コンピューターやシステムを思い通りに動かす際に、欠かせない存在であるプログラマー。さまざまな業界で需要があるため、プログラマーとして活躍したいと考える人も多いでしょう。
しかし、プログラマーとして働くには、専門的な資格が必要なのでしょうか。
この記事では、数あるITエンジニアの種類のうち、プログラマーを目指す人が取得しておきたいおすすめの資格や、資格取得のメリットについてご紹介していきます。
これからプログラマーを目指す人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
プログラマーの仕事に資格は必要?
結論から言うと、プログラマーとして働くうえで、資格の取得は必須ではありません。資格を保有していなくても、仕事はできます。
プログラマーの仕事内容を簡単に説明すると、コンピューターを動かすために、さまざまなプログラミング言語を用いて、アプリやシステムを作ることです。
つまり、資格がなくとも、プログラミング言語が扱えればプログラマーとして働くことができるのです。
プログラマーが資格を取るメリット
前述したように、プログラマーという職種は、資格不要で働くことができますが、取得するとさまざまなメリットがあります。
ここでは、プログラマーを目指す人向けに、資格取得をするメリットについて解説をしていきます。
就職や転職に有利
プログラマーに限らず、ITエンジニアは実務経験が優遇される職種です。
実務経験とは、次のような内容です。
- プロジェクトへの参加経験や担当した役割
- 開発したことのあるアプリやシステム
しかし、初めて就職する人や、プログラマーになったばかりの人は、当然実務経験がありません。そこで資格取得が役立つのです。
資格名を履歴書に記載できるほか、「資格取得できるだけの知識がある」「初心者ながらに努力をしている」と就職活動の場で評価されます。
IT業界では、日々新しい技術が生み出されています。そのため、ITエンジニアは常に新しい技術を学ぶ姿勢が必要となるのです。
また、転職をする際も同様、転職先の職種に合わせた資格を取得することで、転職に対する本気度を示すことができるでしょう。
知識&スキルアップ
特に初心者にとって、資格取得の一番のメリットは、プログラミングの基礎的な知識やスキルを身に付けられることです。
基本的な知識や基礎技術の習得は、プログラマーとして長く活躍するために非常に重要です。最新のIT技術も、根本的な部分は従来の技術のうえに成り立っています。
基礎的な知識やスキルをしっかり身に付けておくことで、新しい技術(応用)も習得しやすくなるでしょう。
キャリア&待遇アップ
就職先によっては、資格を取得していることで、キャリアや待遇がアップすることがあります。
次の例を見てみましょう。
- 特定の役職に就く際、資格の取得が定められている
- 資格を取得することで「資格手当」が支給される
特に注目すべきは、「資格手当」です。
難易度が高い資格や業務で役立つ資格を取得していると、月々5,000~10,000円ほどが手当として給料に上乗せされるのです。
昇給は年間2回の査定による企業も多いので、資格取得の方が、確実かつ効率的に収入アップを目指せます。
そのほか、フリーランスのプログラマーとして独立した場合、自身の知識やスキルを証明することができるので、仕事の獲得に役立てることができます。
プログラマーとして活躍するために取っておきたい資格
資格取得することのメリットについて解説してきましたが、「どの資格を取得すべきかわからない」という人もいるでしょう。
そこでここからは、プログラマーを目指す人に、おすすめの資格をご紹介していきます。
これから資格取得を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
ITパスポート
ITパスポートは、「IT技術者として、基本的な知識を増やしたい」という人におすすめの国家資格です。ITの基本的な用語や、IPアドレスについてなど、基礎から身に付けることができます。
ITパスポートは、受験資格が必要なく、誰でも受けることができるほか、試験も月に1~3回実施されているので、受験しやすいこともポイントです。
また、ITパスポートの難易度は、IT系の資格のなかでも低い位置にあります。
未経験者の受験者が多いながらも、合格率は約50%であるので、取得しやすい資格のひとつでしょう。
ITパスポートに興味がある人は、次の記事も併せてご覧ください。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、ITの基本的な知識を網羅的に学ぶことができる国家資格です。
基礎的な知識であるため、プログラマーに限らず、すべてのITエンジニアに共通する知識を身に付けることができます。
基本情報技術者試験は、入社後に取得を推奨している企業も多いので、あらかじめ取得しておくと、資格勉強に追われることなく仕事に専念できるでしょう。
また、 ITパスポートよりも求められる知識が深くなるので、難易度は上がりますが、試験範囲が重複している部分もあります。そのため、ITパスポートの勉強をしたことがある人は取得しやすいです。
それでも合格率は20~30%なので、しっかりと勉強をして臨むようにしましょう。
基本情報技術者試験の詳細については、次の記事にまとめています。
