宇宙・ロケット分野はビジネスになる?いま注目されている「宇宙・ロケット」分野のビジネスと市場規模

未来の乗り物・ロケット

「宇宙」や「ロケット」と「ビジネス」って関係あると思っていますか?

実は、宇宙分野の開発と利用は、わたしたち人類にとって、生活を豊かにし、さらに変革していく可能性のある貴重なフロンティアなのです。「第四次産業革命」とも言われるほど、宇宙とITやAIなどとがつながって新しいビジネスがわきおこり、「宇宙ビジネス」のパラダイムシフトがはじまっているのです。

宇宙・ロケットビジネスとは

日本の宇宙・ロケットビジネス

日本では、ロケットや宇宙関係の事業は、ほぼ国の事業としてJAXA(宇宙航空研究開発機構)が担当してきました。そう、あの「探査衛星はやぶさ」や「気象衛星ひまわり」などの設計や打ち上げなどです。ところが、欧米ではそういった国家戦略としての宇宙事業から、民間企業主導の宇宙事業へと急激に変貌してきているのです。

衛星の小型化、さらには小型衛星コンステレーション(多数の衛星で世界全体を覆う通信衛星システム)のための量産化に伴い、衛星製造にも生産革命が起きています。高価な宇宙専用の部品ではなく、汎用品も活用することで、従来の大型衛星とは桁違いに安価なコストで衛星の製造が可能になってきたのです。あの、“ホリエモンロケット”ことインターステラテクノロジズ社のロケットMOMOも、ホームセンターで売られている部品も使って作られているのです。安価な部材によるロケット開発や、ロケットそのものの小型化など、衛星の打ち上げコストにも低価格化が強まっているのです。このような宇宙利用コストの大幅な低下は、宇宙利用ビジネスにおいても、さまざまな民間事業者の参入を促すことになったのです。

宇宙ビジネスの市場規模

世界における宇宙ビジネスの市場規模は毎年拡大しています。2016年における世界の宇宙産業売上高は3,290億ドル(約35兆円)で、毎年増え続けています。ロケットや衛星を扱うピラミッド頂点の宇宙機器産業から、衛星通信・放送等の宇宙インフラを利用するサービスである宇宙利用サービス産業、カーナビや衛星携帯電話端末などの宇宙関連民生機器産業、それらを購入・利用するユーザー産業群へと裾野が広がっています。

アメリカの宇宙ロケットビジネス

宇宙ビジネスでトップを走る米国は、商業ベースでの衛星の開発利用や打上げサービスといった宇宙関連サービスを提供できるベンチャー企業を育成・強化し、国はこれらの事業者が提供するサービスを市場で調達する方式に移行しつつあります。また、民間事業者自らが資金を集め、民間需要を開拓するようなビジネスモデルも現れています。こういった民間事業者間の競争や活発な動きは、さらなるイノベーション誘発やコストの削減にもつながり、大きなダイナミズムを生み出し、スピードも増しているのです。

 

宇宙の利用は、アジア各国はもちろんのこと、新興国を中心に発展途上国にも拡大しています。ところが、自国で衛星開発や打ち上げ能力を保有していない国も多く、これらの国々に対する市場獲得競争が激しくなっています。打上げを含むフルセットの宇宙産業基盤を国内に持つのは日本や欧米等9か国・地域にとどまっています。日本の宇宙産業が規模を拡大していくためには、内需だけでは限界があり、拡大していく海外市場の成長を取り込んでいくことが不可欠なのです。内閣府が2017年に策定した「宇宙産業ビジョン2030」では、宇宙利用産業も含めた宇宙産業全体の市場規模(1.2兆円)を2030年代に倍増させることを目指すと記されています。

