情報の教員免許は需要が高くなる可能性大!取得する方法やメリットを解説

工学教育

2022年4月から、高等学校においても新しい学習指導要領がスタートし、新しい科目となった「情報」。IT技術の進歩により必須となったコンピューターやインターネットに関する知識や使い方を学ぶ授業です。

また、近年の高等学校学習指導要領の再編成によって、高校の情報の教員免許は需要が高まる可能性が大きくなっています。

これから情報の教員免許の取得を検討している人のために、情報の教員免許の種類や取得方法、難易度、取得するメリットを解説します。

情報の授業の種類と対応する教員免許について

「情報」と名の付く授業は、小学校、中学校、高校に存在しているため、どの授業を教えたいかによって必要となる教員免許が異なってきます。

まずは、情報の授業の種類と対応する教員免許について解説します。

小学校の授業内容と対応する教員免許

小学校には「情報」という科目はありません。

一方で学習指導要領では中学校の情報教育へのスムーズな接続のために、小学校段階での「基本的な操作」の確実な習得が必須であるとし、既存の科目の一環として情報教育を取り入れています。

小学校における情報の授業の例を以下にまとめました。

教科・科目情報教育として行うこと
国語・ローマ字入力
・電子ファイルの保存
理科観察記録や実験データを表計算ソフトに入力、表やグラフにする
社会・地図や統計、写真などの資料の活用
・表計算ソフトでの統計
・電子掲示板、電子メール、テレビ会議による情報交換
家庭科家庭生活、食事、調理、衣服、消費生活などに関する情報をインターネットで検索
図画工作インターネットで美術作品に関する情報を検索
総合的な学習の時間・電子ファイルの保存
・フォルダを使ったファイル整理
・電子メールの作成と送信

小学校で情報の科目を担当するには、一般的に「小学校教諭免許」が必要となります。

中学校の授業内容と対応する教員免許

中学校では、小学校段階で身に付けた基本的な操作に関する知識や技術の昇華、情報機器やソフトウェアの活用の幅の拡大のために情報教育を行います。

2021年度教育指導要領では、技術家庭の技術領域で情報教育が行われていましたが、2022年度の新教育指導要領から、小学校段階と同じく既存の各教科で情報の授業を行うことになります。

中学校における情報の授業の例を以下にまとめました。

教科・科目情報教育として行うこと
国語・図書、コンピュータやインターネットなど複数のメディアを利用
・ワープロソフト、プレゼンテーションソフトの利用
数学・インターネットによる情報収集
・表計算ソフトの利用
理科・テーマに関する情報を適宜記録して整理
・図書室、博物館、インターネットなどを活用、情報の選択
・表計算ソフトの利用
社会・地図や統計、写真などの資料を活用
・インターネットなどで学習内容に関する情報収集
・データの集計、整理
外国語活動海外との電子メールでのやりとり
技術家庭の技術分野・コンピューターの名称や接続方法について
・プログラム処理、インターネットによる情報収集
・目的に応じたメディアの選定
技術家庭の家庭分野・栄養管理ソフトなどを利用
・ソフトウェアを利用した衣服の配色
・間取りなどをコンピュータで確認
保健体育・インターネットによる情報収集
・デジタルカメラやビデオカメラでの記録
総合的な学習の時間・インターネットによる情報収集
・統計的な手法でグラフにする

中学校でも各教科で情報教育を行うため、対応する教員免許があれば情報の授業は行えます。

ただし、ほかの教科では教科に関連する知識や情報を得る方法として、コンピューターを活用する、という側面が強いです。

コンピューターの知識や技術について学ぶ情報の授業は技術家庭の技術分野となります。

技術家庭の技術分野における情報の授業を中学校で教えるためには、「中学校教諭免許(技術)」が必要です。

高校の授業内容と対応する教員免許

高校からは、「情報」が独立した教科となります。共通科目、専門科目として以下の科目を学びます。

共通科目情報Ⅰ、情報Ⅱ
専門科目情報産業と社会、課題研究、情報の表現と管理、情報テクノロジー、情報セキュリティ、情報システムのプログラミング、ネットワークシステム、データベース、情報デザイン、コンテンツの制作と発信、メディアとサービス、情報実習

