機械設計技術者試験とはどのような資格?取得するメリットや資格の取得方法について詳しく解説

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機械設計技術者試験とはどのような資格?取得するメリットや資格の取得方法について詳しく解説

機械設計の仕事に興味があるなら、「機械設計技術者」の資格について知っておくと良いでしょう。就職の必須条件ではありませんが、資格を持っておくと、就職活動で有利になる、活躍の場が広がるなどのメリットが得られます。

今回は、機械設計技術者とはどんな資格なのか、試験の流れや概要を説明します。

そもそも機械設計とは何をする仕事?

そもそも機械設計とは何をする仕事?

世の中に存在する機械は、想い描いたアイデアを、あらゆる段階を経て具体化することで生まれます。イメージを実際の形にするまでが、広い意味での機械設計の仕事です。

具体的な仕事内容としては、機械を作る上で必要な原料や材料の選定や、設計や製図の作成、どのような技術を使用するかの検討などを行います。

最後は、具体的な寸法や組立の方法などを、設計図(図面)に細部まで落とし込み、実際に生産できるまでに仕上げます。

設計対象となるのは、以下のように「機械仕掛け」で動くものすべてです。

  • 洗濯機や電子レンジなどの家電製品
  • 自動車やバイクなどの車両
  • ゲームセンターや遊園地などに設置される遊具
  • 掘削機や溶接機など、他の製品を作る際に使用する工業用機械

機械設計のやりがいや、必要なスキルなどは以下の記事にまとめています。

機械設計技術者試験の基礎知識

機械設計の仕事内容を把握したところで、「機械設計技術者試験」はどのような目的で行われるのか、基本的な部分について解説します。

機械設計技術者試験とは

機械設計技術者試験とは

機械設計技術者試験は、一般社団法人の「日本機械設計工業会」が実施する資格試験で、第1回の試験は、平成7年に実施されました。国家資格や公的資格ではなく、民間資格となります。

試験の概要を簡単にまとめました。

  • 試験レベルは1級から3級までの3つ
  • 試験時期は年1回、11月下旬に実施
  • 機械工学に関連する知識や、技術に関する問題を中心に出題

試験の目的

機械設計技術者試験は、機械設計技術者の能力を正確に評価するとともに、設計技術者の能力や社会的な地位の向上を図り、ひいては日本の機械産業の発展に貢献するという目的で実施されています。

また、機械設計の実務上で、採用・昇進といった人事評価の目安としても利用されています。

対象となる人

対象となる人

では、機械設計技術者試験の対象者はどのような人でしょうか。理由も含めて説明します。

機械設計に関する仕事に就職を志望する学生

主に、機械設計に興味を持っている大学生・高専生が該当します。取得しておけば、就職活動の際に有利に働くことはもちろんですが、就職後、実際の業務の中でスムーズに技術を習得し、早い段階で活躍できるでしょう。

在学中には、機械設計技術者試験の3級を受験するのがおすすめです。3級で出題される内容は、機械系の技術者として最低限必要な基礎知識が問われます。

機械設計の仕事にすでに就いている人

すでに機械設計の仕事に就いている人も、受験して損はありません。

資格がないと就業できないわけではありませんが、企業の中には有資格者への手当があったり、昇進や昇給といった人事評価において、資格の有無が考慮されたりする可能性があるからです。

