照明コンサルタントとはどのような仕事をする?身につけておきたいスキルや資格試験について解説

建築・まちづくり・エネルギー

照明計画はあらゆる建築物の空間に欠かせないものです。照明の種類や演出の仕方によっては、そこにいる人の気持ちを豊かにする側面もあり、空間づくりと照明計画は密接な関わりがあります。

建築物の構造や間取りなどを踏まえて、適切な照明計画を立ててアドバイスするのが照明コンサルタントです。

この記事では、照明コンサルタントの仕事内容や持っておきたいスキル、資格試験の概要などについて詳しく解説していきます。

照明コンサルタントとは

照明コンサルタントとは、個人や企業を対象に照明計画の提案を行ったり、照明に関するさまざまな問題の解決やアドバイスを行ったりする専門家です。

「照明コンサルタント」という名称は、一般社団法人照明学会が登録商標している資格を指します。照明基礎講座を受講し、特定の条件を満たすことで照明コンサルタントとして認定されます。

照明コンサルタントの資格の内容については、記事の後半で詳しく説明します。

照明コンサルタントの仕事内容

照明コンサルタントは、さまざまな建築物に関する照明分野全般の計画を担当しますが、幅広い業務を行っています。ここからは、照明コンサルタントの仕事内容について詳しく見ていきましょう。

ヒアリング・問題の洗い出し

個人住宅の施主や建築物の施工業者などから照明の計画やコンサルティングの依頼を受けたら、依頼主に対してヒアリングを行います。対象の建築物に関する資料をもとに照明に関する問題や要望を聞き出し、問題点を整理します。

  • 依頼主が現在の照明の状況に関して、どのような不安や不満を抱えているのか
  • 最終的にどのような雰囲気を照明によって演出したいのか

などを丁寧にヒアリングし、顧客の要望を叶えられる照明計画をめざします。

光環境の調査・分析

光環境とは、対象の空間における光の分布状況を指します。照明コンサルタントは、対象の建築物に出向き、ヒアリングを踏まえて現状の光環境の調査を行い、調査結果から問題解決のための分析を進めます。

照明器具の人工的な光の放射や拡散だけでなく、窓などの開口部からの自然光の反射や拡散も調査の対象です。

適切な照明計画を立てるには、照明器具からの物理的な光の量だけでなく、自然光も含めた光の広がり方による感覚的な明るさも考慮しなければいけません。建築計画中で建築物が存在していない場合は、図面などの資料や実験によって光環境の分析を行う場合もあります。

照明コンセプトや器具の選定・提案

光環境の調査と分析の結果を踏まえて、問題点の解決や要望の具現化を目的とした照明計画のコンセプトを固めます。それと同時に、コンセプトを形にするための器具の選定を行い、依頼主に提案やアドバイスを行います。

器具の選定作業には器具の配置の提案も含まれます。コンセプトに沿った照明の演出をするには、対象の空間全体を見て、光をどのように拡散させるかを計算しながら提案する必要があるからです。

天井や壁などの構造物に組み込む照明が必要なケースでは、建築物の構造や設計と密接にかかわるため、照明コンサルタントは設計段階から依頼主や設計者とコミュニケーションを取ります。

施工チェック・照明調整の立ち会い

建築物の施工に合わせて、照明計画通りに施工されているかチェックします。電気配線工事は内装工事が始まると修正が難しくなるため、照明コンサルタントは現場の施工チェックも行います。

全体工程の終盤、内装工事が完了する時期には、後付けの器具もすべてセッティングして照度調整の立ち会いをします。コンセプトや空間の用途に沿った光環境になっているか、明るさや光の拡散具合は適切かを確認し、計画と異なる状態であれば調整します。

照明デザイナーやライティングコーディネーターと照明コンサルタントの違いとは

照明関連の職業として、照明コンサルタント以外に知られているのが「照明デザイナー」と「ライティングコーディネーター」です。

照明デザイナーは、名称の通り業務の中心はデザイン業務です。具体的には、

  • 照明器具本体のデザイン業務
  • 建築物やその周辺の景観全体を対象とした照明計画の作成・施工監理業務

などを行います。

照明コンサルタントが照明に関する照明計画の提案やアドバイスを行うのに対して、照明デザイナーは依頼主の要望を踏まえつつ、自分なりの感性を生かして新しい価値観の光環境を創造し提供します。

デザイン要素が強く独創的な成果を求められる商業施設や美術館、博物館、公園など大規模な照明計画を手掛けることが多いです。

一方「ライティングコーディネーター」は、依頼主の要望に応じて対象の空間のイメージに合った器具の選定を行います。

照明デザイナーが行う照明器具のデザイン業務や、照明コンサルタントが行うアドバイス業務は担当しません。

照明コンサルタントが活躍できる業界や場所

照明コンサルタントが活躍している業界は、主に建築業界と家電業界です。

建築業界ではハウスメーカーや工務店、設計事務所などで、個人宅や商業施設などの建築設計業務を通して活躍できます。家電業界では、大手家電メーカーの照明部門やリフォーム部門などにおける販売業務や照明環境プランニング業務を通して活躍できるでしょう。