高校で情報の授業を担当するために必要なのは「高等学校教諭免許(情報)」です。いわゆる情報の教員免許となります。

ただし、情報の教員免許を持たないほかの教科の教師が、情報の授業を兼務しているケースも多くあります。

教員免許について

情報の教員免許について解説するまえに、教員免許全般についてかんたんに説明しておきます。教員免許には、以下の3種類があります。

  • 普通免許状
  • 特別免許状
  • 臨時免許状
一般的に「教員免許」と呼ばれているものは、普通免許を指す場合がほとんどです。

さらに普通教員免許には、相当する学歴によって以下の3種類があります。

  • 二種免許状(短大卒相当)
  • 一種免許状(大学卒相当)
  • 専修免許状(大学院卒相当)
さらに、教える学校の種類によって以下に分類されます。
  • 幼稚園教諭免許状
  • 小学校教諭免許状
  • 中学校教諭免許状
  • 高等学校教諭免許状
教科担任制となる中学校、高校の教員免許は教科ごとに教員免許が存在します。

たとえば中学の数学の先生になるなら「中学校教諭免許状(数学)」、高校の数学の先生になるなら「高等学校教諭免許状(数学)」が必要です。

教員免許の種類や取得方法については、こちらでも詳しく解説しています。

以上をふまえて、次に情報の教員免許の取得方法を解説します。

情報の教員免許の取得方法

情報の教員免許の取得方法について解説します。

大学または大学院を卒業する

情報の教員免許は、中学校にはなく高校にのみ存在します。情報が教科として存在するのは高校から独立した強化となるからです。

高校の教員免許は「第一種」または「専修」のみで、「第二種」は存在しません。そのため、大学または大学院の卒業が必須です。

情報の教職課程のある学部・学科を選ぶ

教員免許は、大学や大学院を卒業するだけでは取得できません。

情報の教員免許が取得できる教職課程を設けている大学や大学院の学部・学科を選び、履修する必要があります。

大学卒業となる「学士」の学位を取得するために必要な単位、さらに教職課程で必要な単位を修得し、教育委員会に申請することで、卒業時に情報の教員免許を取得できます。

情報の教員免許を取得できる学部・学科には以下のものがあります。

学部学科
教育学部教育学科など
工学部・情報エレクトロニクス学科
・電子情報工学科
・情報工学科
・情報通信工学科
・電気電子工学科
・創生工学科
・情報システム学科
・総合工学科など
理工学部・情報システム工学科
・電子光工学科
・電子情報工学科
・共生システム理工学類など
理学部・理学科
・数学・情報数理学科
・情報科学科など
商学部・社会情報学科
・マーケティング学科
・経営学科
・経営情報学科など
経営学部・経営学科
・地域経営学科
・経済経営学科など
情報学部・情報工学科
・ビジネスデザイン学科
・流通情報学科
・情報表現学科など

久留米工業大学では、工学部・情報ネットワーク工学科で情報の教員免許を取得できます。

通信制大学で必要な単位を取得する

通信制大学で教職課程を併設している学部・学科がある場合、一般的な大学と同じく教員免許の取得が可能です。

さらに、通信制大学では必要な単位のみを取得できる「科目等履修生」となって教員免許取得も目指せます。

たとえば、すでに大学を卒業している人が情報の教員免許を取得したいときは、通信制大学の科目等履修生となり、教員免許の取得に必要な単位のみの履修ができます。

大学卒業に相当する学士の学位取得で履修した単位は有効なため、あらためて取得する必要はありません。

情報の教員免許の取得に必要な単位を履修した時点でいつでも修了できます。
社会人から情報の先生を目指したいときなども、選択肢となるでしょう。

特別免許状・臨時免許状を発行してもらう

情報の教員免許の普通免許状ではなく、臨時免許状、特別免許状を発行してもらうケースもあります。

  • 特別免許状…都道府県教育委員会が行う教育職員検定に合格する
  • 臨時免許状…都道府県教育委員会が行う教育職員検定(人物・学力・実務・身体)に合格(教員免許取得者を採用できない場合に限る)
特別免許状は、専門的な知識やスキル、経験を持つ社会人を学校現場に迎えるために誕生した教員免許です。

