情報工学は、情報分野と私たちの生活を繋ぎ、より便利な世の中をつくるための学問です。
情報工学に興味があるものの、学科で具体的にどのようなことが学べるのか、どのような進路・就職先があるのかなど、詳しいことがよくわからないという人もいるでしょう。
そこで、本記事では情報工学で学べることや、よく見られる進路・就職先、情報工学の将来性などを解説します。
目次
情報工学とはどんな学問?
情報工学とは、情報分野を工業生産に応用する学問のことを言います。もっと噛み砕けば、コンピューターを暮らしの中にどのように活かせるか研究する学問です。
私たちの生活のさまざまな部分にコンピューターが使われていますが、このコンピューターと暮らしを結ぶ部分に情報工学が必要なのです。
世のIT化に伴いコンピューターはどんどん進化し、これまでは不可能だったことが可能になるなど、日々目覚ましいスピードで向上しています。
情報工学はこのような進化を支える重要な学問です。
情報工学が向いている人
情報工学は誰でも学べる分野ですが、特に適性がある人もいます。それでは、どのような人が情報工学に向いているのか見ていきましょう。
コンピューターやITに深く関わりたい人
情報工学に向いているタイプとしてまず考えられるのは、コンピューターやITが好きで深く関わりたいと思っている人です。
「好きこそものの上手なれ」ということわざがありますが、これは学問にも当てはまります。自分が好きな分野の学問であれば、自然と「もっと知りたい、詳しい知識を身に付けたい、実際にいろいろなことができるようになりたい」などと思うものです。
情報工学が扱うIT分野は、日々成長を続けている分野です。それゆえ仕事に活用する場合は、常に最新の情報をキャッチし、自分のスキルをアップデートし続けなければなりません。
簡単なことではありませんが、コンピューターやITに愛着のある人なら、常に勉強が必要なことも自身が成長するチャンスととらえ、意欲的に働いていけるでしょう。
就職に強い学問に興味がある人
就職で強いのはやはり専門性の高い学問です。専門職は特定のスキルが必要なので、誰でも就職できるというわけではありません。
専門的に学んできた人にとっては就職先の幅が広がります。つまり、就職に強い学問に興味がある人も情報工学向きです。
なお、前述した通り、IT業界は需要の高まりに人材の供給が追い付いていない部分もあり、売り手市場と言えるため、採用されやすいでしょう。このような業界の状況から転職などがしやすいこともポイントです。
情報工学科では何を学ぶ?
大学や短大の情報工学科では、さまざまな科目を通し専門性を身に付けていきます。ここでは、情報工学科の主な履修内容を紹介します。
基礎科目
情報工学科では専門性の高い科目ももちろん履修しますが、数学や英語などの基礎科目も学びます。例えば、プログラムを書く際には数学の考え方を応用します。
また、情報工学は世界中で研究されている学問であり、英語の研究データや論文なども存在するため、内容を理解するにはある程度の英語力を身に付けなければなりません。英語は説明書や指示書などに使われている場合も多いため、使用頻度は高いでしょう。
情報工学をスムーズに学び、知識・スキルを身に付けるために基礎科目が必要なのです。
ソフトウェア系
ソフトウェア系では、インターネットやネットワーク、システム構築などに関する分野を中心に学びます。
具体的な科目としては、プログラミングやシステム工学、ネットワーク演習、アプリケーション開発などです。
こちらの科目も演習を交えながら、実際に働く際に不可欠な知識・スキルを身に付けます。特にプログラミングはIT分野の技術職には不可欠とも言えるものなので、基礎を重点的に学習します。
自分が実際にプログラムしたアプリやシステムを通し、ものづくりの楽しさも味わえるでしょう。
ハードウェア系
ハードウェア系では、コンピューターの本体となるハードウェアの分野を中心に学びます。具体的に例を挙げると、コンピューター制御や組み込み設計、電気・電子回路基礎などです。
ハードウェアに関する知識・技術はIT業界のどの職種においても活かせるので、ハードウェア系のスキルを持った人材は業界からの需要も特に高めです。
情報工学科では座学と演習により、実際の現場でも活かせる専門性を身に付けることができます。
情報工学の研究内容の例
久留米工業大学の情報ネットワーク工学科では、さまざまな研究が行われています。例えば、VR(バーチャルリアリティ)による味覚の変化に関する研究もその1つです。
人は食べ物を食べ、その味を感じることができますが、この研究はVRの体験によって味覚に変化が発生するのかというものです。VRは現在、多様な業界で実用化されています。
この研究が成功すれば、味覚トレーニングやダイエットなど、幅広い分野への応用も期待できます。
また、UnityとKinectを用いた体感型ゲームアプリの研究なども行われています。Unityで開発したゲームに、Kinectでジェスチャーを情報として伝え、操作を行うというものです。
現在プレイヤー同士で対戦・協力するモードの開発に成功しており、さらに研究が進められています。こちらはリハビリテーションなどに活用できると考えられています。
情報工学とプログラミング
情報工学とプログラミングは切っても切れない関係にありますが、それぞれ理解しておくべき点もあります。ここでは、情報工学とプログラミングの違いや、大学で学べるプログラミングについて説明します。
情報工学とプログラミングの違い