さらに照明専門メーカーでの器具開発業務や、インテリアショップでのインテリアコーディネート業務といった形でも活躍の場があります。

照明コンサルタントになるには

照明コンサルタントになるには、どのような方法があるのでしょうか。この項目では、未経験から照明コンサルタントになるための3つの方法について紹介します。

学校で照明に関する専門知識を学ぶ

照明コンサルタントが適切な照明計画を立てるには、建築物の構造や施工、建材などに関する知識を持っているかどうかが非常に重要です。光の反射や拡散を計算しイメージ通りの照明プランを形にしていくには、構造や建材、空間のレイアウトなどを考慮することが前提だからです。

これらの基礎的な知識は、大学や専門学校で身につけることができます。大学では、工学部の建築学科や建築工学科、設備工学科、環境デザイン学科などで学ぶことができます。専門学校では、建築系や美術系のデザイン学科を選ぶのがおすすめです。

学校で照明や建築関連の基礎的な知識を身につけることは、照明コンサルタントとして幅広い仕事をこなせる可能性を広げますし、設計者や施工者からの信頼も高まります。

照明コンサルタントの資格を取得する

「照明コンサルタント」の名称で活動することを考えているなら、照明コンサルタントの資格試験を受けるのが早道です。

照明コンサルタントの資格を取得するには、通信講座とスクーリング講座を受講し認定試験に合格することが必要です。テキストを使いながら自分のペースで学習を進めれば取得は難しくありません。

実務経験がなくても受講可能で、認定試験に合格すれば照明コンサルタントとして活動できますので、照明に関する業務経験がない人でも取得しやすいです。

実務経験を積む

いきなり照明の専門家に挑戦するのではなく、建築やインテリアの分野から照明コンサルタントをめざす方法もあります。

  • ハウスメーカーに就職して住宅設計業務に携わる
  • 工務店に就職してインテリアコーディーネーターとして提案業務を行う

住宅全体を対象とした業務の中で、住まいづくりの実務経験を積み重ねていけば、照明に関する基礎知識も自然と身につけることができます。

現場を知った上で照明計画を立てられるようになれば、照明の分野に特化した仕事を担当できるようになりますし、キャリアアップを目的として照明コンサルタントの資格を取得すれば活躍の場が開けるでしょう。

フリーランスのインテリアデザイナーやインテリアコーディーネーターが、知識の補強や他のデザイナーやコーディネーターと差別化を図るために、照明コンサルタントの資格を取得することもあります。

照明コンサルタントの年収はどれくらい?

照明コンサルタントの年収は、300~450万円が相場です。同じ照明分野で働く照明デザイナーの年収相場は350~500万円と、照明コンサルタントよりもやや高めです。

照明デザイナーが照明計画や配置のアドバイスに加えて照明器具のデザインも手掛けるのに対して、照明コンサルタントは照明計画のアドバイスが主な業務です。業務範囲が照明デザイナーよりも限定的な分、年収に影響する可能性があるでしょう。

照明コンサルタントとしてキャリアップを図るなら、実務経験を積み、上位資格である「照明士」を取得するのもおすすめです。高度な照明に関する知識と経験を所有していることが証明される資格ですから、照明コンサルタントよりも年収がアップすることも十分期待できます。

照明コンサルタントに必要な3つのスキル

照明コンサルタントとして活躍するには、どういったスキルが求められるのでしょうか。照明コンサルタントに必要なスキルとして重要なものを3つ紹介します。

インテリアに関わる知識やセンス

照明コンサルタントに求められる重要なスキルの一つは、インテリアのセンスや知識です。

依頼主の要望に合った空間づくりをするには、内装材や家具、ファブリックなどのインテリアを照明でどう見映えよく見せるかがカギですから、インテリアや住宅に関する豊富な知識も求められます。

その上で、インテリアの色や質感などを考慮し、バランスよく照明器具を選定するセンスは照明コンサルタントには不可欠と言えるでしょう。

環境への配慮や関心

近年は社会全体が省エネ志向になっており、少ない消費電力で長時間使用できる器具も数多く開発されています。そのため、消費電力を抑えられる照明計画を提案する姿勢は必至です。

そして、住宅のエクステリア照明や商業施設の外観照明など、周辺環境に影響を与える箇所の照明計画を立てる際には環境への配慮も欠かせません。

近所の住民の生活に支障が出ない、植栽の成長に影響を与えないといったことを念頭に置いて、照明計画を提案する意識を常に持っておくことが求められます。

高いコミュニケーション能力

照明コンサルタントは、依頼主の要望に応えられる照明計画を提案しなければいけません。

そのためには、依頼主の潜在的な不満や要望を把握するために、的確なヒアリングを行うコミュニケーション能力の高さが必要です。

さらに現場でも、設計者や施工者などの関係者に、照明計画を正確に分かりやすく説明することが求められます。

自分の中にある照明のイメージを、図面やパースなどの資料だけでなく言葉でもしっかり伝えられ、設計者や施工者からの質問にも的確に回答し指示できるコミュニケーション能力が必要です。