学歴や履修した単位が問われない代わりに、社会人としてすぐれた経歴や実績、生徒へ教えられるだけの知識やスキルが求められます。

臨時免許状は、僻地や離島などで教員免許取得者を教員として採用できない場合にのみ発行される教員免許です。

よって、「情報の教員免許が取得できる教職課程を設けた大学・大学院を卒業する」ことが、高校卒業から情報の教員免許取得で最短かつ一般的な方法となります。

かつてあった情報の教員免許取得方法

2022年4月現在は廃止されていますが、かつて以下の方法でも情報の教員免許が取得できました。

  • 認定講習会を受ける
  • 情報免許認定試験に合格する
認定講習会は、理科、数学、家庭、商業、工業など一部の教科の教員免許を持つ人材を対象とした講習会です。15日間の講習会を受けると、情報の教員免許が取得できました。

情報免許認定試験とは、教員免許の有無を問わず受験できる試験です。合格すると情報の教員免許が取得できましたが、合格率は3%程度と難易度の高い試験となっていました。

情報の教員免許は今需要が高くなっている!

2022年4月現在、情報の教員免許の需要が高くなっています。情報の教員免許を取り巻く背景や状況を解説します。

学習指導要領の改訂により情報の授業が大幅に変更

2022年度からはじまる「新学習指導要領」では小・中・高における情報教育の重要度が従来よりも高くなっているのが特徴です。

前述通り、小学校の段階で中学校へスムーズに情報教育を接続できるように、各教科でも積極的に情報教育が取り入れられています。

中学校では、従来の技術家庭の技術領域にとどまらず、幅広い教科で情報教育が展開されることになりました。

高校では、従来の「社会と情報」「情報の科学」から構成される授業は終了し、「情報Ⅰ」が必修科目となります。さらに、2023年度からは選択科目で「情報Ⅱ」が選べるようになります。

高校に情報が教科として設置されたのは、2003年度の学習指導要領からです。以前は数学の一部領域として情報の分野を学ぶのみでした。

その後情報社会やIT技術の推進を受けて情報教育の重要性が高まり、2022年度の高等学校学習指導要領からは全員プログラミングやデータの活用が必須になるなど、より専門的かつ細分化された情報の授業が展開されることになります。

実は情報の教員免許を持っている人材は少なく、各自治体の学校ではほかの教科・科目の教員が情報の授業も兼任しているケースも多くあります。

NHKが全国の都道府県の教育委員会に対し2022年度、公立高校で情報を教えている教員の状況を聞いたところ、全員情報の免許を持っていると答えたのは埼玉県、東京都、兵庫県、佐賀県の4都県のみとなりました。

情報の教科としての重要性が高まっているため、情報の教員免許の需要も高まっています。

大学入学共通テストの科目に追加される

2022年度より「情報Ⅰ」が高校の必修科目になったことを受けて、2025年の大学入学共通テストより、すべての国立大学で原則情報が科目として追加されることが決まりました。

大学受験科目となるため、すでに一部の受験予備校や塾などでは、情報の教員免許を所持している人材を講師として、受験対策の授業を展開しています。

大学入試の面でも、情報の教員免許を持つ人材のニーズが高くなっています。

情報の教員免許を取得するメリット

今需要が高くなっている情報の教員免許は、取得することで多くのメリットが得られます。情報の教員免許を取得するメリットを解説します。

教員になれるチャンスが広がる

前述通り、情報の教員免許は需要が高くなっています。

文部科学省は2021年11月すでに2022年度の新学習指導要領の高等学校情報科の着実な実施のために、高等学校教諭免許状「情報」保有者の計画的な採用、配置の工夫、現職教員の免許状取得の促進の事務連絡を通知しています。

