建築士になるには?知っておきたい建築士資格の種類と大学で学ぶ内容

建築士になるためには建築士資格が必要です。建築士資格は国家資格のため、相応の学歴要件や実務経験が求められます。今回は、建築士になるために必要な資格の特徴、大学で学ぶ建築学科の授業内容を紹介します。

建築士資格の種類と受験資格

建築士資格には3つの種類があります。1つは一級建築士です。2つめが二級建築士。3つめが木造建築士です。それぞれ資格毎に特徴や受験資格が異なります。

一級建築士

一級建築士は3つの資格の中で最も難易度が高く、資格を取得すれば設計できる建築物の種類が多いことが特徴です。住宅からオリンピックのスタジアムまで幅広い設計可能。そのため受験資格の制限が厳しく、四年制大学卒業後(指定科目の取得が必要)、2年の実務経験が必要です。建築系の短期大学を卒業した場合、実務経験が3~4年必要となります。また、二級建築士を取得した方は、二級建築士として実務経験が4年必要です。

二級建築士

二級建築士は、概ね住宅規模の建築物が設計可能となる資格です。住宅メインで設計を行う方は、二級建築士のみ取得することも。受験資格は、一級建築士に比べると緩く設定してあります。四年制大卒(指定科目の取得が必要)なら実務経験なしに受験が可能。そのため、四年制大学を卒業した大学院生でも受験ができます。建築の指定科目が学修できる高校を卒業した場合、実務経験が3年必要です。また建築に関する学歴がなくても7年以上の実務経験を積めば受験可能です。

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木造建築士

木造建築士は、木造住宅程度の建築物が設計可能となる資格です。二級建築士よりも設計できる範囲が狭まり、木造建築のみとなります。受験資格は二級建築士で求められる要件と同じ。四年制大卒なら実務経験なしに受験が可能です。建築に関する学歴がなくても、7年の実務経験を積むことで受験可能。

一級建築士になるためのステップ

一級建築士になる方法は大まかに3つあります。ご自身に最も合った卒業後のステップを確認しましょう。

高校卒業後実務を積む

一級建築士の資格は、普通高校を卒業するだけでは取得できません。まず二級建築士に合格する必要があります。普通高校卒業後、実務経験7年で二級建築士の受験資格が得られます。次に、二級建築士として4年の実務経験を経て一級建築士が受験可能。つまり、普通高校卒業後、最短で11年の実務経験が必要です。

大学で建築系の学科卒業後二級建築士になる

四年制大学の建築学科を卒業後、実務経験なしで二級建築士が受験できます。二級建築士を取得した人は、4年の実務経験があれば一級建築士の受験資格が得られます。但し、四年制大学の建築学科を卒業すれば2年の実務経験で一級建築士の受験が可能。一級建築士の受験資格のために、あえて二級建築士を取得する必要はありません。

また、建築の指定科目が取得できる工業高校を卒業した場合、二級建築士の受験資格は実務経験3年で取得可能。工業高校を卒業すれば一級建築士の受験資格まで最短7年の実務経験が必要です。

大学で建築系の学科卒業後実務を積む

四年制大学の建築学科を卒業後、2年以上の実務経験で一級建築士の受験が可能です。但し、建築士法で定められる指定科目を修めて卒業する必要があります。短期大学の建築学科を卒業した場合、3~4年の実務経験で一級建築士が受験可能。3年制短期大学と、2年制短期大学でそれぞれ実務経験の年数が変わるので注意してください。また高等専門学校は2年制短期大学と同等の扱いとして、4年の実務経験が必要です。

一級建築士への最短ルートは大学の建築系の学科を卒業すること

以上、3つの進路別で一級建築士の受験資格について説明しました。やはり、最短で一級建築士の受験資格が得られる進路は、四年制大学の建築系の学科を卒業することです。なお、四年制大学卒業後、2年の実務経験は長期的な企業へのインターンにより最大で1年短縮することが可能。実務経験僅か1年で一級建築士が受験できるので、大学でのメリットは大きいと言えます。

