車や飛行機だけじゃない!車いすにも使われる自動運転技術

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自動運転 車いす

自動運転という言葉を聞けば、やはり車を連想する方が多いのではないでしょうか。たしかに車の自動運転化には大きな注目が集まっており、実現すれば私たちの生活は大きく変わります。IoTと組み合わせれば渋滞を緩和できるようになったり、事故防止にもつなげたりなど、自動車業界に革命が起きることは間違いありません。

しかし自動運転技術が役に立つのは車だけではないのです。そこで今回は、車に比べてあまり注目されていない車いすの自動運転化に焦点を当ててみます。

自動運転・電動車いすの開発が期待される背景

もしかするとあなたは、「街中を歩いていても車いすの人を見る機会はそこまで多くないし、助かる人もそんなに多くないのでは?」と思っているかもしれません。しかしそれは街中に車いすでたどり着ける人が少ないだけ。たとえ電車やバス、街中のバリアフリー化が進んでも、駅やバス停にたどり着けなければ街に出ることはできません。こうした移動の拠点と自宅間の道のりはラストワンマイルと呼ばれており、このラストワンマイルが移動する際に大きな壁となっている人も少なくないのです。

ここ数年は地方の過疎化で移動のハードルがますます上がり、高齢化で移動が困難になってしまった人はさらに増えています。しかし車いすが自動化・電動化すれば移動が楽になり、積極的に外出する人も増えるでしょう。自動運転・電動の車いすは、自由に動き回ることができなくなった方にとって大きな希望になると考えられているのです。

車いすの自動運転化・電動化のメリット

体力がなくても外出できる

車輪のサポートがあるとはいえ、車いすで移動するには大きな困難が伴います。自分一人で動き回ろうと思えば相当な腕力が必要となるでしょう。特に傾斜がある場所は高齢で体力が落ちている人でなくとも厳しく、普通に歩ける人であれば何てことのない移動でも、車いすではかなりの負担になることが避けられません。しかし車いすの電動化が進めば、体力的な負担を気にすることなく気軽に外出できます。

他人への負担を気にしなくていい

車いすは自分で車輪を回すだけでなく、他の人に押してもらうことでも移動できます。ただ、一緒に暮らす家族だったとしても、外出のたびに付き添いを頼むのは心情的になかなかできることではありません。その結果、外出することにためらいを感じ、外のコミュニティへ参加する機会が少なく自宅にこもりがちになってしまうのです。自分一人で外出できるようになれば他人に迷惑をかけるという意識は軽減され、積極的に外出したいと考える人も増えるでしょう。

目的地まで迷わない

車いすを自動運転で制御できるようになればIoT技術を組み込むのも簡単です。分かりやすい例としては車いすとマップの融合が挙げられます。目的地を入力するだけでルートが決まり、あとは待っているだけでたどり着く。そんな車いすが登場するのも時間の問題です。

自動運転・車いすの課題

実は、私たち人類はすでに自動運転の車いすを作るだけの技術を持ち合わせています。では自動運転の車いすが未だ主流になっていないのはなぜなのか?そこには以下3つの理由があります。

操作性

便利なものでも、操作方法が分からなければ無用の長物です。特に人は新しいものに抵抗を感じることが多いので、自動運転車いすは説明書などを見ることなく直感的に操作できるものでなければ普及させていくのは難しいでしょう。これはスマートフォンを使わない高齢者が多いことからも分かることです。スマートフォンの方が使いやすいと思う人が多くいる一方で、長年使い慣れたガラケーから変えるのは抵抗があると考える人も多くいるのと同じです。これから自動運転・電動車いすを設計する技術者には、単に望み通りの動きをさせるだけでなく、誰にとっても使いやすい操作性を実現させることも求められます。

