人口減少時代を迎えた日本では、あらゆる分野で人手不足が問題になり、労働環境が大きく変化し始めています。この変化は、建設業界についても例外ではありません。
今回は、建設業界の現状、建設業界の将来、その中で求められる人材についてお伝えします。これから建設業界に進む皆さんは、ぜひ業界の動向をチェックしておいてください。
目次
建設業界の現状と課題
まずは、建設業界の現状と課題について確認しましょう。
現状:東京オリンピックまでは好景気
建設業界の現状は、バブル期以上の最高収益が続いている状態です。町を歩いていても、住宅から公共建築物まで多くの建設現場を見つけることができますね。
現状の好景気の大きな理由としては、次の3つが挙げられます。
- 2019年10月の消費税吊り上げ前の駆け込み需要
- 日本各地からの震災復興需要
- 2020年の東京オリンピックに向けた町の整備や会場づくりなどの五輪需要
順番に詳しく確認しましょう。
2019年10月の消費税引き上げ前の駆け込み需要
駆け込み需要とは、「増税する前に不動産を買っておきたい」と考える人が駆け込むようにして不動産を欲しがる状態のことです。
不動産は本体価格が高いため、購入者にとって、2019年秋に控える消費税10%への引き上げはとても無視できません。
2020年の東京オリンピックに向けた五輪需要
メイン会場の新国際競技場はじめ、各競技会場や周辺の整備、海外からの来訪者に向けた不動産など、オリンピックに伴った建設需要は業界の好景気を底上げしています。
日本各地からの震災復興需要
2011年の東日本大震災から、日本各地で立て続けに起きている大規模な震災や災害の復興には、建設業の力が必要不可欠です。
この3つの大きな需要から、建設業界は2020年までは好景気であることは間違いありません。
課題:人手不足
先ほどお伝えしたように、建設業界では大きな需要が立て続けになっているため、建設業界では2020年までの慢性的な人手不足が課題となっています。
中でも深刻なのは、専門的な知識と技術を持った技術者の不足です。皆さんのように建設について学び、建設業界を支える人材の育成が切実に必要になっています。
建設業界の将来
建設業界の現況から2020年までの近い将来についてお伝えしましたが、2020年以降の将来の動向について確認しましょう。
東京オリンピック後の景気は?
国内では、2020年以降も各地で大規模な開発が計画されていますので、建設業界全体の好景気はしばらく続く見込みですが、一般消費者に向けた住宅などの不動産需要は増税を境に一旦落ち着くことが予想されています。
労働環境の変化
国内で進められている「働き方改革」によって、各業界の労働環境は改善されていますが、建設業の現状は、他の分野に比べてかなり遅れています。建設業界にとって、労働時間の減少は工期の遅れや、収入の減少などと直結するためです。
しかし、大企業から徐々にその輪は広がり、中小企業でも週休2日制度を取り入れる、定時退社日を設けるなどの働きは進んでいます。
特に、人材不足も深刻な課題となっているため、「3K」(きつい、きたない、危険)のマイナスイメージを払拭することが重要な建設業界では、「働き方改革」を積極的に進め、より良い労働環境となっていくことが予想されます。
IT化やAI導入による社会環境の変化
国内の人手不足や、社会全体の効率化を担うIT化やAIの導入は、建設業界でも進められています。
具体的な導入事例としては、次のことが挙げられます。
- 自動作図ソフトの導入
- タブレット端末による現場一括管理
- ホロレンズによる3D完成イメージの共有
- 工事作業人員の代わりとなるロボット技術の導入
AIについては、大手ゼネコン会社で次のような技術の試作が進められています。
- 予算や要望に応じたプロジェクトの提案
- 熟練工の技術の代替となる微妙な機械操作
建設現場や設計の仕事で時間が掛かっていた作図作業、イメージの共有、書類作成、データの共有、データ整理などがIT化されることで、業務は効率化され、より「働き方改革」も前進することが予想されます。
また、海外では施工管理の代理となる3Dスキャン技術や、3Dプリンターで作成された建築物も実現していいます。日本では建築基準法の関係で導入はされていませんが、この様な技術が国内で導入されれば、建設業界のありかたは大きく変わってくるでしょう。
これからの建設業界で求められる人材
人手不足、IT化やAIの導入など、今までと労働環境が大きく変わろうとしている建設業界で求められる人材についてお伝えします。
どのような人材が求められる?
建設業は、様々な職種のたくさんの人が協力し合って、ひとつの建物やプロジェクトを完成させていく仕事です。そこで欠かせないのは、高い責任感とコミュニケーション能力。請け負った仕事を最後まで責任を持ってやり遂げる力と、自分の思いをわかりやすく伝え、周囲の意見をくみ取り、反映させる力は、どんなに労働環境が変わって行っても建設業界において欠かせないスキルだと言えます。
建築士やインテリアの仕事はどうなる?
AIによる技術革新で、人の要望に忠実な企画や、色彩提案などは将来的にコンピューターに任せるかたちになるでしょう。その中で生き残るためには、コンピューターには考えつかない、自分にしかできないことを見つけておくことが大切です。
建築士やインテリアの仕事を目指す人は、他の人やコンピューターに負けない自身のブランドを確立し、感性を磨いてください。
これから建設業界を目指す方へ
これからの建設業界は、IT化やAIの導入によってコンピューターが仕事を手助けしてくれる時代になって行くでしょう。
しかし、人間の仕事がなくなることはありません。建築が好き。という気持ちと、強い責任感、コミュニケーション能力、独自の発想力を磨いて、これからの時代を生き残れる技術者を目指してください。
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