これからの宇宙・ロケットビジネス分野

衛星データを活用したソリューションビジネスに加え、小型衛星コンステレーションによる高頻度観測サービス、軌道上サービス、宇宙資源開発など、いわゆる「ニュースペース」と呼ばれるベンチャー企業を中心とした新たなビジネスプレイヤーやビジネスモデルが急速に成長しつつあります。宇宙の開発利用への関心は異業種でも高まっており、異業種と宇宙産業との連携や、宇宙産業への技術、人材、資金等の流入も起こりつつあります。

ロケット開発

特にロケット開発分野では、多額の資金調達が開発段階で必要とされる中、SpaceXは創業者イーロン・マスク氏の多大な財産を背景としつつも、政府の支援制度を活用しながら、今や基幹ロケットとしての位置づけを担うまでに成長し、Blue Origin(Amazon.com設立者ジェフ・ベゾスが設立した航空宇宙企業)のように既存の大手プレイヤーと連携するケースも見られます。これまで各国で打ち上げられてきた衛星の多くが数トン程度搭載可能な大型クラスに集中している一方、数百機規模の小型衛星コンステレーション計画が数多く立ち上げられているため、これら事業者の低価格打上ニーズに合わせ、打上能力100kg程度の小型ロケット開発が急がれています。それらの多くは従前の大型ロケット開発・製造を担ってきたプレイヤーではなく、NASA出身者らによって設立されたベンチャーを始めとするロケット開発を専業とするベンチャー企業によって担われています。

日本のベンチャー企業

日本でも、ユニークな技術やアイデアを有するベンチャー企業が存在します。技術やファイナンスの面で従来の大手企業との連携を進めるなど、いかに早く技術を開発・実証し、ビジネス化できるかが重要となっています。小型ロケットビジネスについては、海外ではRocket Lab社やVirgin Galactic社が新たに小型ロケット打ち上げサービスに参入するなど、その動きが活性化していますが、国内でも、2003年に設立されたホリエモン(堀江貴文氏)が設立者であるインターステラテクノロジ社などが開発実験を継続しています。

宇宙系ベンチャーの特徴は、参入する領域があらゆる分野に分散していることです。特に、これまで政府主導の領域とみられてきた宇宙空間・天体の領域を、ビジネスの対象とするベンチャーが複数生まれ、投資を受けて成長を続けていることは、革新的な出来事なのです。

近年は、JAXAとの契約など、事業の具体化に向けた動きも活発に見られます。アストロスケールはスペースデブリ(宇宙ゴミ)除去サービスの開発に取り組んでおり、2017年にNASAのアジア代表がCOOに就任するとともに、JAXAとスペースデブリ除去技術に関する共同研究を進めています。アクセルスペースは低コストでの超小型衛星製造に強みを有し、2013年に世界で初めて民間用商業衛星を製造し、2016年にはJAXAから小型実証衛星の設計、製造、運用を一括して受託しました。同社は衛星製造だけでなく、2022年までに50機の超小型衛星で地球観測網「Axel Globe」を完成させる計画を発表しています。「Axel Globe」は、毎日、全地球の観測画像を取得することを可能にし、その分析を通じて、ユーザーにサービス提供を行う予定です。日本のベンチャー企業は、近年海外からのエンジニアスタッフも増加し、経験豊富な海外人材の力を得ながら事業化を進めています。

日本の主要ベンチャー企業

企業名事業内容創業年
<宇宙到達系>
QPS研究所小型衛星(レーダー)製造2005
PDエアロスペース宇宙船製造2007
スペースシフト小型衛星製造・利活用推進2009
インターステラテクノロジズ小型ロケット製造・打ち上げ2013
<宇宙到達・インフラ系(双方)>
アクセルスペース小型衛星(光学センター)・衛星データ分析・ソリューション提供2008
ispace月面資源探査2010
ALE衛星からの人工流れ星サービス2011
アストロスケールスペースデブリ除去衛星製造・運用2013
<宇宙インフラ系>
インフォステラ地上アンテナシェアリング2016
ウミトロン衛星データを活用した養殖2016

