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CADのスキルや技術を証明するには、資格を取得する方法があります。中でも「CAD利用技術者試験」は、業界でも知名度の高い人気の資格です。この記事では、CAD利用技術者試験に興味がある人や、受験を考えている人に向けて、試験の種類や難易度、資格取得に向けてどのような勉強法があるのかなどを紹介します。
そもそもCADでどんなことができる?
CAD(computer aided design)とは、コンピューターによる設計支援の技術のことです。
細かく分けると、以下のケースで総称して「CAD」と呼びます。
- 設計技術が搭載されたソフトやツール
- コンピューターを使って設計をする行為そのもの
また、CADは次の2種類に分けられます。
2次元CAD(2DCAD):三角法の理論を用いて2次元の図を作成する。建物の平面図や正面図、側面図などの作成が可能
3次元CAD(3DCAD):画面上で立体モデルの作成ができる。質量や体積、表面積の計算なども可能
どちらのCADをメインに使用するかは、業種や現場によって違います。もちろん、2種類のCADを使うケースもあります。
CAD利用技術者試験の基礎知識
ここからは、「CAD利用技術者試験」について見ていきます。どのような資格なのか、その内容を掴んでおきましょう。
CAD利用技術者試験とは
2003年からスタートしたCAD利用技術者試験は、CADの技術、知識を問う資格試験です。資格を主催する一般社団法人コンピュータ教育振興協会(ACSP)は、コンピューター関連の検定試験の実施を事業の柱とする民間団体です。したがって、CAD利用技術者試験は国家資格ではありません。
しかし、CAD利用技術者試験は民間資格でも社会的な知名度が高く、「教育訓練給付金制度」や「ジュニアマイスター顕彰制度」の対象となっています。
試験の目的
CAD利用技術者試験の目的は、単にCADの技術者を増やすことではありません。ものづくりを担う人材を育成することも目的としています。
経済産業省では、2020年度版の「ものづくり白書」において、ものづくりを担う人材の確保と育成を提唱しています。IoTやAIの分野に対応できる技術者を育成するうえでも、CAD利用技術者試験は期待が持たれています。
試験の対象となる人
次のような人は、CAD利用技術者試験の対象となります。条件に当てはまる人は、試験を受験することで、さまざまなメリットが期待できるでしょう。
- CADシステムを使っている人
- 企業内で製図や設計の職種に就きたい人
- CADシステムの運用や管理の担当者
すでにCADシステムを使用している人や、CADシステムの運用・管理の担当者は、知識を再確認する意味でも、試験を受けてみる価値があります。試験勉強をすることで、間違いに気付くことがあるかもしれません。
また、特定の企業内で製図や設計の職種に就きたい人は、資格があると、即戦力として活躍できることをアピールできます。採用選考で有利になる可能性があるでしょう。
CAD利用技術者試験を生かせる仕事や業界
CAD利用技術者試験に合格し、スキルを取得すると、どのような仕事や業界で生かせるのでしょうか。
CADを頻繁に活用しているのが、以下の3つの業界です。これらの業界に就職を希望する場合、資格があると有利になる可能性が高いでしょう。
- 機械
- 自動車
- 建築
大型の重機などを製造する機械業界では、製品の設計や部品の製作などにCADを活用しています。特に、3次元CADは自動車業界でも重宝されています。
自動車業界では、CADの技術により、試作品の車を作らずに、完成後の状態がシミュレーションできるようになりました。
平面から立体の透視図まで簡単に作れるCADは、建築業界でも欠かせない技術になりつつあります。
ただし、これらの業界では資格の有無よりも、仕事をこなす技術があるかどうかや実務経験が重視される傾向があります。試験を受けるだけでなく、合格した後もCADのスキルや技術を維持できるように、常にブラッシュアップを怠らないようにしましょう。
CAD利用技術者試験の種類
CAD利用技術者試験は、以下の2つの種類に分かれています。
- 2次元CAD利用技術者試験
- 3次元CAD利用技術者試験
使用するCADの種類によって適した試験が変わるため、受験前にはしっかりと違いを整理しておきましょう。
それぞれの違いについて、以下で詳しく解説していきます。
2次元CAD利用技術者試験の特徴
この試験は、2次元CADの知識、技術が問われる内容になっており、基礎・2級・1級までの3つのレベルがあります。
基礎と2級は全員が同じ試験分野を受験しますが、1級では、受験者が機械や建築、トレースの3つの領域から1つを選んで受験します。
基礎の試験分野に含まれるのが、「CADシステムの概要や機能」、「製図の知識」などです。2級の試験になると、より専門的なCADシステムの知識が求められます。
2次元CAD利用技術者試験の受験資格
基礎と2級は受験者の要件がなく、誰でも受験が可能です。一方、1級は2次元CAD利用技術者試験の2級に合格していることが、受験者の要件になっています。
1級には機械、建築、トレースの3つがありますが、1級の試験は同日に行われるため、複数の領域で合格したい人は、数回に分けて受験をする必要があるでしょう。
試験内容・難易度
2次元CAD利用技術者試験は、1級とその他の階級とで少し試験内容が異なります。
基礎と2級は筆記試験のみですが、1級は、いずれの領域も筆記試験と実技試験があります。
機械の実技試験では、「機構部品の作図」などが出題分野です。建築の実技試験の場合は、RC構造や木造建物の図面などが出題範囲に含まれます。トレースの実技試験では、トレース能力を問う問題などが出題されます。
