「建築士」と呼ばれる国家資格は、全部で3種類あります。建築を学ぶ皆さんは、ご存知のことでしょう。
木造建築の新築や、歴史的建造物の改修などの木造建築のスペシャリストである「木造建築士」。小規模な建築物であれば、構造に関係なく関わることができる「2級建築士」。建築物の規模に制限がなく、建築業界のトップ資格と言える「1級建築士」。
今回は、この3つの資格の中でも、2級建築士の仕事内容について、具体的な内容と、活躍できる職場についてお伝えします。将来、建築士の資格取得を目指す人はぜひ確認してください。
目次
2級建築士を取得すれば木造以外も建築可能
木造建築士・2級建築士・1級建築士は、それぞれ取り扱うことができる建築物の構造や規模が異なり、具体的には次のように定められています。
木造建築士が取り扱うことができる建築物
- 木造の建築物で、延べ面積が300㎡以下 かつ2階以下
2級建築士が取り扱うことができる建築物
- 木造建築士が取り扱うことができる建築物
- 木造の建築物の場合、1000㎡以下・軒高9m以下・高さ13m以下
- 木造以外の建築物の場合、延べ面積が300㎡以下・軒高9m以下・高さ13m以下
1級建築士は、取り扱うことができる建築物に制限はありません。
また、試験の合格率は次のようになっています。
- 木造建築士約33%
- 2級建築士約19%
- 1級建築士約7%
建築物は本来、人の命を守るものですが、時に人の命を奪う危険なものにもなります。
建築物を設計する際には、正しい知識と責任を持って業務に携わることが必要なため、合格基準が厳しく定められていることがわかりますね。
2級建築士の主な仕事内容は4つ
2級建築士が行う仕事は、建築士法によって定められています。実際に、建築会社や設計事務所に勤めた場合には、建築士法に定められた内容を軸として日々業務を行うことになるでしょう。
具体的に、4つの仕事内容について確認しましょう。
重要事項説明
重要事項説明とは、設計・工事監理契約の前に建築士が建築主に対して行う重要事項の説明のことです。平成20年11月の建築士法改正によって義務付けられました。
重要事項説明の際には、建築士は建築主に対して建築士免許を提示し、説明を行い、書面を交付します。
重要事項説明の内容は次の項目について行うことが義務付けられています。
- 建築士事務所の名称、所在地、建築士事務所の区分、事務所開設者
- 担当建築士の氏名、登録番号
- 建築物の概要
- 作成する設計図書の種類
- 工事監理の方法と報告方法
- 報酬の支払い時期について
- 契約の解除について
この内容について説明し、説明した建築士と説明を受けた建築主は双方に書面に署名押印を行います。
重要事項説明は、プロジェクトが本格的に始動することを互いに確認する大切な過程となります。
設計
2級建築士が行う設計の仕事とは、次のような手順で行われます。
- 建築主から要望を聞く
- 建築を行う土地を調査する
- 建築基準法と照合しながら要望に合った建築物を考える
- 設計図にまとめる
設計図だけではなく、模型や、3Dの完成イメージ、VR、スケッチなどの方法を使うこともあります。
注文建築の場合には、建築主のイメージをより実現させるために、何度も打ち合わせを行い、戸建て住宅規模の建築物でも100枚以上の図面を作成することもあります。建築士と言えば、この設計の仕事が思い浮かぶ人も多いでしょう。
工事監理
設計の仕事が終わると、工事契約が結ばれ、建築現場は施工会社(工事を行う担当者)に引き継がれますが、建築士の仕事はここで終わりません。工事監理者(設計監理者)という立場で、工事中も建築物に携わることになります。
工事監理とは、設計図通りに工事が行われているかを確認することです。各検査時や、構造材の搬入、コンクリートの打ち込みなど、要所ごとに工事現場に足を運び、設計図と現場を照合し、必要に応じて工事責任者への指導や建築主への報告を行います。
手続き業務
建築物を新築する場合や、大規模な改修工事を行う場合などには、建築主は役所などの公的機関に対して手続きや届出をしなければなりません。
建築の知識を持たない建築主にとって、この手続きのための書面の作成や、設計図の作成、届出作業は困難なため、建築の知識を持った建築士が行うことが一般的です。
建築士は建築主と設計契約を行った後、建築主からの委任を受けて、手続きのための書面作成と、届出、修正対応などの業務を行います。
2級建築士はどんな業界で働ける?
2級建築士が就職しやすく、活躍できる業界や企業について具体的に確認しましょう。
建築会社
ゼネコン、ハウスメーカー、工務店などの建築物の設計・施工を手がける企業のことで、企業によって取り扱う建築物の規模や構造は異なりますが、2級建築士は木造以外の建築物も取り扱うことができるため、施主と打ち合わせや設計など、表舞台の仕事を任されることもあります。
設計事務所
建築物のプロデュースや設計、建物の鑑定業務などを行う企業のことです。
建築士の資格を持っていることで、重要事項説明を行うことができるため、少人数の事務所で特に重宝されるでしょう。取り扱うことができる規模に応じて、ひとりで物件を任されることもあります。
不動産業界
不動産業界は、建築物や土地などの販売や開発、仲介がメインになります。
設計や工事監理の仕事とは離れますが、建築士の持つ建築の知識は不動産業界に慢性的に不足しているので、開発を行う不動産デベロッパー、不動産仲介業、不動産鑑定などに役立つことは間違いありません。
建築士の資格と併せて宅建や不動産鑑定士などの不動産関係の資格が取得できれば、独立も夢ではありません。
建材メーカー
建築物に使われる材料や、設備機器などのメーカーは建築士の資格がなくても行える仕事ではありますが、建築士の資格があることで、より的確なアドバイスや営業などを行うことができるようになり、顧客からの信頼を得ることができます。
建材メーカーは大手企業であることが多いため、建物の設計には携われませんが、安定した収入や福利厚生に期待することができるでしょう。
2級建築士の仕事範囲は広く建築士として地位も高まる
2級建築士の仕事の内容は、建築士法で定められた設計・工事監理・重要事項説明・手続き業務を軸に行われます。
建築のスペシャリストとして業界からの需要は高く、建築業界での転職や、就職活動には間違いなく有利なものになるでしょう。
資格があることで、顧客や周囲からの信頼も厚くなり、任される仕事の内容も、とてもやりがいのあるものになることは間違いありません。
建築を学び、建築業界を目指す皆さんは、安定した将来のためにも早い段階で2級建築士の取得を検討してみてください。
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