機械工学は、さまざまな機械の研究や設計を通じて、日本の工業やものづくりを支える大切な分野です。
しかし、機械工学では具体的にどんなことを学ぶのか、どんな職業に繋がるのか、イメージできない人もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、機械工学で学べること、目指せる職業に加え、将来性についても解説します。
目次
機械工学とは
そもそも機械工学とは、どのような学問なのでしょうか。
機械工学の特徴を知り、自分にとって将来やりたいことに繋がる分野であるか、考えてみましょう。
機械工学は、力学を用いて機械の設計・製造の技術を学ぶ学問
機械工学とは、簡単に言えば「機械を作るための技術や知識を学ぶ学問」です。
どんな小さな機械でも、それが動くためには、電気や熱、摩擦など様々な力が発生します。そのため、機械を設計する際に、機械にかかる力を想定しなければいけません。
そこで、機械工学では、「力学」を中心に学び、機械がどうして動くのか、動いた際にはどんな力が発生するのか、理論的に理解します。
その知識を応用し、さまざまな機械の設計や製造に活用します。
あらゆる産業分野と繋がる学問
一口に『機械』と言っても、実に多くの種類があります。
例を挙げると、航空や自動車など乗り物や、ロボット・医療機器などです。パソコン、スマートフォンや時計など、人が簡単に扱える小型の機械もあります。
これらの機械は、事故が起こらないように、機械工学を用いて、入念な設計・実験を繰り返して販売され、人々に利用されています。
このように、現代社会は機械と密接な関わりがあるため、機械工学の知識は幅広い産業において欠かせないものなのです。
環境面を考慮した技術を学ぶ学問
機械が動くにはエネルギーが必要です。エネルギーには、石油や電気などが挙げられますが、資源には限りがあります。
そこで機械工学では、機械が自然環境に及ぼす影響について学び、自然環境に与える負担を軽減する機械を開発するための研究も行います。
地球温暖化が社会問題となっている現代では、使用するエネルギーを最小限に抑え、かつ排出するエネルギーも、環境に悪影響を及ぼさないものであることが求められています。
機械工学に関わる力学とは
機械工学で学ぶ力学とは、主に動力学、流体力学、熱力学、材料力学の4つです。これらはまとめて四力学と呼ばれ、機械を作るための基礎学問とされています。
まず、動力学は物体が動いている最中に発生する速度、軌跡などについて学びます。ちなみに、動力学は物体が静止しているときに発生する力に関して学ぶ静力学と合わせて、「機械力学」と呼ばれることもあります。
流体力学は、空気や水などの流体について学びます。飛行機など、空気を利用して動く機械の開発に必要な知識です。空気や水はこの世に大量に存在するものですから、その分取り扱う数値も大きくなります。
熱力学は、機械が動いた際に発生する、熱エネルギーについて議論する学問です。機械が動いた際に、どんなエネルギーが発生・消費されるか、エネルギーはどんなものに変換されるのか、などについて考えます。
材料力学では、機械に使われている材料の特徴を知り、強度や機械が動いた際の材料の変化などについて検証します。
この四力学をもとにして、安全で高性能な機械が開発されています。
大学の機械工学科で学ぶ内容
大学の機械工学科では、どのようなことを学ぶのでしょうか。大学によって違いはありますが、基本的なカリキュラムの内容や、流れについて紹介していきます。
数学と力学の基礎理論
1年〜2年次には、機械工学の基礎となる、数学や力学について学びます。
特に、熱力学や材料力学では数学の知識が必須です。線形代数や行列などを扱うので、高校の数学Ⅱ・Ⅲの延長と考えておくと良いでしょう。
力学に関しては、前述した四力学を中心に学びます。こちらは高校の物理の延長に近い部分があり、受験勉強の際に力を入れて学習しておけば、入学後の勉強の負担も軽くできます。
専門的な工学分野
3年〜4年次では、これまでに学んだ基礎知識を使い、より専門的な分野について学び、さらに深く考察します。
専攻の例は次の通りです。
・電気…発電やモーターなど電気の仕組みについて学びます。電子工学と被る部分もありますが、プラズマ(第4の物質状態)やスマートグリッド(次世代送電網)などは、電気系のみでしか取り扱いません。
・電子工学…電子回路や半導体などについて学びます。
・計測工学…物質を誤差無く計測できるものを開発したり、測定時に発生した誤差の原因を検証したりします。
・制御工学…プログラミングを使った機械の制御(コントロール)について学び、ロボットとの共存に向けての研究・実験を行います。
・情報工学…情報を工学の視点で研究・学習するのが情報工学です。コンピュータの仕組みから通信機技術、コンピュータを使って現代の課題を解決する情報数理工学など、学ぶ内容は多岐にわたります。
演習
機械工学科に限らず、大学の理系学部は演習が多いです。
機械工学科の場合は、講義で学んだ内容をもとに、実際にロボットを作る演習などを行います。エンジニアとして、より高度な知識・理論・技術を身に着けられるでしょう。
具体的な演習内容は次の通りです。
- 流体力学設計演習
- 振動設計演習
- スターリングエンジン設計演習
卒業研究
理系学部の場合、大半の人が研究室に所属し、4年次のタイミングで卒業研究を行います。
卒業研究は、就職活動に繋がるケースが大半であるため、多くの学生が4年間の集大成として研究に勤しみます。
ここでは例として、工学部機械システム工学科の卒論の一部をご紹介いたします。
- 精密加工学に関する研究
- タングステンなどの高融点金属の特性改善
- 人や環境に優しい機器の設計・開発
- 会話操作型ロボットの製作
機械工学は難しい?