情報工学は前述した通り、情報分野を工学的に活かすための学問です。そして、実際に情報工学を活用するとなると、さまざまな知識や技術など専門的なスキルが必要になります。
そのスキルの1つがプログラミングです。つまり、情報工学の中にプログラミングが含まれているという形になります。
情報工学がプログラミングそのものを意味するわけではないので、その点は正しい理解が必要です。
情報工学ではプログラミングの基礎を学ぶ
IT分野で幅広く使われるプログラミングは、もちろん情報工学において学ぶことができます。ただし、学科で学ぶ内容は基礎が中心です。
職業訓練校や専門学校のように、現場ですぐ即戦力として働けるような実戦的なスキルを身に付ける授業はありません。
情報工学について多角的に学ぶことができるので、基礎スキルを全体的に底上げすることは可能ですが、それを持ってすぐエンジニアとして働けるわけではないことを理解しておいてください。
情報工学を学んだ後の就職先や進路
情報工学の学びを具体的に進路にどのように活かせるのかが気になる人も多いでしょう。そこで、情報工学を学んだ人が実際選んでいる主な就職先・進路を紹介します。
IT業界
情報工学を学んだ後の進路として最も代表的なのはIT業界への就職です。
情報工学で身に付けた専門性を余すことなく活用できる業界であり、IT業界への就職を目指して情報工学を選ぶ学生もいます。
ITは今やさまざまな業界において、なくてはならない存在なので、IT業界の需要は高まる一方です。業界も常に多くの人材を求めており、就職しやすいこともポイントと言えます。
メーカー
メーカーに就職する人もよく見られます。
メーカーは社内にシステム開発の専門部署などを置いているところも多く、情報工学で学んだスキルを活かしやすいでしょう。
電気・通信・機械メーカーは商品・サービス自体がITと深く関わっているため、さまざまな業務において情報工学の専門性を発揮しやすいと言えます。
ただし、それ以外のメーカーであっても、例えば商品・サービスの製造をシステムで管理しているなど、情報工学を必要とする部分は存在します。
コンサルティング業界
コンサルティング業界と情報工学は結びつくイメージがない方もいるかもしれませんが、情報工学を学んだ人に人気の就職先の1つです。
近年は企業のIT分野に関するコンサルタントが増えています。さまざまな企業の現状を分析し、ITを通して企業をより良くしていく仕事です。
徐々に問題点が改善され、ポジティブに変わっていく企業の姿を間近で見られるため、大きなやりがいを感じられるでしょう。
大学院へ進学
大学で学んだ後、就職せず大学院に進学するという道もあります。
情報工学を学んだ後に目指す職種としては技術職のほか研究職などもありますが、研究職に関してはより高い専門性が求められる上、技術職より門戸が狭いので、就職の難易度は高めです。
大学院で学びを深め、各種資格や修士課程などを取得することにより、研究職に必要な知識・技術が得られ、就職しやすくなるでしょう。
公務員
公務員の中にも情報工学のスキルを活用できる職種・部署があります。例えば、電気電子情報系の技術職を目指すのも1つです。
また、自治体で使用しているシステム・ネットワークを管理する部署で働くという道もあるでしょう。
業務の効率化などを目指してIT化に力を入れている自治体も多いため、情報工学のスキルを発揮しやすいと言えます。
教員
大学在学中に教員免許を取得し、教員として働く進路もあります。現在、中学校・高校においては情報分野に関する専門科目があり、情報教育にも力が入れられています。
また小学校の場合、専門科目はないものの、さまざまな教科を通して情報教育もなされています。
自分が教える立場になり、学んできたことを児童生徒に伝えるという仕事は、他の仕事とはまた異なるやりがいが味わえるでしょう。
起業
前述した通り、IT分野は各業界からの需要が高く、今後も市場の拡大が見込めます。市場に参入しやすいことから、卒業後に起業し事業主として働く人も見られます。
起業したての時期は、実績がまだほとんどないことでなかなか仕事が獲得できないかもしれませんが、元々需要は多い業界なので、地道に営業をして経験を積み重ねていけば成功できる可能性があります。
情報工学のこれからと将来性
情報工学は私たちの暮らしに大きな関わりのある学問です。情報工学で学んだことを活かせる仕事は豊富にあります。
また、何度か述べている通り、IT業界はこれからも需要が高まり続けると見込まれます。ITに必要不可欠である情報工学の重要性はより高まっていくと考えられるでしょう。
ただし、IT分野における知識や技術は日々進歩しています。それまで最先端だったものが少し後にはもう古いと言われるほどIT分野の変化はめまぐるしいのです。
つまり、IT分野の仕事に携わる人は、常にアンテナを張り、最新の情報を得ながら自己研鑚を続けなければ、あっという間に時代に置いて行かれてしまいます。
仕事とともに勉強も続ける必要があるので簡単ではありませんが、ものづくりを通して自分の仕事の成果が見えるため、やりがいを感じながら働いている人も大勢います。
仕事を通して自分をどんどん成長させ、社会にも貢献できる、大きな意義のある仕事と言えるでしょう。
おわりに
情報工学はIT化が進む現代においてなくてはならないものであり、高い将来性が見込めます。
また、ものづくりを行う分野なので、自分の研究や仕事の成果が見えやすく、やりがいを感じやすいことも特徴です。
就職に強く、働きながら楽しみや喜びも見つけられる、魅力が多い学問と言えるでしょう。
ぜひこの記事を参考に、情報工学科への進学を検討してみてください。