今後各自治体の教員採用試験や私立の採用試験でも、情報の教員の採用枠が拡大することが期待できます。

高校の教員を将来の進路として検討している場合、情報の教員免許を取得しておくことでチャンスが広げられるのもメリットです。

高校の教員免許のみ取得すれば良い

中学校と高校の教員免許は同時取得できますが、高校の教員免許のみを取得するより多くの単位が必要です。

情報の教員免許は高校のみのため、大学で取得する単位が少なく、教員免許が取得しやすいメリットもあります。

英語や国語、数学、理科、社会など中学校と高校どちらにも設置されている教科・科目の場合、指導を希望する学校を問わず採用試験の受験条件に中学校・高校両方の教員免許所持が設けられている場合があります。

たとえば東京都では以下の教科の採用試験を「中学校・高等学校共通」区分とし、受験には中学校・高校両方の教員免許が求められます。

一方「高等学校」区分は、受験する教科の高校の教員免許のみで受験できます。

中学校・高等学校共通
(中学校・高校両方の教員免許が必要)
高等学校
(高校の教員免許のみで受験できる)
・国語
・社会(地理歴史)
・社会(公民)
・数学
・理科(物理、化学、生物)
・英語
・音楽
・美術
・保健体育
・情報
・商業
・工業(機械系)(電気系)、(化学系)、(建築系)、(工芸系)
・農業(園芸系)(食品系)、(畜産系)、(造園系)

中学校の技術の授業を担当できるチャンスもある

教員免許には、「専科担任制度」があります。専科担任制度とは、学校区分が違う教員免許で相当する教科・科目の授業が担当できる制度です。

たとえば中学校・高校の理科の教員免許を取得している場合、小学校の理科の授業を担当できます。

専科担任制度を利用すると、情報の教員免許を所持している場合は中学校の技術家庭の技術分野を担当できます。

情報は高校にのみ存在する教員免許ですが、技術は中学校にのみ存在する教員免許です。

情報分野は技術分野に相当すると考えられ、中学校の技術の教員免許がなくても、情報の教員免許で中学生の技術の授業を担当できます。

中高一貫校など中学校・高校両方で異動や指導が求められる学校でも、情報の教員免許のみで中学生の授業ができるチャンスが広がる可能性があります。

予備校や塾の講師の選択肢もある

2025年の大学入学共通テストより、情報が原則すべての国立大学の科目として追加されることになりました。受験対策のための情報の授業や講座を設ける予備校や塾も今後増加していくでしょう。

情報の教員免許があれば、情報の授業や講座を担当する予備校や塾の講師を進路としても選べます。

今後必須となる知識を生徒へ教えられる

生まれたときからインターネットやスマートフォン、SNSなどが身近にある中で育った「デジタルネイティブ」世代からも分かるように、IT技術は進歩し、私たちの生活に欠かせないものとなりました。

今後日本はサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによって開かれる未来社会「Society 5.0」を目指すことが提言されている通り、デジタルやITに関する知識やスキルは、今後生きていくうえで必須の能力となります。

ただデジタルの知識を体系的に学ぶのみだった情報の授業は、今後のデジタル社会を生きていくうえで必須となる知識やスキルを身に付けるための授業となりました。

情報の教員免許を取得できる大学の学部や学科は、工学系をはじめ専門的な理系の知識を学べるものがそろっています。

自分が得意とする知識やスキルを、生徒が生きていく力として教えられるのも、情報の教員ならではのやりがいであり、メリットでしょう。

工学系に興味があるなら情報の教員免許も目指してみよう

情報の授業と対応する教員免許とともに、情報の教員免許の取得方法や需要が高まっている背景、取得するメリットを解説しました。

学習指導要領の改訂や大学入学共通テストでの科目追加など、教科・科目としての情報が重要視される背景には、情報教育の重要性と必要性が高まっていることがあります。

情報系の知識やスキルに加えて教員免許があれば、SEなどのIT系職種以外にも、情報の先生も将来の職業として選択できます。

工学系やIT系、デジタル系に興味がある・得意という人は、今後も需要の高まりが期待できる情報の教員免許取得もぜひ目指してみましょう。

 

情報分野の先生を目指せる学科

 

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