機械工学で学ぶ内容は、主に高校の物理と数学の延長です。そのため、物理や数学に苦手意識がある人には、難易度が高いかもしれません。
特に、1年〜2年の間は基礎となる数学・物理を学ぶため、計算が多く、辛く感じる人もいるでしょう。
しかし、3年次以降の専門分野に入ると、大学によっては、数学にはあまり触れないケースもあります。一方で、電気・電子系だと数学を使う機会が多く、学部による差が大きいです。
英語に関しては、授業で英語の資料を読むこともありますが、センター試験レベルの英語が理解できれば問題ないでしょう。
機械工学を学ぶメリット
機械工学を学ぶと、どんなメリットがあるのでしょうか。具体的なメリットを知り、自分が将来やりたいことと合致するか、考えてみてください。
ものづくりで社会貢献ができる
暮らしを便利にする家電は、もはや当たり前になり、私達の生活に欠かせません。
しかし、暮らしを便利にするだけでなく、機械は社会問題の解決にも役立っています。
例えば、危なくて人が入れない場所での作業なども、ロボットを使うことで解決できます。
このように、機械工学で得た知識を生かして社会貢献できるというのは、大きなメリットでしょう。
機械工学を活用した社会貢献に関しては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
機械の構造を知れる
機械工学を学ぶことで、世の中に存在する機械が、どんな仕組みでできていて、どのように動いているのかを深く理解できます。
日常生活で機械を見つけたときは、使いやすさや安全性、環境性など、さまざまな視点から考察したり、ユニークな発想が生まれたりするかもしれません。
機械工学に関連する資格
機械工学に関連する仕事は、基本的に資格よりも実務経験が重視されます。そのため、必ずしも資格を持っていると有利というわけではありません。
しかし、転職やキャリアアップの際に役立つものもあるので、いくつか紹介します。
- 2次元CAD利用技術者試験
- 3次元CAD利用技術者試験
- 技術士第一次試験
- 機械設計技術者試験
中でも特におすすめしたいのが、機械設計技術者試験です。
この資格は、機械工学の基礎である四力学や、機械の設計・製図について学べ、その知識が定着していることをアピールできる資格です。特に、学生のうちに3級を取得する人は多いです。
大学によっては、資格取得のための知識や技術の習得に向け、合格のコツや出題傾向も指導してくれることもあります。
久留米工業大学でも、機械工学関連の資格を取得可能です。以下にまとめているので、受験を検討している学生はチェックしてみてください。
機械工学を学んだ後の進路
機械工学を大学で学んだあとは、どのような進路に進むのでしょうか。卒業後の進路についても見ていきましょう。
大学院へ進学
大学で学んだことを、さらに深く研究したい場合は、大学院へ進学することになります。大学院で学ぶ内容は専門性が高いので、どのような研究がしたいか、明確に固まっているなら進学する価値はあるでしょう。
ちなみに、機械工学系の学科の場合、だいたい20%程度の学生が大学院へ進学しています。企業の研究職では、大学院卒であることが必須であるケースも多く、開発よりも研究がしたいなら、こちらの進路がおすすめです。
活躍できる分野や業種
機械工学を学んでおけば、知識を生かしてさまざまな業界で活躍できますが、特に就職する学生が多い業界は、自動車メーカーや家電メーカーです。
設計や開発などを行うこれらの業種は、大学で学んだ内容が仕事に直結することから、就職を志す人が多いでしょう。
機械設計の仕事内容については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
機械工学分野の将来性
2010年代に入り、テクノロジーが大きく進化したことで、IoTやAIロボットなどが、世間の人々に知られるようになりました。
一方で、少子高齢化によって働き手が減ることが想定されており、業務自動化に繋がる機械の需要は高まっています。また、IT分野も急速に発展していますが、プログラムの入れ物となる機械の発展も必要不可欠です。
そのため、機械工学は今後さらに発展していくことが予想でき、大学で学ぶ価値は大きいでしょう。
機械工学の将来性については、以下の記事でまとめているので、ぜひ読んでください。
機械工学は将来性のある分野!大学で学んで機械の仕組みを知ろう
機械の需要は世界中で高まっており、機械工学に関する知識を持ったエンジニアは、今後さらに求められるでしょう。
この分野について専門的に学べば、さまざまな面からものづくりに携わることができ、社会貢献にも繋がります。将来性も大きい分野ですので、興味がある人は、ぜひ大学で機械工学を学んでみてください。