ロボットという言葉にはもともと「人間が行う動作を代わりに行う機械」という意味があります。具体的には工場をイメージしていただくと分かりやすいでしょう。工場の機械は人間の代わりにパーツを組み立て、塗装を行い、不良品をチェックしており、これによって人件費が削減できるというわけです。
しかし、今ロボットという言葉を聞くとどんなイメージをするでしょう?おそらく鉄腕アトムやドラえもん、ガンダムなど人の姿を模したロボットを想像する方がほとんどなのではないでしょうか。このようなロボットはこれまでアニメやSFの世界だけのものと考えられていましたが、最近は現実的なものとなってきているのです。今回はそんな一般の方とも関わり合うロボットの先駆けとなるであろう、接客型ロボットの最新事情についてご紹介します。
目次
接客ロボットとは
接客ロボットとは文字通り接客を行うロボットのこと。工業用の機械のように、いかにもロボットといった効率を追求したものではなく、人間に近いデザインになっていたり違和感を感じにくいデザインになっているのが特徴です。
接客ロボットの種類
ソフトバンクのPepper(ペッパー)
現在最も有名なのはペッパー君ことソフトバンクのPepper。感情エンジンと呼ばれるAI(人工知能)を搭載しており、まるで人間のような振る舞いを見せるというのが特徴です。
おもてなしロボットのCORON(コロン)
株式会社アイウィズが提供するロボット。注文を受け付ける、観光案内をするなどPepperと似た機能を備えていますが、片手に乗るほどのサイズで利用料も低めに抑えられています。
Siriusbot(シリウスボット)
Siriusには自律走行の機能があり、店内で迷っているお客さんを探している店の前まで送り届けることができます。営業中だけでなく開店前・閉店後も棚卸しを手伝うなど、店員の負担軽減に役立っています。
unibo(ユニボ)
H.I.S.ホテルホールディングスが経営する変なホテル内で活躍するナビゲーションロボット。ホテルについての案内をしたり周辺の観光情報を伝えたりといった役目を果たしています。飲食店情報サイト「ぐるなび」と連携することで周囲の飲食店情報を提示することも可能です。
飲食店ロボットが活躍する場所
飲食店・レストラン
接客といえば外食を思い浮かべる方も多いはず。飲食店は特に人手不足が懸念されている業界ということもあり、接客ロボットが本格的に導入される未来はそう遠くないかもしれません。接客ロボットを導入した事例として有名なのは回転寿司チェーンのはま寿司。先ほども紹介したソフトバンクのPepperが来店した客の受付・案内を行っています。
ホテル
接客ロボットを導入したホテルとして有名な事例は先ほどuniboの紹介でも取り上げた「変なホテル」。人件費削減に役立っているのはもちろん、人の姿だけでなく恐竜型のロボットを配置することでお客さんを楽しませています。現在は十数店舗と店舗数は多くありませんが、将来的には海外も含め100店舗を目指しているとのことです。
レジ
単純な仕事を人間の代わりに行うのはロボットが得意とするところ。レジの仕事は基本的に商品のバーコードを読み取る、お金の支払を受け付ける、と単純であるためロボットに代わられる可能性の高い領域です。
病院
人手不足は医療の現場でも問題になっており、看護師が足りないという病院が増えています。働き手が少ないと1人あたりの負担が多くなってしまうのは当然。特に医療現場という特性上、人の命にも影響があります。ロボットであれば電力さえあれば稼働できるため、こちらも早めに導入される可能性が高い領域と言えそうです。
接客ロボットを導入するメリット
人件費の削減
ロボットを導入する上で一番分かりやすいメリットが人件費の削減です。ロボットは人間と違い、最低限電気さえあれば稼働することができ、疲れることがないため休息の時間も必要ありません。ロボットでもできる仕事であれば人間に任せるよりもずっと安上がりです。
集客効果
まだまだロボットを導入している店は少ないため、希少価値があります。ロボットを導入すればそれだけで話題になることも珍しくないでしょう。ロボットが当たり前になるまでは導入による集客効果も期待できます。
お客さんの心理的負担の軽減
服屋で買い物をしているとき、店員が接客してきて困ったことはありませんか?相手が生身の人間だとどうしても断りにくく、買い物が嫌になってしまう人もいるでしょう。ロボットであれば無理に接客されているという感覚が少なく、お客さんの心理的負担を軽減することが可能です。
接客ロボットに使われている技術
これから工学の道に進もうとする方は、接客ロボットにどのような技術が使われているか気になるという方もいるでしょう。そこで、大学で学ぶことがどのように役立つのかをいくつかご紹介します。
機械工学
接客用とはいえロボットはロボット。設計・製造にあたっては当然ながら機械についての知識が必要不可欠です。機械工学は設計方法や運用方法を学ぶ学問。物理学や数学といった基礎的な学問を学んでいることが前提に学び始めるので、高校生のうちにしっかりと勉強しておく必要があります。
心理学
接客ロボットは人の生活に直接関わってくるもの。ロボットが怖いと感じる方もまだまだ少なくなく、抵抗なく受け入れてもらうために利用者の心理を知ることも大事になります。
ロボット倫理学
接客ロボットは人間と違い、利用者の年齢や顔の特徴などの情報を集めることができます。この場合、集めた情報を第三者が見ることも可能になるのでプライバシーの侵害と受け取る人も出てくるでしょう。そのためロボットは利用者の情報をどこまで集めて良いのか、その情報はどこまで利用して良いものとするのかなど倫理的な問題が生まれます。こういった問題について考えるのもロボットを生み出す技術者が考えるべきものです。
以上、接客ロボットの概要について紹介してきました。いくつか事例でも取り上げたように、少しずつ導入は進んでいますが、本当に盛り上がりをみせるのはおそらくこれから。これから工学を学びたいという方は接客ロボットという分野も視野に入れてみてはいかがでしょうか。