宇宙・ロケットビジネスの注目企業や起業家

ここで、宇宙・ロケットビジネスの国内外のプレイヤーをいくつかを紹介しましょう。

三菱重工業㈱

三菱重工は、2007年のH-IIAロケット13号機より「打上げ輸送サービス」を開始し、民間事業者や海外顧客からの衛星打上げの受注実績(既契約数5件)も残してきています。2017年6月現在、H-IIAロケットの打上げ成功回数はH-IIAとH-IIBを合わせて34回連続の成功となり、打ち上げ成功率はH-IIAロケットで97.1%、H-IIBロケットで100%を誇っています。さらなる国際競争力を強化するために後継機となるH3ロケットを開発中です。H3ロケットは、柔軟性、高信頼性、低価格の3つの要素を実現することを目指し、2020年度に試験機の打ち上げを予定している日本の新しい基幹ロケットです。

IHIエアロスペース

IHIのグループ会社として、H-ⅡAを始めとする各種ロケットの開発から打ち上げまで、設計・解析・生産技術・品質保証・品質管理・実験・射場整備といった分野に事業展開しています。IHIエアロスペースが機体システムの開発・製造を担当したイプシロンロケット3号機が2018年1月18日に打ち上げられ、高性能小型レーダ衛星(ASNARO-2)を正常に分離しました。2号機に続く成功となり、エアロスペースが取り組んできたロケットシステム関連の技術開発の成果が確実なものとなり、今後の打ち上げ需要に十分対応できることを実証しました。

ロケットシステム・宇宙利用としては、主にイプシロンロケットとH3ロケットの開発を推進しています。特に2020年の初号機打ち上げが予定されているH3ロケットでは、ターボポンプや固体ロケットモーターなどの能力向上・低コスト技術の開発を担当しています。さらに、衛星情報から得られたデータを活用し、ソリューションとして提供する宇宙利用事業にも取り組み、新分野での事業拡大を目指しています。

Space X

2002年にイーロン・マスク氏(テスラモーターズCEO、PayPal創業者)によって設立され、急速に成長。同氏は打上げコストを従来の1/100にすることを目指しています。低価格化に向けた再利用型ロケットを開発中。2015年12月に一段目ロケットの地上への再着陸、2016年4月に海上船への再着陸を成功させています。

同社は、ファルコン9等のロケット開発で知られていますが、元々は火星移住構想を有するマスク氏が最初に企画した火星への植物栽培構想が発端にあり、その栽培キットを火星まで運ぶロケットを既存のもので代用すると莫大な費用がかかることから、それらを自ら低価格で開発・製造することを目的にロケット開発を始めることになりました。

2010年6月の初号機打ち上げに成功以降、機体改良を加えながら2017年1月末までの間に計30機打ち上げ、打ち上げ失敗は2回にとどまっており、高い成功率・信頼性を誇る主力ロケットとして、自社用の貨物のみならず、通信企業からの発注を受けた通信衛星や他国観測衛星の打ち上げも行っています。宇宙機器製造の大手企業で開発に携わってきた人材を多数引き入れることで、それまで既存プレイヤーの技術・ノウハウを獲得するとともに、ベンチャーゆえのスピード感や技術・製品コンセプトの変革をマスク氏自らリードすることで、優秀な宇宙産業人材の能力を引き出しながら開発をすすめています。

Blue Origin Corporation

世界最大手Eコマース企業Amazon創業者であるジェフ・ベゾス氏によって2000年に設立。有人宇宙輸送機の開発を目的に設立されました。現在は引き続き有人宇宙輸送機の開発を行うとともに、無人宇宙輸送機の開発も手がけています。ベゾス氏の私財を投じながら開発が行われており、宇宙旅行を主目的とする有人宇宙輸送機「ニューシェパード」の開発や、大型ロケット「ニューグレン」の開発がすすめられています。