いずれにしても、一級建築士は難関の国家資格ですから建築の専門知識を学べる大学は有利です。さらに大学では建築だけでなく、様々な知識を吸収できますね。卒業後の選択肢を広げる意味でも大学卒業が最もおすすめな進路です。

建築系の学科で学ぶ内容

建築系の学科では建築物の安全性、美しさやデザイン、住みやすさの計画を勉強します。ここでは代表的な2科目について紹介しましょう。

建築計画

建築物は、内部で利用する人が「使いやすさ・住みやすさ」を考慮して計画することが大切です。これを建築計画といいます。建築計画の授業では、居住施設や公共施設など様々な用途の空間について、建築計画の例を勉強します。これまで建築家がどのような建築計画を行ってきたのか、例題に学ぶことは大変効果的です。実際に建築物を見学することもあります。百聞は一見にしかずと言いますが、空間を肌で感じることは最も大切なことです。また演習として自分が考える住みやすい家・使いやすい建物の図面を描きます。模型などを作ることで、部屋の配置や動線※が適切かなど学びます。

※動線・・・建築物の利用者が移動する経路のこと。

建築工学

建築物は美しさやデザインだけでなく、工学的にも理論が成り立つ必要があります。建築物の内部は人が利用します。利用者が快適に過ごせる室内環境を創るために、どういった空調機が必要かなど勉強します。近年、建築物の省エネ対策も一般的になりました。そのため、自然エネルギーの利用方法も学びます。

また、建築物は安全であることが第一です。建築物の安全性を理解するために、構造力学の勉強を行います。構造力学とは、物理学をより建築物に当てはめて考えた学問です。構造力学では、簡単な数式を使って柱や梁、壁が地震に対して耐えるかどうか計算します。さらに建築構造の種類も勉強します。アーチ構造やトラス構造など、これまで考えられた構造形式の特徴を学びます。

建築士に求められる能力

建築士にはいくつか求められる能力があります。ご自身が、下記の能力や性格にどれだけ当てはまるか考えてみましょう。

美しさやデザインに長けた感性

建築物は機能的であると同時に美しさやデザイン性が求められます。そのため建築士は、美しさやデザインに関する知識や感性が必要です。過去の建築家が設計したデザインを勉強することはもちろん、最先端のデザインまで幅広い知識が求められます。

空間をイメージできる能力

建築物は、内部で利用する人が住みやすいよう設計します。そのためには、空間をイメージできる能力が必要です。例えば、心地よい部屋の大きさは何mなのか。壁や天井の色はどうするか、など。思い通りの空間を、頭の中でイメージし、それを形にできる能力が求められます。

創造性があり、建築が好きな性格の方はおすすめ

建築士の仕事は、何もない白紙の図面に線を引き、建築物を創造することです。よって、上記に説明した能力は一言で創造性と言えます。つまり、0から創造して物をつくりたい人が建築士に向いています。

また建築士の多くが「建築」のことが好きです。学生の頃から建築巡りが好きで、建築の写真を撮って研究することや、建築雑誌を読んでいる人が多い。建築士に向いている人は、建築のことが好きな凝り性な人かもしれません。

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建築学部・学科のある大学(学校)の選び方

実は、大学ごとに建築系学科にも特色があることをご存知でしょうか。それは一言で「建築」といっても、意匠、構造、設備、施工など様々な分野があるからです。

例えば、設備に特化した建築学科を持つ大学があります。設備の分野では、人が快適に過ごすための空調設備等について学ぶことができます。将来はその知識を活かして、建築設備設計者として活躍することを目指しています。

つまり大学の建築系学科の入学選びは、学科の特色をよく理解する必要があるのです。

各大学は建築系学科の特色をHPやオープンキャンパスなどで紹介しています。進路選びのポイントは、そこに「勉強したい科目、研究分野があるか」ということ。建築設備の勉強がしたいのに、建築構造や施工の得意な先生がいる大学へ行っても、自身の進路と違いますよね?まずは「建築系学科で勉強したいこと」を整理して、そこに強みを持つ大学を選びましょう。

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建築・設備工学科