ロケット開発の仕事がしたい!ロケット開発の基礎知識から仕事内容、就職までの情報を解説

未来の乗り物・ロケット

科学技術の著しい発達により、人類にとって宇宙は身近な存在となりつつあります。様々な衛星の打ち上げや、宇宙ステーション関係のニュースを見かける人も多いでしょう。「人の役に立つ大きな仕事がしたい」「宇宙という未知の領域に興味がある」という人にとって、ロケット開発は魅力的な仕事です。本稿ではそんなロケット開発について網羅的に解説します。

ロケット開発とは宇宙ビジネスの一つ

現在、宇宙ビジネスの内容は多岐に及び、ロケット開発はその一部として考えられています。

2019年時点の宇宙ビジネスにおけるロケット開発市場は約5000億円、全体の約1.25%程度で規模は大きくありません。

しかし宇宙ビジネス市場は年々市場規模を拡大しており、2017年には約38兆円、2019年には約40兆円の国際市場を形成しています。市場の拡大は今後も続き、2040年には全体で約100兆円以上になると予想されています。

ロケット開発以外での宇宙ビジネスの分野は、主に以下のようなものが挙げられます。

輸送人や物資を宇宙まで運ぶための事業で、ロケット開発や衛星を打ち上げるための設備建造など
衛星インフラの構築・運用観測・通信・測位など衛星からの情報を宇宙空間から地上へ伝えるための情報網を整備する事業
宇宙データの技術活用主に画像や位置情報のデータを地上でのビジネスに活用する取り組み
軌道上サービススペースデブリと呼ばれる宇宙ゴミから衛星や国際宇宙ステーションの活動を守るための事業
宇宙旅行宇宙空間への滞在や移住を視野に入れた事業
宇宙探査・資源開発特に地球から距離の近い月や火星での基地建造や探査活動など

宇宙開発や宇宙ビジネスについては、以下の記事で詳しくまとめています。

ロケット開発では具体的にどんな仕事をするの?

ロケット開発に特化した業務といえば以下が代表的です。

  • ロケット本体の部品の設計・開発
  • ロケットに搭載する装置の設計・開発
  • ロケットを作るための設計図の作成
  • ロケット打ち上げ用のシステム開発

宇宙空間への輸送には安全性と確実性が求められます。そのため開発現場では、ロケット開発・打ち上げ設備建造・打ち上げ作業という流れを1つのものとして考える事が重要です。

ロケット開発においては、単に設計開発を担当するだけではなく、各方面からのフィードバックや要望を汲み取って、高品質な「ロケットを打ち上げるためのシステム」を構築する役割も兼ねています。

ロケット開発の基礎知識

ロケット開発の仕事を目指す前に、いくつか知っておくべきことがあります。ここではまずロケット開発についての基礎知識を見ていきましょう。

日本におけるロケット開発の歴史

国産ロケット開発は1955年にスタートしました。東京大学教授である糸川英夫氏を中心としたチームが、東京・国分寺にて「ペンシルロケットの水平発射実験」を行ったのが始まりとされています。

当時のペンシルロケットは全長約23cmと小型なものでした。その後も千葉・荻窪・道川とペンシルロケットの発射実験は規模を拡大し続け、「ヘビーロケット」「K(カッパ)シリーズ」「L(ラムダシリーズ)」の開発へと繋がっていきます。

そして、1970年に全長16.5mの大型ロケット「L-45」が、日本初の人工衛星である「おおすみ」の打ち上げに成功します。このとき日本は世界で4番目の衛星打ち上げ国となったのです。

日本の新しい大型ロケットH3とは

国産の新型ロケット「H3」は2012年に計画構想が立ち上がり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と民間企業の三菱重工が共同で開発を行いました。

2021年の打ち上げから20年先を見据えたプロジェクトとなっており、総開発費は約1900億円です。各セクションの耐久性や性能にこだわり、約100万点の部品はそれぞれの分野に適した国内企業から調達されています。H3ロケットの大きな特徴は以下の3点です。

