室内の内装や家具・ファブリック・小物などを選定し、セッティングしていくインテリア関係の仕事は、心地よく暮らせる空間づくりのために欠かせない仕事です。インテリア関係の仕事をするには、商品の専門知識はもちろん、建築に関する知識や企画力、プレゼンテーション力などさまざまなスキルが求められるだけに、専門資格を取得しておきたいですね。
インテリア関係の専門資格は細分化するとたくさんありますが、インテリア全般の仕事を対象とする場合に生かせる資格としては
- インテリアデザイナー
- インテリアプランナー
- インテリアコーディネーター
の3つがあります。
ただし、この3つの資格の違いがよく分からないと思っている人は少なくないでしょう。それぞれの違いがはっきりつかめると、仕事のやり方や内容の希望がさらに明確になって、進路を決めやすくなります。
この記事では、これら3つの資格の違いについて、さまざまな視点から紹介します。資格取得を検討する際の参考にしてください。
目次
3つの職種の違い
3つの資格の違いは、職種の違いと言い換えることもできます。それぞれどういった仕事をするのかをまとめてみました。
インテリアデザイナー
インテリアデザイナーとは、室内の内装全般をデザインしていく職種です。空間を見映えよくデコレート、つまり装飾するのが目的で、デザイナー本人のセンスを生かして内装を考えていきます。
インテリアプランナー
インテリアプランナーは、インテリアデザイナーと同じく室内の内装全般を考えていく職種ですが、装飾するというよりはプランニング、設計していくという目的で進めます。そのため、建築物とのかかわりはインテリアデザイナーよりも強いです。
インテリアコーディネーター
インテリアコーディネーターは、既に建築されている空間の内装を主に既製のインテリア商品を使ってコーディネートしていきます。家具や照明、内装材など特定の要素だけを対象にコーディネートすることもあります。
仕事内容の違い
室内空間の内装を考え提案するというのは、3つの職種に共通する点です。しかし、それぞれの仕事内容には特徴があります。
インテリアデザイナーの仕事内容
インテリアデザイナーは、家具やファブリック、照明器具、絵画、オブジェなどの小物を使って、室内空間の内装を考えます。住宅や店舗、オフィス、ホテルなどさまざまな空間のインテリアを対象にしますが、既製品を組み合わせる以外に、既製品で思うイメージにならない時はオーダー製作で対応します。
インテリアプランナーの仕事内容
インテリアプランナーは、建築物の設計段階から内装のプランニングにかかわります。大型商業施設や公共施設といった建築物を対象に、造作家具や建築化照明など建築工事に直接影響するプランを提案するため、工事の早い段階から現場に入って設計者や工事監理者と一緒に仕事を進めます。
インテリアコーディネーターの仕事内容
インテリアコーディネーターは、主に既製のインテリア商品を組み合わせて内装プランを作り上げます。住宅や小規模店舗、オフィスなどを対象とすることが多く、大型の建築物はほとんど取り扱いません。主にインテリアメーカーの商品を取り扱うため、オーダー製作はしない現場も多いです。
それぞれの職種におすすめの人は?
同じインテリア関係の仕事でも、その内容や進め方には違いがあります。それぞれの職種に適している人とはどういった人なのでしょうか。
インテリアデザイナーに適している人
インテリアデザイナーは、室内空間の内装を一から考える仕事ですから、人とは違う内装デザインを求められることが多いので、インテリアの知識とセンスがある人が適しています。また、コンペに参加する機会があるため、提案プランの意図を説明できるプレゼンテーション力のある人も適しているでしょう。
インテリアプランナーに適している人
インテリアプランナーは、空間が建設されていない段階から打ち合わせに参加することが多いため、インテリアの知識に加えて建築関連の基礎知識を持つ人が適しています。また、建築設計者や工事監理者など多くの人と一緒に工事中から仕事をしますから、折衝能力がある人も適しているでしょう。
インテリアコーディネーターに適している人
既に存在する空間のインテリアをコーディネートする上で、基本的に既製品を取り扱うため、インテリアコーディネーターはインテリアメーカーや商品をたくさん知っている人が適しています。また、部分的なコーディネートをすることも多いため、カーテンや照明など得意分野が決まっている人も適しているでしょう。
資格の違い
インテリア関係の資格を取りたいと思っている場合、これら3つの資格の違いは把握しておきたいですね。資格の詳細についてそれぞれまとめてみました。
インテリアデザイナーの資格について
資格認定団体 | 日本デザインプランナー協会 |
受験資格 | 特になし |
年齢制限 | なし |
受験内容 | 家具や照明などのインテリアに関する商品知識、販売や技術等に関する基礎知識など |
費用 | 10,000円(税込) |
合格率 | 正解率70%以上 |
https://www.designshikaku.net/as_shi/
インテリアプランナーの資格について
資格認定団体 | 公益財団法人建築技術教育普及センター |
受験資格 | 特になし |
年齢制限 | なし |
受験内容 | インテリア計画、インテリア装備、インテリア施工、インテリア法規、建築一般(学科試験)/建築物における空間の使われ方、生活のイメージが判るようなインテリア設計(設計製図試験) |
費用 | 学科試験9,720円、設計製図試験16,500円(税込) |