照明コンサルタント資格試験の基礎知識

前半では、照明コンサルタントの仕事内容について解説してきました。ここからは、資格の概要や取得方法について紹介していきます。

照明コンサルタント資格の概要

照明コンサルタントは、一般社団法人照明学会が主催し認定している民間資格です。

・受験資格

年齢や性別、学歴、国籍の制限はなく、照明に関心のある人であれば誰でも受験できます。

・受験料

通信講座の演習問題の回答方式によって金額が異なります。
インターネットによるオンライン解答の場合は一般で26,840円、学生や社会人学生で19,800円です。
郵送によるマークシート解答の場合は一般・学生共通で29,920円です(いずれも税込)。

・受講申し込み方法

一般社団照明学会の公式サイト(https://www.ieij.or.jp/)から受講申し込みができます。募集予定人数が2,500人に達すると受付が締め切られる場合がありますので、受講を決めたら早めに申し込みしておきましょう。

・資格認定の条件

通信講座のすべての演習問題とレポートが合格点以上であること、スクーリングの履修が認められていることが資格認定の条件です。どちらもクリアすることで照明コンサルタントの認定を受けられます。

照明コンサルタント資格認定までの流れ

照明コンサルタントの取得は、通信教育講座にてテキスト学習と、eラーニング学習(通信教育講座)によって行われます。学習開始から資格認定までの流れを見ていきましょう。

・テキストに沿って独学する

8月~12月の5ヶ月間、テキストの内容に沿って学習します。

・テキストに基づくテストを受ける

演習問題への回答提出を5回行います。100点満点中60点以上が合格です。

・課題テーマに対するレポートを提出する

12月~翌年1月に提出します。

・スクーリング(照明に関する特別講義) を受講する

翌年3月に受講します。受講開始からスクーリングまでの受講期間は約7ヶ月です。

・認定を受ける

すべての演習問題とレポートが合格点以上で、スクーリングの履修が完了すると講座合格となり、照明コンサルタントの資格が認定されます。

照明コンサルタント講座で学べる内容

照明コンサルタント講座では、照明に関するさまざまな内容をバランスよく学べます。

  • 照明の基礎
  • LEDなどの新光源
  • 照明器具や照明計算の基礎
  • 建築物別の照明
  • 住宅の配線と配線器具
  • 屋外施設やスポーツ時の照明
  • 照明の保守と経済
  • 省エネ照明の考え方などの環境問題

など、照明計画のアドバイスやコンサルティングに必要な内容を学習します。

照明に関する知識がない人でも、じっくり時間をかけて専門知識を習得していくことができます。

資格認定後は更新が必要

照明コンサルタントの資格認定後、5年ごとに更新が必要となります。万が一認定が失効しても、執行から2年度内に更新認定を申し込める救済制度があります。

更新認定の要件は、レポートの合格とスクーリングの履修です。更新費用は13,200円(税込)です。

資格の難易度や合格率

「照明コンサルタント講座」は、照明に関心のある人なら誰でも受講できる講座ですから、難易度はそう高くありません。テキストでは、幅広いながらも基礎的な照明の知識について網羅されており、初心者でも理解しやすい内容になっています。

ただし建築やインテリア、電気関係についての初学者は、器具の種類や配線記号などの項目は難しいと感じる可能性はあるでしょう。

講座の合格率は例年80%程度と言われています。7ヶ月の学習期間でコツコツと学習を進め、演習問題を丁寧に解いていけば比較的合格しやすい資格です。

照明コンサルタントの上位資格「照明士」とは

照明コンサルタントを取得した後、さらに照明の分野で専門性の高い仕事をしたいなら照明士の取得がおすすめです。

照明士とは、照明コンサルタントと同じく一般社団法人照明学会が認定する民間資格です。

  • 照明学会の正会員または専門会員であること
  • 照明コンサルタントとして5年以上の実務経験を持っていること

上記が認定要件となっています。

照明コンサルタントよりも、深く幅広い照明の知識を持っていることを証明する資格ですから、対象となる空間の規模が大きくなり、求められる専門性も高まります。ますますやりがいを感じる人もいるでしょう。

まとめ

照明コンサルタントを名乗るために必要となる資格は、講座によって基礎知識から学べるため、建築やインテリアが好きで得意分野を持ちたい人にとっては取得しやすいです。

好きな照明の分野についてもっと深く学びたい、照明の分野から魅力的な空間づくりの仕事に携わりたい、そう考えている人はぜひ取得を検討してみてください。

 

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