現在、あらゆる業界・職種でIT技術の導入が進み、情報技術は社会人にとって必須です。
ITスキルの学習に興味や関心を持っている人も多いでしょう。
今回は、情報通信の基礎から学べる情報検定(J検)の内容や勉強法、難易度や試験概要をご説明します。
また、J検は「情報活用試験」「情報システム試験」「情報デザイン試験」の3つに分かれますが、今回はその中の「情報活用試験」について詳しくご紹介します。
未経験からITスキルを学習したい人は、ぜひチェックしてみてください。
目次
情報検定(J検)とはどんな試験?
これから情報検定(J検)の受験を検討している人は、どのような試験なのか、その概要や歴史について確認をしておきましょう。
ここでは、それぞれについて簡単に紹介していきます。
J検の概要
J検とも略されますが、正式名称は「情報検定」です。
かつての情報処理活用能力検定の後継であり、文部科学省後援の公的資格となっています。
公的資格ではあるものの、国家資格と異なり、免許や免状、登録証といった制度は設けられていないので注意が必要です。
J検は3つの分野の試験の総称であり、「情報システム試験」「情報活用試験1~3級」「情報デザイン試験 初級・上級」があります。
難易度は低いので、就職・転職で役立つとは言い難い資格ですが、IT関連の知識を基礎から身に付けることができるので、後続のステップアップに向けた第一歩的な位置づけの資格であるといえるでしょう。
J検の歴史
J検の歴史は、IT系の資格のなかでも非常に長く、昭和63年に前身にあたる情報処理活用能力検定が実施されて以来、30年以上続いている資格試験です。
これまでの受験者数は約135万人、合格者数は約60万人と多くの人が取得している実績があります。
昨今、基本情報技術者試験が台頭してきたことにより、かつて社会人向けとしていたJ検は、現在は高校生や専門学校生といった学生向けの試験となっています。
現代社会においてIT知識は社会人にとって必須スキルであるため、将来を見据えて未経験からIT知識を習得するのに向いている資格試験であるといえるでしょう。
出題に関しても、最新の情報技術の動向を予測しながら一般的とされる内容となっているので、現代の情報社会において柔軟に対応するための能力を身に付けることができます。
情報検定(J検)の3つの試験区分
先にも触れた通り、情報検定(J検)は3つの試験区分に分かれています。
ここでは、情報検定の試験区分「情報活用試験1~3級」「情報システム試験」「情報デザイン試験 初級・上級」について解説していきます。
情報活用試験
情報活用試験は、1~3級の3つがありますが、情報リテラシーや情報モラル・セキュリティ、情報社会に柔軟に対応するための知識を身に付けることができます。
社会人の受験も可能ですが、中高生や大学生といった学生が情報を「使う」能力を測るのに適している資格であるといえます。
情報活用試験に向いているのは、次のような人です。
- パソコンの操作能力を高めたい人
- 目的に合わせたパソコンの使用環境を設定できるようになりたい人
- ネットワーク環境や情報機器の設定を適切に行えるようになりたい人
情報システム試験
情報システム試験は、情報処理技術を総合的に評価する資格試験で、「基本スキル」「プログラミングスキル」「システムデザインスキル」の3つの試験科目があります。
合格する試験科目によって受けられる認定が異なり、「基本スキル+プログラミングスキル」でプログラマ認定、「基本スキル+システムデザインスキル」でシステムエンジニア認定が交付されます。
情報システム試験を受けるのに向いているのは、次のような人です。
- システムやソフトウェア開発に携わりたい人
- プログラマとして活躍したい人
情報デザイン試験
情報デザイン試験は、情報を「受け取り」「伝える」能力を評価される資格です。
あらゆる業界・職種においてIT技術が導入されている現代において、情報伝達能力は社会人にとって必須の能力とされています。
情報を伝達するには、分析力や論理力、表現力や提案力といったコミュニケーション能力が必要になるため、業界・業種問わず役立てることができます。
