今や幼稚園や小学校にも導入されているという「アクティブ・ラーニング」。教育系の読み物のみならず、テレビ番組でも取り上げられ、学園ドラマの中にも登場しました。人工知能の進化やグローバル化など社会が変化していく中で、未来を担う子どもたちの「生きる力」をどのように学べばいいのか、それが議論されてきた結果、重視されたのが「アクティブ・ラーニング」です。ではその「アクティブ・ラーニング」とはどのようなものなのでしょうか?
目次
アクティブ・ラーニングとは
文科省による新しい学習指導要領に基づくアクティブ・ラーニングとは、「主体的・対話的で深い学び」を実現するための授業をすることです。能動的(アクティブ)に続ける学びを模索し続け、教員が関わり授業を工夫していくことで、ある特定の指導方法のことではありません。すべての教科のそれぞれの特質にあわせて授業を改善し、子どもたちが能動的に学べるようにする学習方法です。
アクティブ・ラーニングのための時間を改めてつくるわけではなく、これまでの活動を「主体的・対話的で深い学び」となるよう改善して、学びの質を向上させていくことが求められています。
そして討論や対話だけを重視せず、子どもたちの知識が不十分であれば知識を習得することに時間をかけるなど、子どもたちの状況に合わせて授業を計画することに注意が必要だとしています。
アクティブ・ラーニング型の授業内容
では、アクティブ・ラーニングを意識した授業方法にはどのようなものがあるのでしょうか?その具体的な方法について、その授業内容を紹介します。
ケースメソッド
ケースメソッドは、ビジネススクールや法律を勉強する学生たちの間などで採用されている、かなり実践的な研究・学習方法です。ある問題が起きたケースを教材にみんなで討議しながら、その問題が起こってしまった理由や、どうすれば解決できるかを考えます。
例えばストーリーになっているケースの、ある登場人物が自分だった場合、その問題に直面してどう決断し実践するかを意見交換するのです。ほかの人の意見に耳を傾け判断し、よく考えて決断します。その決断には正解はなく、判断力と決断力が養われます。そして自分の意見を人に伝えるスキルや、対話し共感する力も向上する方法です。
フィールドワーク
フィールドワークとは、学びたい対象について、その対象に即した現地に直接赴いて調査・観察をし、資料を収集したり、現地でインタビューをして知りたいことを聞いたりする調査活動です。
フィールドワークに出かける前には、事前準備としてグループで話し合い計画することが必要です。現地では地域のひとや様々な分野のひとたちとコミュニケーションをとり、帰ってきてからは内容を振り返りまとめます。
アクティブ・ラーニングで求められる「主体的な学び」と「対話的な学び」を実践することができ、課題を追求していく中で自分の考えを伝えあったり、新たな問題を見つけて他教科の知識と結び付けたり、「深い学び」へとつながることが期待できます。
アクティブ・ラーニングの課題や問題点
アクティブ・ラーニングの手法が日本で活発に取り入れられるようになってまだ日が浅く、データも揃っていませんが、その中でも課題や問題点がすでに出てきています。
指導や評価が難しい
アクティブ・ラーニングというある特定の指導方法があるわけではなく、各教科の特質をふまえ、子どもたちの状況に合わせて指導しなければならず、指導が難しいという問題点があります。まだ教員によってアクティブ・ラーニングに関する知識や経験にもバラツキがあります。今までの学習指導要領においても具体的な説明がありませんでした。子どもたちが将来、ある教科に限ることなく様々な知識を総動員して、問題に対する「見方・考え方」を自由にできるようにするためには、それぞれの教員の専門性が発揮されることが必要です。
また、評価のしかたも難しいところです。自己評価にするのか、相互評価にするのか、個人の評価とグループの評価をどう合わせるかなど考える必要があります。
授業の進行が遅くなる
「主体的な学び」に重点を置きすぎて、子どもたちに内容や進行を任せてしまうと、様々な活動に時間を割いているものの、それが学習の成果として出てこない場合があります。また、あるタイプの授業方法にこだわって、子どもたちに定着させるべき知識が伝わっていない場合もあります。
アクティブ・ラーニングは、子どもたちが自主的に取り組み、話し合ったり調べたりするので、結果として全体的に授業の進行が遅れがちになります。アクティブ・ラーニングのために特別な授業数が割り当てられているわけではありませんから、カリキュラムが達成できるような調整も必要です。
生徒によって貢献度に差が出る
アクティブ・ラーニングの授業形態でよくある対話や議論によって進められる学習では、リーダーシップをとって進行する生徒、発言の多い生徒、発言は少ないものの内容をうまくまとめあげられる生徒、課題を深く学んでよく理解できている生徒と優れている内容が様々です。それは目に見えるものと見えにくいものがあります。
また、よく話し合っているように見えて課題と関係ない好きなことをグループで話しているだけという生徒もいます。
そもそも自主的に学習しようという意欲の強い生徒と、そうではない生徒で学習に大きな差が出てしまうのです。
受動的な日本人には不向き?
日本で一般的な授業スタイルとなっているのは、教室の前で教員が板書しながら講義し、それを生徒が聞いてノートにまとめるというものです。そういった従来の受動的な学習方法に慣れている日本人だと、自分から積極的に取り組むアクティブ・ラーニングというスタイルは、教える側も教わる側もすぐにはうまくいかないでしょう。教員には念入りな事前準備が必要ですし、生徒にはある程度の経験が必要です。
日本人には、人前での発言や会話が苦手だという人が大勢います。生徒を評価するうえで、そういった対話が苦手な生徒は劣っていると判断されてしまいかねない問題もあります。
受験に活かしにくい
現在の受験においては、暗記した知識を応用して解くことに対する採点評価が中心です。高校での授業も、まだ従来の方式のものであり、アクティブ・ラーニングで得たものを受験や将来に役立てるということに至ってはいないという問題があります。
主体的・対話的に学んで得た「生きる力」は、これからの社会に出て役立つ力かもしれませんが、試験でその力を評価するのは難しいのです。
グローバル化するこれからの日本に求められる教育法
アクティブ・ラーニングは、まだまだ課題はありますが、グローバル化する日本では有用な教育法です。世界で活躍するには、よりアクティブにものごとに取り組む必要があり、コミュニケーション能力やプレゼン力も大切になります。
情報技術が発展していく今の社会で、多くの情報の中自主的に考え、臨機応変に対応できる力も育てられます。AIが進化しようとも、自由な発想ができる人間でなければ対応できないものがあります。その力を養うためにもアクティブ・ラーニングはこれからの日本に求められる教育法と言えるでしょう。
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