  • 高信頼性:前身プロジェクトであるH-IIAロケットでの実績やデータを有し、打ち上げ成功率に高い信頼性
  • 低価格:高品質な他産業の製品を活用して開発費を抑えると共に、固定ロケットを省いた構成で約50億円というリーズナブルな打ち上げ費用を実現
  • 柔軟性:機体のバリエーションを増やして多用途に対応するほか、射場整備期間を従来の半分に短縮しロケット打ち上げの柔軟性を向上

主要各国のロケット開発の現状

宇宙ビジネスは世界規模で注目を集めている分野であり、ものづくり大国である日本以外の国々も積極的に参入しています。ロケット開発主要国の動向は以下の通りです。

アメリカ

世界全体の宇宙ビジネス市場で約45%ものシェアを誇るアメリカは、大企業に限らず有力な新興企業も次々と台頭しています。

ロケット開発の老舗ULAはコスト削減に注力した「Vulcan」を開発し、新興勢として注目を集めているSpaceXは、火星有人探査も視野に入れた大型ロケットの「Starship」の開発を進めています。両者共に2022年の打ち上げを目指しています。

ヨーロッパ

ヨーロッパでは、各国がESA(欧州宇宙機関)に加盟して連携する形でロケット開発が進められていますが、宇宙ビジネスにおいてはドイツが頭1つ抜き出ています。

ドイツはESAのロケット開発でも中心的な役割を担っており、2021年1月には開発中の新型ロケット「アリアン6」の第2段試験モデルを公開しました。2022年の打ち上げを予定しているアリアン6は、打ち上げ能力の向上とコスト削減の両立を目標としています。

アジア

アジアでは、経済成長の著しい中国やインドがロケット開発に注力していますが、韓国の宇宙ビジネス参入が話題を呼んでいます。

韓国では自国技術で製作した国産ロケット「ヌリ」を、2021年に打ち上げ予定です。ロケット本体のみならず、発射台の建造も含めて国産であるという点で高い注目を集めています。

ロシア

宇宙開発でアメリカとしのぎを削るロシアは、2020年12月に重量級ロケットである「アンガラA5」の打ち上げに成功しました。

アンガラは長年主力ロケットだった「プロトンシリーズ」の後継機として開発が進められており、機体にバリエーションを持たせる事で多目的な使途が期待されているロケットです。

2020年のロケット打ち上げ回数が17回と比較的少なかっただけに、今後の動向が注視されています。

将来的にロケット開発の仕事に携わるには

ここからは、ロケット開発に関係する仕事に就くにはどのようにアプローチするのが有効かを見ていきましょう。

専門知識を学べる学校へ進学する

進学先を選べる状況であれば、宇宙開発に関わる専門知識を学べる学校へ進学するというのが有効です。教育機関であれば知識が体系化されているため、効率的に学習を進める事が出来ます。

進学先を選ぶためには、まず「自分が将来どの分野に携わりたいのか」を明確にしておくようにしましょう。ロケット開発・衛星インフラ・軌道サービスなど、それぞれの分野で必要な知識やスキルは異なります。

自分の将来像と進学先のカリキュラムが食い違わないように、自分の希望を踏まえた上で大学・短大・専門学校など必要となる進学先を選んでみてください。

ロケット開発に携わるために必要な勉強を知っておく

ロケット開発では、宇宙工学・機械工学・航空工学といった分野の知識が必要になってきます。

宇宙工学は天体や衛星の軌道を計算する「軌道力学」や、ロケットや衛星のコントロールに必要な「制御力学」などが主な学習内容です。機械工学では数学・物理の基礎的な知識を身に付けた上で、情報処理分野の内容を学んで電子回路の理解を深めていきます。

航空工学は物体が浮遊するための空気の働きを学ぶ「空気力学」、飛行物体の安定とコントロールを可能にする「飛行力学」などが学習の柱です。

これらの学問は専門性が高いため、大学院へ進んで知識を突き詰めていく学生も少なくありません。

宇宙開発技術者として民間企業に就職する

宇宙開発分野では、大学をはじめとする教育機関や専門の研究機関などの他にも多くの民間企業が参入しています。各民間企業の宇宙開発への関わり方も様々であり、部品提供だけの場合もあれば企画から打ち上げまで行う場合もあるのです。