情報検定(通称:J検 / 旧:情報処理活用能力検定)
情報通信技術能力の技能を証明する認定資格である「情報検定(通称:J検)」は、主に情報リテラシーに関する知識を学ぶことができます。また旧名称の「情報処理活用能力検定」は、1994年~2006年に使用されていた名称です。
情報検定は、資格のコンセプトが「使う」であることから、企業の経営戦略や表計算ソフトの活用法についての問題も出題されるので、これから社会人になる人にとって、役立つ知識を身に付けられます。
難易度は3級~1級まであり、それぞれの合格率は次の通りです。
- 3級:約70%
- 2~1級:約50%
合格率はかなり高めですが、1級では実践能力やネットワークや情報セキュリティといった仕事をするうえでとても役立ちます。情報検定を受検する人は積極的に1級取得を目指していきましょう。
情報セキュリティマネジメント
情報セキュリティマネジメントは、セキュリティに関する知識やスキルを身に付けることができる国家資格です。
現在、情報セキュリティ対策は、各企業で課題となっており、情報の管理方法や従業員への周知、業務フローの見直しが行われています。また、情報管理はIT部門だけではなく、営業や企画、総務や経理などさまざまな部署で必要です。
そのため、資格を取得しておくと、転職や部署異動などでも役立つでしょう。
難易度についても合格率は約50%でITパスポートと同等なので、ITパスポートからステップアップするために取得を目指すのもおすすめです。
Microsoft Office Specialist(MOS)
「MOS」と略される「Microsoft Office Specialist(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト)」は、マイクロソフト社のExcelやWordのスキルを証明する国際資格です。
ExcelやWordといったOfficeソフトは、企業だけでなく、プログラマーもよく利用します。特にExcelは、プログラミングコードを大量に生成する際や、データの抽出などでも活用する機会は非常に多いです。そのため、取得しておいて損はないでしょう。
難易度は「スペシャリストレベル(一般)」と「エキスパートレベル(上級)」の2つがあります。それぞれの合格率はスペシャリストで約80%、エキスパートで約60%と高く、初めてIT系の資格取得をしようとしている人にもおすすめです。
CompTIA IT Fundamentals
CompTIA IT Fundamentals(コンプティア・アイティー・ファンダメンタルズ)は、ITの基本的部分を広くカバーしている国際資格です。
大手企業の新人研修でも使われている資格なので、IT未経験者がこれからプログラマーを含め、ITエンジニアを目指す人におすすめです。
合格率は非公開とされていますが、ITの基礎的なレベルを学ぶ資格なので、難易度は比較的低いと言えるでしょう。
また、試験実施日も全国の認定テストセンターで、毎日実施(土日祝除く)されているので、学習が完了したタイミングで、取得できるのも魅力です。
PHP技術者認定初級試験
動的なWebページを作成する際に、「PHP」というプログラミング言語がよく用いられます。「PHP技術者認定初級試験」では、PHPの基本知識を身に付けることができます。
将来的に、Web系のプログラマーを目指したい人におすすめの資格です。
PHPでのプログラミングは、開発環境の構築も比較的用意にできるので、初心者がプログラミングを学ぶのにも向いています。
また、コーディングのしやすさから、多くの企業のホームページやECサイトでも使用されており、需要も高いと言えるでしょう。
PHP技術者認定初級試験の難易度は、対象者を学生や新人のWebデザイナー、プログラマーとしていることから比較的易しく、PHPの基本的な知識を有していれば合格することができるレベルです。
合格率も約70%となっているので、基礎を身に付けた後に力試しとして受験するのも良いでしょう。
Ruby技術者認定試験
Webアプリケーションを作りたい人は、Rubyの資格取得がおすすめです。
Webアプリケーションとは、Webの仕組みを利用した、アプリケーションのことを指します。Rubyを使用したWebアプリケーションは、「cookpad」や「食べログ」などが有名です。
上記のようなWebアプリケーション作成を仕事にしたい人は、Rubyを学び、力試しにRuby技術者認定試験を受けてみましょう。
合格率は非公開となっていますが、難易度は本記事でも紹介したPHP技術者認定初級試験と同等とされているので、約70%前後と考えられます。出題も基礎知識が中心となるので、参考書をしっかり反復して学習することで合格に近付くことができるでしょう。
C言語プログラミング能力認定試験
C言語の歴史はとても古く、開発された1972年から約半世紀経ちますが、いまだ多くのシステムの根幹部分に使用されている、現役のプログラミング言語です。
汎用性が非常に高く、需要があるプログラミング言語であり、C言語を拡張して作られた「C++」や、C++とJavaをベースに作られた「C#」といった他のプログラミング言語を学ぶのにも役立ちます。
C言語プログラミング能力認定試験は、C言語の知識やスキルを証明する資格であり、C言語を使用してプログラムを作成する能力を示すことができます。