また、資格を取得することで、機械設計に必要な技術や知識があるという証明にもなります。

機械設計技術者試験の概要

機械設計技術者試験は、難易度に応じて1級から3級までの階級分けが行われています。以下では、階級ごとの試験内容や受験資格などについて説明します。

3級

機械設計技術者試験の概要

機械設計技術者試験の3級では、機械工学に関する基礎的な知識を問われます。試験はマークシート方式で行われ、試験時間は前半2時間、後半2時間の計4時間です。

受験資格は定められておらず、実務経験の有無も問われません。このため、学生も含めて誰でも受験できます。3級に合格することで、2級の受験資格が緩和されます。

出題範囲は以下の8分野です。

  • 機構学・機械要素設計
  • 機械力学
  • 制御工学
  • 工業材料
  • 材料力学
  • 流体・熱工学
  • 工作法
  • 機械製図

いずれも機械設計における基礎知識であるため、工学系を専攻し、十分に学習している学生なら合格可能な難易度です。

2級

機械設計技術者試験の概要

2級では、実際の機械設計業務において、基礎設計に基づいた具体的な機能・機構・構造の設計ができるだけの知識と、技術を備えているかを問います。

3級との最大の違いは、受験資格である実務経験の存在です。

  • 工学系の大学院・大学・高専専攻科を卒業している場合は3年
  • 工学系短大・高専・専門学校を卒業している場合は5年
  • どちらにも該当しない場合は7年

ただし先述した通り、すでに3級に合格している場合は受験資格が緩和され、1年分の実務経験が免除されます。

試験時間は、第1時限・第2時限がそれぞれ2時間ずつ、第3時限が1時間30分の計5時間半です。

また、以下の7科目から出題され、マークシートと記述の併用方式で回答します。

  • 機械要素設計分野
  • 熱流体分野
  • メカトロ分野
  • 力学分野
  • 材料・加工分野
  • 環境安全分野
  • 応用・総合

実務上の知識が問われる分、難易度は3級よりも格段に難しくなることに注意が必要です。

1級

機械設計技術者試験の概要

機械設計技術者試験の1級は、機械装置の基本仕様を決定する上で、必要な業務上の能力を備えているかを問う試験です。

受験資格はさらに厳しくなり、

  • 工学系の大学院・大学・高専専攻科を卒業している場合は5年
  • 工学系短大・高専・専門学校を卒業している場合は7年
  • どちらにも該当しない場合は10年

上記の実務経験を経た上で、職務経歴書を提出し、受験資格審査で受験資格が認められる必要があります。

ただし、2級に合格している場合は実務経験年数を問わず、2級を取得した次の年度から受験が可能です。

設計管理関連課題、機械設計基礎課題、環境経営関連課題に加えて実技課題と小論文が試験科目として用意され、すべての科目を記述式で回答します。

試験時間は2級と同じく、第1・第2時限がそれぞれ2時間、第3時限が1時間30分の計5時間半です。

小論文が試験科目として存在すること、実技に関する課題が出題されることなどから、難易度はさらに上昇します。

とはいえ、2級までの内容を踏まえた上で望めば合格は不可能ではなく、合格率は3割から5割程度で推移しています。

機械設計技術者試験を生かせる仕事や業界

機械設計技術者試験を生かせる仕事や業界

機械設計技術者を求めている業界は多岐に渡ります。

例えば、自動車業界では、自動車やバイクなどに使用されるパーツの研究や開発といった面で、活躍が期待されるでしょう。

家電業界においても、冷蔵庫や洗濯機などといった白物家電の研究・開発はもちろん、パソコンやスマートフォンなどの情報家電についても、パーツの開発に携わることがあります。

重工業全般で見ても、製造設備や産業用ロボットの設計において、機械設計技術者はなくてはならない存在です。

2010年代より急成長を遂げたIoTの分野においても、ドローンやロボットアームなどの精密機器分野に関して、機械設計技術者の知識と技術は欠かすことができません。

機械設計技術者試験を取得するメリット3つ

機械設計技術者試験を受験し、資格を取得することで、どのような恩恵があるのでしょうか。以下では、機械設計技術者試験の資格を取得するメリットについて、代表的な3つを紹介します。

就職に有利になる

就職に有利になる

「機械設計技術者試験の資格を取得した」という実績は、機械設計の業務上必要な知識を備えているという証明になります。

入社時点で資格を保有している人材は、ゼロから指導する手間も省けることから、企業にとって「欲しい」人材と言えるでしょう。

募集要件に「機械設計技術者試験の有資格者は優遇する」と明言しているケースの他にも、資格取得をサポートする制度がある企業や、資格手当が存在する企業は、資格取得者にとって狙い目です。