同試験の難易度は、基礎、2級、1級の順で高くなっています。基礎や2級は筆記試験の基準点を満たせば合格ができますが、実技試験がある1級は作図のスキルを身に付けていないと合格は困難です。
3次元CAD利用技術者試験の特徴
3次元CADの知識、技術が問われる3次元CAD利用技術者試験は、2級・準1級・1級の3つのレベルがあります。
3次元CAD利用技術者試験の受験資格
3つの階級は、それぞれ受験資格が異なります。2級の場合、受験資格の要件はありません。したがって、こちらの階級に関しては、CADに興味を持ち始めた初心者でも受験が可能です。
準1級と1級は、「2級の試験に合格をしていること」が受験の条件です。CADの知識に自信があっても、いきなり準1級や1級を受験することはできないため注意をしましょう。
2級と準1級、1級は同時に受験することもできます。ただし、2級が不合格の場合は「2級の有資格者」という受験資格を満たしていないため、点数に関係なく他の階級も合格にはなりません。
試験内容・難易度
2級の試験分野となっているのが、「3次元CADの概念」などの4つの領域です。
準1級の場合は、「CADリテラシー、形状認識能力」などの2つの領域が試験分野となっています。1級の試験分野には、「CADリテラシー、形状認識能力」の他に「アセンブリモデリング能力」などの2つの領域が含まれます。
試験方式は、2級がマークシート方式による筆記試験、準1級と1級がCADソフトを使った実技試験です。実技試験では、行ったモデリングを元に解答をマークシート式の用紙に記入します。
3次元CAD利用技術者試験は、2級、準1級、1級の順で専門性が高い問題が出題されるのが特徴です。そのため、難易度も1級がもっとも高くなっています。
CAD利用技術者資格を取得する道筋
CAD利用技術者試験にスムーズに合格するには、効率を考えて勉強する必要があります。資格を取得するために、色々なアプローチがありますが、多くの人がトライしているのが次の3つの方法です。
大学で学ぶ
建築学科や工学科などがある大学で学ぶ方法は、CADに関する知識を体系的に習得できるのがメリットです。単に資格を取得するだけではないので、目指せる職業の選択肢は幅広いでしょう。
キャリアセンターなどを設ける大学では、学生の専門資格の取得を積極的にサポートしていますが、自分のペースで取得できる場合がほとんどです。
大学を利用して資格取得を目指す場合、授業料などの学費を負担する必要があります。大学の年間の学費の平均は、私立大学なら100万円から120万円前後、国公立大学では60万円前後です。
実際に資格を仕事に生かすには、4年間のカリキュラムを終えて卒業するまで待つか、在学中にインターンとして企業に採用される必要があるでしょう。
職業訓練に通う
費用をあまりかけずに勉強したいなら、職業訓練を利用して資格取得を目指す方法を考えてみましょう。
全国各地にある職業訓練校は、国が運営しています。そのため、開講されている講座の受講料もリーズナブルです。実際、職業訓練校の講座は、テキスト代などの実費を負担するだけで受講できるケースが少なくありません。
職業訓練の受講期間は、講座によって少しずつ異なります。実際、1年程度の長期に渡って開講されている講座もあれば、3カ月程度の受講期間が短い講座もあります。CAD利用技術者試験に特化した講座を選べば、試験範囲を効率よく学習できるでしょう。
CAD専門スクールに通う
「一定のコストがかかっても、しっかりと実力を付けたい」という人には、民間のCAD専門スクールを利用する方法もおすすめです。
専門スクールの場合は、資格取得に特化してカリキュラムが組まれているケースが多々あります。そのため、短期間の受講でも効率よく学べるでしょう。
資格取得のバックアップ制度があるスクールなら、試験に合格するまで手厚いサポートが受けられるかもしれません。
専門スクールに通って勉強する場合の費用は、だいたい40万円から60万円前後ですが、受講する講座の種類やスクールによって多少変わってきます。また、通学期間も、数カ月から1年以上まで幅があります。
どのような学校が自分に合っているのか、事前によくリサーチしておきましょう。
その他のCAD関連の資格
CAD利用技術者試験は、CADを活用している業界でよく知られているため、受験を希望する人が多い人気の資格試験です。
しかし、同試験以外にも、CADのスキルを証明できるものはいくつかあります。
- 建築CAD検定試験
- Vector works操作技能認定試験
- AutoCADユーザーオートデスク認定資格プログラム
などが有名です。
建築CAD検定試験は、建築業界でのCADの技術を証明する検定試験です。こちらの試験は4級から準1級まであり、建築図面の作図のスキルが問われます。
Vector works操作技能認定試験は、デザイン事務所などで活用されている「Vector works」の操作スキルを問う内容になっています。2次元、3次元の両方のCADスキルが問われるのが特徴です。
AutoCADユーザーオートデスク認定資格プログラムは、世界で使用されているオートデスク社のCADのスキルに特化した内容になっています。
おわりに
2次元や3次元のCADの知識が習得できるCAD利用技術者試験は、就職を考えている高校生や大学生にもおすすめです。
資格に興味を持った人は、ここで紹介した試験の内容や種類、CADの技術が活用されている業界などを参考にして、自分の進路に役立つ資格かどうかを考えてみましょう。CAD利用技術者試験の勉強をする際は、自分に合ったアプローチを選ぶのがポイントです。