例えば前述した国産のH3ロケットでも、機体を構成する100万点以上の部品の多くは民間企業から調達されています。また、開発素材や製造工程を工夫する事で民間企業がロケットを打ち上げるためのコストは大きく抑えられているため、ノウハウを蓄えた民間ベンチャーが宇宙開発の分野で急成長を遂げているケースも多いです。

学校卒業後にこうした宇宙開発に熱心な民間企業に就職する事で、すぐにロケット開発に携わる事も可能と言えます。一般的な就活同様、気になる企業の特徴は在学中に調査してしっかり分析しておくようにしましょう。

宇宙開発技術者として研究施設で働く

民間企業で開発者としてロケット開発に携わる以外では、JAXA(ジャクサ)をはじめとする宇宙開発研究機関で研究員になるというアプローチもあります。

JAXAは内閣府・総務省・文部科学省・経済産業省の4つが共同で所管している2003年10月に発足した国立研究開発法人です。独自の研究・開発のみならず、大学などとの共同研究で国内の宇宙開発における技術力向上にも努めています。

JAXAへの就職に際して必要となる特定の資格はありません。基本的には一般企業と同じように、エントリーフォームからの応募・説明会への参加・テスト・面接といった具合に採用フローが進んでいきます。事前の情報収集・研究・対策をしっかり行っておけば、採用の可能性は十分にあるでしょう。

ロケット開発を行っている会社・組織

ここでは、日本でロケット開発を行なう主な会社や組織・業務内容を紹介します。気になる企業が見つかった場合はぜひアプローチしてみましょう。

三菱重工業ロケットエンジンや衛星機器など宇宙開発関連製品の製造・裾付・卸売など
IHIエアロスペース人工衛星打ち上げ用ロケット「イプシロン」、国際宇宙ステーション補給機「こうのとり」の開発・設計など
IHIエアロスペース・エンジニアリングロケットや国際宇宙ステーションの部品・試験設備の設計・製造、開発実験関連業務、ロケット部品の卸売りなど
宇宙技術開発ロケット開発支援、人工衛星のシステム開発・構築、宇宙飛行士の訓練など
旭金属工業ロケット開発における重要部品の企画・加工・表面処理・塗装・組立てなど
インターステラテクノロジズ既存技術によるリーズナブルなロケット開発、超小型衛星の打ち上げなど
CREST ASTRA JAPAN精密板金加工の技術を活用したロケットや人工衛星の設計・製造など
インターステラテクノロジズ民間人向けの低価格で小型なロケットの設計・製造・打ち上げなど
スペースワン新世代小型ロケットの開発・製造・販売、ロケット射場の開発、人工衛星の打ち上げ、民間企業ロケット打ち上げ射場の整備など
新菱設計ロケットの設計・製図、ロケット部品の卸売り、試作品製造など

ロケット開発産業の将来性

多様な分野を含む宇宙開発事業の中で、ロケット開発や打ち上げに関わる産業は2021年時点で1%強に過ぎません。これだけ見ると将来性に不安を感じてしまう人も多いでしょう。

しかし、宇宙ビジネスはまだまだ発展途上の分野であり、ロケット開発の需要も未知数です。宇宙ビジネスに関わる画期的なサービスやシステムが開発されたとしても、それを打ち上げるためのロケットがなければ実現出来ません。

世間の予想通り2040年に宇宙ビジネスの市場規模が100兆円に達した時、その中でロケット開発が占める割合は大きくなっていると言えるでしょう。

次の記事では宇宙・ロケット開発の市場や将来性にも触れています。

ロケット開発は大きなやりがいと成長が期待できる分野

ロケット開発は数ある宇宙ビジネスの中の1つに過ぎませんが、宇宙開発の機運が高まる現代社会においてはこれから需要が右肩上がりになる事が予想されます。人類の宇宙進出という大きなやりがいを感じつつ、将来性も期待出来る魅力的な仕事であると言って良いでしょう。

必要となる知識を身に付けるために然るべき進学先を選び、着実なプロセスで夢を叶えてください。

 

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