安全性

自動運転の実現で一番ネックになっているのが安全性です。どれだけ便利になったとしても、赤信号を無視して飛び込んだり車が来ている道を横切ろうとしたりする自動運転ではユーザーのリスクが大きすぎます。もしもの時は自分で操作できるようにするのが現在絶対に必要な機能といえますが、「そもそも安全にリスクがある道具なんて使いたくない」と考える人が多ければ、やはり自動運転車いすの普及は進みません。技術力を駆使して安全性を高めていくのはもちろん、ユーザーを納得させられるだけの実地テストを数多く繰り返す必要もあるでしょう。

費用

通常の車いすなら1万円台から購入できますが、電動車いすになった途端その価格は10万円以上に跳ね上がります。単に電動化しただけで価格が10倍以上になるのですから、これから自動運転車いすが発売されたとして、これを一般のユーザーでも購入できる価格に設定するのはなかなか難しいでしょう。ただし、最初期には一般人に手の届かない存在だったパソコンも現在は手頃な値段で購入できるように、自動運転・電動車いすも技術革新によって手頃な値段で購入できるようになるかもしれません。需要が増し、大量生産が可能になれば価格はさらに低く抑えられます。

車いすの自動運転に使われている技術

車いすの自動運転化を実現するためにはどのような技術が必要となるのか。ここではその一部について簡単に説明します。

AI

現実世界で目的地まで移動するのと、地図上で目的地までのルートを結ぶのとでは難易度が格段に違います。なぜなら移動する時によって信号や道路状況が変わるのはもちろん、子供が飛び出してきたり歩道に乗り上げて停車している車がいたりといったイレギュラーに次々と遭遇するからです。人間であれば自分の判断で障害を避けられますが、従来の機械ではこうした判断が困難。場面に応じた適切な判断を可能とするAI技術の導入は自動運転に必要不可欠です。

センサー

AIが情報を処理するためには、外界の情報を取り入れる必要があります。これは人間にとって目や耳が重要であることと同じで、人工知能にとっても外部の映像や音がなければ状況判断なんてしようがありません。そのためカメラやマイクといったハードウェアを開発していく必要があるうえに、画像処理・音声処理を実現するソフトウェアの開発も求められます。

IoT

目的地へたどり着くためには地図がなくてはいけません。私たちの暮らす街は絶えず変化を繰り返しているため、車いすに地図情報を搭載するより、常に更新され続けるインターネット上の地図を利用する方が効率的です。これなら道路状況や天気情報も取得できるため、やはりIoTを導入しない手はないと言えるでしょう。

久留米工業大学が開発した自動運転・車いすの事例

久留米工業大学では自動車や飛行機に関する技術の他、自動運転の車いすを開発することも視野に入れられます。ここではテレビやニュースで取り上げられたいくつかの事例についてご紹介します。

2017年、久留米市内での実証実験を開始

人工知能を利用した危険回避、位置情報を活用した自動運転等の基本システムを開発した久留米工業大学は、2017年に全国初となる自動運転車いすの実証実験を開始しました。テレビや新聞でも大きな注目を集め、実際に車いすを利用するユーザーの意見を集めることができました。

2018年、公道での実験を開始

こちらも人工知能を搭載した対話型自動運転車いすとしては全国初となる実験。実験の様子はテレビでも放送され、脚での移動が困難な方でも他の人たちと同じように暮らせる未来を垣間見ることができました。

自動運転の車いすがどのように動くのか、どのようなデザインなのかについてはぜひ以下の動画でご確認ください。

車いすの自動運転化で実現する未来

車いすの自動運転が実現すれば、これまで外出に高いハードルを感じていた人の行動範囲は大きく広がります。ショッピングや旅行を楽しめるのはもちろん、趣味や仕事での交友関係も変化し、人生の質は間違いなく向上することでしょう。また少子高齢化による介護者不足も緩和され、誰もが笑顔で自由に暮らせる社会へまた一歩近づきます。

工学と聞くと、感情より理論を重視するといった冷たいイメージを持つ方がいるかもしれませんが、その根底にはより良い社会を実現したいという技術者たちの熱い思いがあります。技術を使いこなし、困っている人の力になる仕事がしたいと考えているのであれば、ぜひ工学の道を検討してみてはいかがでしょうか。

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