スキルの証明になる

機械設計技術者試験は公的な資格ではありません。あくまでも民間の団体が認定する資格のひとつです。

しかし、機械設計技術者試験は毎年多くの技術者が受験しています。合格する人もいれば試験に落ちる人もいますから、資格の取得は、試験に合格するだけの一定のスキルがあるという証明になるのです。

もちろん、資格を取得していない技術者の中にも、優れたスキルを持っている人は少なくありません。しかし、スキルがあることを示すには、資格取得がもっともわかりやすい手段なのです。

段階的にステップアップできる

段階的にステップアップできる

後述する「技術士」の資格は、機械設計において最高峰の国家資格で、その分難易度も高いです。

しかし、機械設計技術者試験の各階級をクリアしていけば、段階的なステップアップを行うことができます。一足飛びに高いハードルを目指すのではなく、徐々に目標を高くしていくことで、今自分に何が足りないのか、次の目標の達成のために何を勉強すべきかが見えやすくなるのです。

最終的に技術士の資格取得を目指すには、機械設計技術者試験を利用することで、ステップアップを繰り返しながら、確かな技術と実力を身につけられるでしょう。

機械設計技術者試験を取得する方法

機械設計技術者試験を取得するにあたって、どのような方法があるか、具体的に何をすればよいのかについて説明します。

大学・短大・専門学校で学ぶ

大学・短大・専門学校で学ぶ

機械工学系の学科がある大学・短大への進学を目指すことが、資格取得の第一歩です。また、専門学校に通う場合でも、技術者向けの講座を開設している学校を選ぶことをおすすめします。

大学や短大、専門学校で学習する内容は、機械工学に関する基礎知識や、ものづくりにおいて必須となる知識や技術です。

こうして学んだ内容は資格取得のみならず、就職して実際の業務に携わる上で大いに役に立ちます。また、学校によっては資格取得をサポートする態勢も整っているため、受験の際にはこれらのサポートを活用できるでしょう。

3級から受験する

先述した通り、3級は実務経験の有無に関わらず誰でも受験できます。就職して日の浅い新人技術者や学生も数多く受験しています。できるだけ、学生のうちに3級を取得しておけば、時短にもなるでしょう。

参考書や過去問が市販されているため、試験勉強の際にはこれらを活用することをおすすめします。3級を取得した状態で就職し、技術者として実務経験を積んだ上で2級、1級に挑戦するのが理想的な流れです。

機械設計に関する他の資格

機械設計に携わる人向けの資格試験は、機械設計技術者試験だけではありません。この項目では、機械設計に関連する他の資格試験について説明します。

技術士(機械部門)

機械設計に関する他の資格

「技術士」は、科学技術に関連する国家資格の中で、トップクラスの位置付けです。

いくつかの部門にわかれていますが、機械設計に関わるのは「機械部門」となります。この資格を持っていれば、機械工学に関する高度な知識や技術、倫理観を備えていることを証明できます。

その分、試験の難易度は機械設計技術者試験よりも高く、特に技術士の二次試験に合格するのは至難の業です。

一方、一次試験を合格することで得られる「技術士補」の資格取得は、機械設計技術者試験の3級よりは難しく、2級よりは易しいという位置づけです。

CAD利用技術者試験

「CAD利用技術者試験」は、一般社団法人コンピュータ教育振興協会が実施する民間資格試験です。

CADソフトウェアを利用する上で必要となる知識や、実際にCADを使用して、製図の技術を問う目的で実施されています。日常的にCADを使用して製図を行っているのであれば、合格できる難易度です。

おわりに

おわりに

現在の機械設計業界は、深刻なエンジニア不足に陥っています。その一方で、IoT関連技術の発展や、産業におけるAIの活用が盛んになるなど、技術の進歩は著しいです。

こうした流れの中で、企業は優れた能力を持つエンジニアを確保しようと、必死になっています。機械設計技術者試験は、こうした情勢の中で優れた技術者を育て、増やしていくという役割を担っているのです。

 

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