情報デザイン試験に向いているのは、次のような人です。
- これから社会人として働く人
- デジタル領域で自己表現や情報発信を行う人
- 顧客や消費者の情報を取り扱う人
情報活用試験とは?知っておきたい試験情報
3つの試験区分がある情報検定(J検)ですが、ここからは情報活用試験の試験情報やデータについて詳しく解説していきます。
これから受験を検討している人は、ぜひチェックしてみてください。
情報活用試験の試験内容
情報活用試験は1~3級があり、それぞれ問われる内容は異なってきます。
試験内容は次の通りです。
■3級
受験の対象
- すでに環境設定されたパソコンを利用できる人
- 自分のパソコンを使いやすいように環境設定できる人
評価する内容
- 情報化に主体的に対応するための基礎的な知識
- クライアント環境のパソコンの操作、利用と役割、機能
- 情報の利用やモラル、セキュリティなどの基礎知識
■2級
受験の対象
- どのようにしたら使いやすいパソコン環境を作ることができるのかを適切に選択できる人
- ネットワーク化された環境において、情報機器の設定や操作・活用における基本的な知識と技能を持つ人
評価する内容
- 情報社会の仕組みを理解するための基礎的知識
- クライアント環境のコンピュータと各種機器の役割と機能、環境設定の基礎知識
- ソフトウェアの種類と機能、インタ-ネットおよび情報モラルと情報セキュリティなどの基礎知識
■1級
受験の対象
- 情報の加工や活用ができ、情報化および情報社会の中に関わっていく人、関わっている人
評価する内容
- 情報化社会で生活するための実践的能力
- ネットワーク環境にあるコンピュータと各種機器の役割、情報化社会に関わる諸問題および情報セキュリティに対応できる応用知識
情報活用試験の試験要領
続いて情報活用試験の試験要領について確認していきましょう。
- 合否:合格した科目のデジタル合格証(Web認証)が交付されます。
- 合格点:3級/70点、2級/65点、1級/65点、
- 日程:通年実施(CBT方式/メンテナンス期間を除く)
- 配点:100点
- 合格率:3級/約75%、2級/約41%、1級/約44%
個人で受験する場合、テストセンターで通年実施されているので、学習が完了したタイミングで受験することが可能です。
いずれの試験も100点満点で、3級のみ70点、1~2級は65点を合格点としています。
合格率は受験者のレベルによって左右されるので、あくまで目安とするようにしましょう。
また、いずれの試験も併願受験できるので、余裕がある人はまとめて受験することも可能です。
情報活用試験の合格率と難易度
一般的に、資格試験の合格率は例年近しい割合となるものですが、情報活用試験は開催される年によって大きく変動しています。
3級の場合、直近で最も合格率が高い年では約95%という高い数値が出ていますが、一方で低い年だと約50%ということもあり、1級の合格率を下回る結果が出ていることもあります。
これは、実施される年度によって出題の難易度が変動しているわけではなく、受験者数やレベルにバラつきがあるためだと考えられます。
1~2級の合格率は40~50%ほどで安定しているので、一定の水準に達している人が受験していると読み取ることができるでしょう。
このことから、3級は未経験者向けで比較的簡単な資格試験であり、1~2級はITパスポートと同等の難易度であることが分かります。
ITパスポートと情報活用試験の違いについては後述するので、興味がある人はそちらもチェックしてください。
情報活用試験とITパスポート試験の違い
同じくIT系の入門資格として有名なのがITパスポートですが、情報活用試験とどのような違いがあるのか整理しておきましょう。
まず、情報活用試験との最大の違いとして挙げられるのは、ITパスポートが国家資格であるという点です。
情報活用試験も文部科学省後援の公的資格ではありますが、国家資格ではないので注意が必要です。
ITパスポートがIT系の入門資格として知られる理由は、ITの基礎知識を網羅的に学べる点にあります。