合格率 | 正解率60%以上 |
https://www.jaeic.or.jp/shiken/ip/ip-shikenannai-2019.html
インテリアコーディネーターの資格について
資格認定団体 | 公益社団法人インテリア産業協会 |
受験資格 | 特になし |
年齢制限 | なし |
受験内容 | インテリアコーディネーターの仕事、インテリアの歴史、インテリア計画、インテリアエレメント、インテリアの構造や仕上げ、環境と設備、コーディネート表現、インテリア関連の法規や制度(一時試験)/プレゼンテーション、論文(二次試験) |
費用 | 一次試験→二次試験の場合14,850円(税込) |
合格率 | 32.4%(2018年度) |
https://www.interior.or.jp/examination/ic/overview/
※2019年9月現在の情報です
勉強方法の違い
3つの資格を取得するための勉強は、インテリアに関する知識の習得という共通項目とは別に注力する分野が少しずつ異なります。
インテリアデザイナーの勉強方法
インテリアデザイナーの資格取得のための専門講座はありませんので、独学で勉強することになります。ただし過去問題集などは出されていないため、通信教育で該当する講座でを利用するのが取得の近道です。
インテリアプランナーの勉強方法
インテリアプランナーを取得するための勉強法は、専門学校への通学と独学の2つがあります。通学の場合は、アート系や建築系の専門学校の該当コースに1~2年通学します。独学の場合は資格認定団体から発行されているテキストを使うのが一般的でしょう。
インテリアコーディネーターの勉強方法
インテリアコーディネーターを取得するための勉強法は、インテリアプランナーと同じく専門学校への通学か独学の2つがあります。インテリアコーディネーター専門のコースがあり、1~2年通学します。独学で取得したいなら、資格認定団体発行のテキストや過去問題集を使うか、通信教育で学ぶのが一般的です。
活躍できる場所の違い
3つの職種を生かせる場は重複していることも多いですが、少しずつ違いがあります。資格を生かせる場所を見つけることが、活躍できるための条件の一つです。
インテリアデザイナーの場合
インテリアデザイナーとして住宅をメインにデザインする仕事を行いたいなら、デザインに強いハウスメーカーや設計事務所に就職すると活躍できます。商業施設を多く手掛けるデベロッパーや大手工務店、店舗設計会社なども、コンペを通して大きな案件を担当する機会を得られます。実力がつけばフリーランスで活躍することも可能。
インテリアプランナーの場合
オフィスや店舗、商業施設、公共施設など大型の建築物を設計施工するゼネコンやデベロッパー、大手工務店などに就職すると、インテリアプランナーとして活躍できる機会をつかみやすいです。ゼネコンやデベロッパーの下請け企業もチャンスはあるでしょう。
インテリアコーディネーターの場合
住宅をメインとして仕事をするインテリアコーディネーターは、ハウスメーカーや工務店、リフォームショップのほか、インテリアショップや家具ショップ、住宅設備ショールームなどで活躍できます。近年リフォーム工事を請け負うようになったホームセンターや大型電気店でも資格を生かせるでしょう。実力や経験が積み重なればフリーランスで活躍できます。
待遇や給料の違い
資格を取ったら待遇や給料は変わるのか、気になるところですね。
どの職種であっても、ハウスメーカーや設計事務所に正社員で所属しているなら、年収300万円前後からスタートし、実績に応じて上がっていきます。契約社員だと年収240万円前後、派遣社員なら時給1200~1500円が相場です。
さまざまな案件を通して実績や知識が豊富になってくれば、担当案件の規模が大きくなり、年収は当然上がっていきます。実力重視でさらに稼ぎたい場合は、独立してフリーランスになることで年収800~1000万円も夢ではないでしょう。
就職に有利なのはどれ?
3つの資格の中で、就職しやすいという視点から考えるとインテリアコーディネーターがもっとも優位です。住宅を対象とした仕事がメインなので案件数が多いですし、家具や照明、カーテンなどの専門ショップといった細分化された分野にも需要があるからです。
また、結婚や出産育児、介護など生活上の経験を提案に反映させていけるため、年齢を重ねるほど提案力の幅が広がり活躍できるのです。
インテリアデザイナーの場合は感性が大切ですが、年代が上がっていくうちにセンスが古くなるなどのハードルが出やすいです。考え方が柔軟な若い年代のうちにさまざまな現場を経験してセンスを磨いておく努力が必要です。
インテリアプランナーは、大型商業施設や公共施設を取り扱う野を目標にしているなら、就職先自体がそう多くありません。3つの中ではもっとも就職や転職が難しいと言えます。
空間作りに欠かせない3つの資格
今回取り上げた3つの資格に共通するのは、インテリアの専門家であるということです。担当する案件の規模や仕事の範囲、対象となるクライアントなどの違いはあっても、室内空間の内装を作り上げていくという点は同じです。
人々が楽しく過ごしたり、刺激を受けたり、ゆったりくつろいだりする空間をインテリアという視点から作り上げていく醍醐味は、何物にも代えがたい喜びです。自分ならどの資格だとこの喜びをもっとも強く味わえそうか、じっくり考えて選び、ぜひ資格取得に挑戦してみてください。
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