同氏は「数百万人という人が宇宙で暮らし、働けるようにしたい。宇宙までも見据えた文明(spacefaring civilization)にしたい。」と語っています。Blue Originのビジョンに関して、ベゾス氏は「Amazon創業当時、既に郵送サービスやネットアクセスを可能にする電話回線、クレジット決済などのインフラがあったが、宇宙に関してはそういったピースがない。重要なのは現状よりずっと低コストで宇宙へ行けるようになることだ」と語っています。宇宙アクセス革命こそがベゾス氏が目指すイノベーションなのです。

宇宙・ロケットビジネスのこれから

宇宙・ロケットビジネスの熱い吐息が伝わったでしょうか。前述のように、宇宙ビジネスは裾野が広いものになっています。ロケットや衛星などをつくる企業だけでなく、ものづくりに関係する企業であれば、今後なんらかの関係が出てくるのではないでしょうか。

JAXA宇宙オープンラボの取り組み

ここで、「JAXA宇宙オープンラボ」の取り組みからちょっと紹介します。この宇宙オープンラボは、優れた民生技術やユニークなビジネス・アイディアを持つ企業の方と、技術的知見を有するJAXAの連携により、地上の技術を宇宙航空分野に応用したり、新しい宇宙ビジネスの創出を目指したりする企業等を支援するプログラムです。

例えば、平成17年度に採択されたものに、「宇宙での長期滞在型居住空間における快適「睡眠環境」の創造」(西川リビング㈱)があります。西川リビング㈱は江戸時代から続く寝具メーカーであり、宇宙開発とは無縁でした。これまで米国とロシアが宇宙で使っている寝具には快適性の点で改良の余地があり、今後民間人が宇宙に行く時代には快適な眠りが必要との指摘は、JAXAにはない発想でした。

西川リビングは意欲的に自社のリソースを投入し、従来にない機能(快適性、ほこりが出ない、抗菌防臭など)の宇宙用寝具にチャレンジし、宇宙飛行士が心から寛げるプライベート空間であり快適な睡眠環境である「SPACE FUTON(宇宙ふとん)」を提案しました。この共同研究の成果は、実際に「宇宙の過酷な環境の中で任務を行なう宇宙飛行士のために開発された、温度調整機能を持つPCMシート」として商品化されています。

また、同じ平成17年度に採択された「宇宙船内用照明装置の開発」(松下電工㈱)は、地上用として性能向上が著しい発光ダイオード(LED)を用いて、照明器具としての性能はもちろん、安全性、サイズ、コストなどの点で従来品よりも優れた宇宙用照明装置を研究開発しました。宇宙船内で使うために満たさねばならない要求仕様は多く、NASAの安全性基準もクリアしなければなりませんが、JAXAの経験と松下電工の技術により目標を達成しました。宇宙オープンラボが入り口となって、地上の優れた民生技術を宇宙に適用する、新しい形での官民協力ができた例と言えます。

宇宙・ロケット分野に興味を持っている高校生へ

ちょうど2018年4月15日の日経新聞に、ソニーが宇宙ビジネスに参入するということが報道されました。それによると、「家庭用のCDプレーヤーなどで培った光ディスク技術を応用し光通信機器を開発する。数百ナノメートル単位の溝から情報を読み込む光ディスクの技術を使い、1千キロメートル以上離れた宇宙空間からでも地上と高精度に通信する。2018年度中に国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」と地上との通信実験を実施し、2年以内に基礎技術を固め早期に世界初となる量産を目指す。」とあります。

宇宙・ロケット分野は、今後、人類のものづくりフロンティアとして伸びていく分野になります。もうすぐ、スペースコロニーやモビルスーツといったガンダムの時代がそこまで来ているかもしれません。若くてエネルギッシュな宇宙業界を目指してみませんか。

宇宙開発や宇宙ビジネスについては、以下の記事でも詳しくまとめています

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