これまでにIT関連の学習をしたことがない未経験者には、ハードルが高い方法でしょう。
プログラミングスクールに通う
プログラミングのみを集中的に学びたい人は、プログラミングスクールがおすすめです。
初心者向け講座や言語別などコースが分かれているので、ニーズに合わせて集中的に勉強できます。
費用は初心者向けてあれば数千円、3ヵ月~6ヵ月の受講であれば20万~60万円ほどと幅があり、予算やレベルに応じて選ぶことができます。
AIプログラミングの学習におすすめの本
これからAIプログラミングを学習する際、単純なプログラミングスキルだけではなく、知識を身につけることも重要です。
ここでは、AI初心者でも読みやすいおすすめ本を3つ紹介していきます。
ビジネスの現場で使えるAI&データサイエンスの全知識:三好 大悟
こちらの書籍は、実際のビジネスシーンでも役立つAIやデータサイエンスの知識を網羅的に学べます。
フルカラーで初心者でも読みやすいほか、Excelを用いた演習も用意されているので、難しい開発環境を構築することなく、AIプログラミングに触れることができます。
Python 1年生 体験してわかる!会話でまなべる!プログラミングのしくみ:森 巧尚
こちらの書籍では、AI開発の場で最も利用されているPythonの基礎を学ぶことができます。
登場人物が会話形式で解説してくれるので、初心者でも理解しやすいのがおすすめポイントです。
また、本書は「2年生」「3年生」と続編もあるので、段階的に理解を深めていくことができます。
通常の参考書では理解できないことも、登場人物の会話や図解からイメージが結び付きやすいこともおすすめポイントです。
Pythonで儲かるAIをつくる:赤石 雅典
Pythonを仕事に活かす方法を知りたい人におすすめなのが、こちらの書籍です。技術的な部分だけではなく、実際の業務に対するアプローチについても書かれているので、学んだことを仕事に活かすイメージが持ちやすいです。
このように、将来役立つことを学んでいることを理解することで、学習へのモチベーションアップの効果が期待できます。
また、コードやグラフを用いた具体例や、その理由の解説も分かりやすいので、Pythonの学習に役立てられます。
AIがプログラミングに与える影響と将来
AIは、国としても力を入れている分野であり、それらを扱える人材育成の動きが高まっています。
また、AIの分野は急速な技術の進歩による需要の高まりに人材の供給が追い付いていないのが現状です。
つまり、こうしたAIプログラミングができる人材の市場価値や将来性は非常に高く、今後の伸びが予想されます。
AIの登場によって、失われる仕事があることを不安視する人もいますが、その一方で新たな仕事が登場しています。
実際、AIによる効率化や自動化の進展で窓口業務や事務作業、レジ打ちなどの仕事は減りましたが、今までそこに費やしていた時間を別の仕事に使えるようになったので、生産性の向上に繋がっていると捉えることもできます。
AIプログラミングの学習は、AIが各職業に及ぼす影響の把握にも役立つので、不安に感じる人は学習することをおすすめします。
まとめ
AIや機械学習と聞くと、ビジネスシーンでの活用や未来のことのように考えている人も多いですが、すでに日常生活のなかにも数多くのAI技術が浸透しています。
普段の生活のなかで当たり前のように使用しているモノにも実装されている技術は、必要不可欠な存在であると言い換えることもできるでしょう。
AIはこれからも社会を豊かにするために発展していくことが見込まれるので、将来性の高い分野を学びたい人は、AIプログラミングを学んでみてはいかがでしょうか。