経営やシステム戦略などのストラテジ系、プロジェクトやサービスなどのマネジメント系、ネットワークやデータベース、ソフトウェアやシステム構成要素などのテクノロジ系と大きく3つの分野で試験が構成されているので、ITに関わる基礎知識を身に付けることができるのです。
また、IT系の登竜門的な位置づけであり、就職・転職の場でも比較的評価されやすい基本情報技術者試験と試験範囲が重複していることもあるため、ITパスポートはこちらの資格取得を目指す前段階の学習にも役立つといえるでしょう。
一方の情報活用試験は、ITパスポートよりもさらに基本的な内容となっているので、IT未経験者が学習を始めるための最初のステップといえる資格です。
いきなりITパスポートの学習を始めても問題ありませんが、IT系の勉強をしたことがない人は、IPアドレスの算出やプロトコルの仕組みなどに難しさを感じる可能性が高いです。
ITパスポートの参考書や過去問を見て「難しそう」と感じるようであれば、情報活用試験の取得から始め、ITに関する学習方法や自信をつけてステップアップしていくと良いでしょう。
情報活用試験の勉強法
これまでIT系の学習をしたことがない場合「どうやって勉強したらいいの?」と疑問に感じることもあるでしょう。
ここでは、情報活用試験の勉強法について紹介していきます。
過去問の活用
基本的に、情報活用試験の勉強法は高校や大学受験の勉強法と変わりはなく、テキストで基礎知識を身に付け、過去問で知識の定着や試験形式に慣れていくのが一般的です。
独学で学ぶ場合には、テキストの解説を見ても理解できない用語や仕組みが出てくることもありますが、Web検索で調べるほか、身近にそれら技術が使われているものもたくさんあるので、そうしたIT技術に興味関心を持ちながら取り組むと理解を深めることができます。
また、過去問に関してはWebで公開もされているので、こちらを活用するのもおすすめです。
情報工学を学べる学校に通う
独学ではなく、情報工学を学べる大学・短大などに通って勉強する方法もあります。
独学で学ぶ場合には、資格取得が目標となってしまい、学習内容に偏りが出てしまいますが、学校では情報技術について体系的に学ぶことができるので、さまざまな分野に活かすことができます。
学習を進めていくなかで、分からないところがあれば講師に直接教えてもらうことができることも大きなポイントです。
「IT関連の仕事に就く気はない」ということで、情報工学系の学校を進路の選択肢から外してしまう人もいますが、現代においてITスキルは社会人にとって必須です。
小学校教育でもプログラミング学習が始まっていることからも、いかに重要であるか分かるでしょう。
また、情報活用試験だけではなく、その他の資格取得支援も行っているので、就職活動に向けた準備もしやすいこともメリットであるといえます。
情報活用試験は役に立つ?
これから情報活用試験の受験を検討している人は、取得することによってどのようなメリットがあるのか気になることでしょう。
特に、就職を控えた学生にとって、就職活動で役立つか否かは重要なポイントです。
結論からいうと、情報活用試験は難易度がさほど高くないことから、取得自体が大きく有利に働くことはありません。
ただし、IT系の資格を在学中に取得しているということで「IT業界への熱意がある」という評価を受けることができるでしょう。
また、高等学校・専修学校のカリキュラムにも対応しているので、学校教育や大学入試を意識した学習ができることもメリットとして挙げられます。
これらのことから、これまでIT関連の学習をしたことがない人にとって、情報活用試験は後続の学習をしていくうえでの基盤作りに役立つといえるでしょう。
おわりに
かつて情報技術はIT業界に携わる人に必要と考えられてきましたが、現在はあらゆる業界・職種に導入され、基本的な知識やスキルは社会人として必須のものとなっています。
今回は、情報通信の基礎から学べる情報検定(J検)の内容や勉強法、難易度や試験概要についてご説明しました。
これからITスキルの勉強を始めようとしている人は、情報検定(J検)の受験を検討してみてはいかがでしょうか。