工学で学ぶ技術を福祉分野で発揮する福祉工学とは?

工学教育

今、日本は少子高齢化に伴い、あらゆる産業で人手不足が懸念されています。特に介護の現場におよぼす影響は大きく、このままでは福祉サービスが本当に必要な人へ行き渡らなくなってしまいかねません。

そこで力を発揮するのが福祉工学という分野です。今回は福祉工学の概要を紹介するとともに、実用例や福祉工学が社会から求められる理由について紹介します。

福祉工学とは

福祉工学とは、高齢者や障害者の日常生活を支える器具・機械に携わる分野です。

分かりやすい例としては義手や義足、車いすなどの設計が挙げられるでしょう。他にも介護用ロボットや介護用ベッドの開発・製造も福祉工学の領域だといえます。

福祉工学が他の工学分野と違う点

ただ器具や機械を作るだけなら、福祉工学を他の工学分野と分ける必要はないと思うかもしれません。しかし、福祉工学分野では医療や看護、介護に関する知識も求められます。

例えば、これから電動車いすなどの福祉機器を開発するとしましょう。この場合、利用者は脚の不自由な高齢者や障害者を想定することになりますが、福祉機器が必要になる方の多くは複雑な機械の操作に慣れていません。いくら便利な道具であっても、難しい設定や操作が求められるものでは使いこなせる人の数が限られてしまいます。福祉機器を設計するなら、機械が苦手な方でも直感的に扱えるものにしなくてはいけません。

ユーザー目線で設計を考えるのは車や家電でも同じです。ただ、高齢者や障害者は周りの人になかなか理解してもらえない悩みや苦しみを抱えていることが多いものです。開発者と利用者のミスマッチを防ぐには、開発者自身も福祉の問題に精通しているべきなのです。

福祉工学で学ぶこと

福祉工学を学ぶ上でも、機械工学や情報工学など、機械を設計・製造するための知識を学びます。しかし、機械に詳しいことと利用者に寄り添った設計ができるかは別の問題です。福祉工学の道に進むなら、病気や障害、人間の身体の仕組みなど、福祉の領域でも求められる知識が必要です。

福祉工学が社会から求められる理由

福祉サービスの需要が増えるから

内閣府が公表しているデータによると、日本における高齢者の割合は今後も数十年にわたり増加し続けるとされています。2060年には、なんと4人に1人が75歳以上の高齢者になってしまうというデータもあるほどです。

年齢を重ねるとどうしても体の自由は効かなくなっていきます。高齢者が増えれば、必然的に介護を必要とする人の数も増えてしまうでしょう。

少子化による働き手不足が深刻だから

高齢者が増えるのも問題ですが、働き手が減少していく点も大きな社会課題です。従来通りの働き方を続けていては、いつか耐えきれないタイミングがやってくるでしょう。

この問題を解決するには生産性を向上させるしかありません。具体的には介護ロボットやパワーアシストスーツの導入が考えられます。要介護者にもできるだけ自分でできることは自分でやってもらう体制を整えるなど、今からでも少しずつ働き方を変えていかなければ福祉サービスがパンクしてしまいます。

福祉工学の実用例

自動運転車いす

従来の車いすでは、介助者に車いすを押してもらうか自分の力で車輪を回すしかありませんでした。これでは、どちらにせよ不便であることに変わりはありません。特に高齢の方が自分の腕力で車いすを操るのは体力的に難しいはずです。

しかし、電動化した車いすであれば介助者や体力について考える必要がなく、自由に好きな場所へ行けます。さらに自動運転なら、目的地さえ分かれば道に迷う心配もありません。

久留米工業大学では、すでに公道で自動運転車いすの実証実験を行っています。この実証実験はテレビや新聞などを通じ、全国的に注目されました。

※「自動運転 車いす」について詳しくはこちらをご覧ください

パワーアシストスーツ

パワーアシストスーツは電気の力で身体の動きをサポートする機械です。

主に下半身に装着する歩行支援型のパワーアシストスーツを使えば、要介護者のリハビリに役立つでしょう。重いものを持ち上げられるようになる作業支援型のパワーアシストスーツなら、介護士の負担を減らすこともできます。

人手不足が深刻化する介護の現場においては、要介護者だけでなく介護者の負担を減らすことも重要です。

VR機器

VRというと、ゲームやエンターテイメント産業に活用されるイメージがあるかもしれません。しかし、VRは福祉の現場での活躍も期待されているのです。

高齢者の中には、旅行に行くなどの目標を掲げてリハビリを続けている方が多くいますが、なかなか成果が出ないことにモチベーションを維持できない方もいます。こうした方がVRで旅行のイメージを高められれば、リハビリのモチベーションを高めると同時に、日々の暮らしを活気づけることができるでしょう。また、VRでいつもと違う景色を見ること自体が認知症のリハビリになるとも考えられています。

今はそれほど注目されていませんが、今後は福祉の現場におけるVR機器活用にも注目が集まるかもしれません。

日本の命運は福祉工学が握っている

少子高齢化はすでに現実のものとなっています。そのうえ、これからさらに深刻になることもすでに避けられない状況です。今のままでは日本の福祉サービスが崩壊してしまいかねません。

そこで求められるのが福祉工学による技術革新です。福祉工学を学ぶ学生には、日本の命運が託されているといっても過言ではないといえるでしょう。

「工学で学んだ技術を福祉分野で発揮して社会貢献する」という大きな志を持った学生には、ぜひこの分野にチャレンジしていただきたいと思います。

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