難易度は3級~1級まであり、合格率は約68%です。
C言語自体の難易度が高いので、プログラミング初心者は慣れるまで大変かもしれませんが、身に付けることで将来の選択肢が広がります。
ORACLE MASTER
ORACLE MASTER (オラクルマスター)は、日本ORACLE社が主催するORACLEデータベースの認定資格です。
ORACLEは、日本国内のデータベースシェア率が約50%と非常に高く、知識や技術を身に付けることで、国内半分のデータベースを扱えると言っても過言ではありません。
データを保存する役割を持つデータベースと聞くと、プログラマーよりもインフラエンジニアのイメージが強いですが、アプリやシステム開発を行ううえで必要であるため、実は関係性がとても深いのです。
事実、データベースエンジニアを目指す際には、企業からはプログラマーやインフラエンジニアの実務経験を求められることがあります。
ORACLE MASTERのグレードは、Bronze、Silver、Gold、Platinumと分かれており、合格率は非公開とされています。
Javaプログラミング能力認定試験
Javaは非常に汎用性が高く、アプリケーション開発、Webサイト、ソフトウェア、金融機関の基幹系、組み込み系システムなど、あらゆるシステムで使用されているプログラミング言語です。
そんな、プログラミング言語の王道とも言えるJavaを勉強する際に、併せて取得したいのが「Javaプログラミング能力認定試験」です。
Javaプログラミング能力認定試験は、入門レベルの3級、簡単なプログラムを構築する2級、提示された内容を反映した変更仕様書を作成する1級などレベルが分かれており、累計の合格率は約65%です。
前述したように、Javaはあらゆるシステムで使用されているので、身に付けると就職先の選択肢がとても広がります。
これからプログラマーを目指す人は、ぜひ習得してみてはいかがでしょうか。
Python 3 エンジニア認定基礎試験
「機械学習」や「自動処理や分析」といった分野に興味がある人は、Python(パイソン)を学ぶのがおすすめです。
Pythonは機械学習や自動化だけでなく、スマホやWebアプリ、Webサービスやブロックチェーン技術の開発などで使用されているプログラミング言語であり、分野は多岐に渡ります。
Pythonの基礎知識を証明するのに役立つのが、「Python 3 エンジニア認定基礎試験」です。
比較的新しい資格であるため、取得者はまだ少ないですが、合格率は約77%と言われており、取得しやすい資格と言えます。
プログラマーの仕事によって求められるスキルや資格の違い
プログラマーは、構築するシステムやサービスによって、求められるスキルや資格が違います。
ここでは、Web系やアプリ・ゲーム系、就職活動時によく耳にするSIer系など、プログラマーの種類別に、それぞれの違いについて解説をしていきます。
Web系
Web系のプログラマーは、Webサイトに関わるプログラミングや、システム開発を行います。
Web系のプログラマーに求められるのは、HTMLやCSS、JavaScriptの知識やスキルはもちろん、前述した「PHP」「Ruby」といったプログラミング言語の資格が役立ちます。
また、次の資格を取得していると、仕事に生かしやすいでしょう。
- ウェブデザイン技能検定
- Webデザイナー検定
- Webクリエーター能力認定試験
- Photoshopクリエーター能力試験
構築するWebサービスが、どのプログラミング言語を使用しているのかはもちろん、担当する領域に合わせて資格取得をしていくと良いでしょう。
アプリ・ゲーム系
スマホやWebアプリ、アプリゲームの開発に関わるプログラマーは、目的によって、言語やスキルを習得する必要があります。
ゲーム系のプログラミング言語というと「C++」や「C#」が挙げられますが、働く際の選択肢を広げるためには、C言語やJavaを学ぶところから始めましょう。
これは前述した通り、「C++」はC言語を拡張、「C#」はC++とJavaをベースに作られていることはもちろん、C言語やJavaの汎用性が非常に高く需要があるためです。
具体的に構築したい分野が定まっていない人は、C言語やJavaから勉強を始めることで、開発系のプログラミングスキルの基礎を作ることができるでしょう。
SIer系
まず、SIer(エスアイヤー)とは、システムインテグレーターのことで、システム開発を請け負うことを主な業務にしている企業のことを指します。
そのためSIer系の企業で働くプログラマーは、クライアントとなる企業によって開発するシステムやアプリケーションによって、求められるスキルや資格が異なります。
SIer系の企業に就職する際には、企業研究をきちんと行い、その企業が得意としている分野を事前に把握しておくようにすると良いでしょう。
プログラマーのキャリアアップと資格の関係
前半でもお伝えしたように、プログラマーに限らず、ITエンジニアは専門性が高い職種であるため、実務経験がとても重視されます。
しかし、
- 金融系の基幹システムの構築からWebエンジニア
- フロントエンジニアからバックエンドエンジニア
といったように、未経験領域へのキャリアアップや、キャリアチェンジをすることもあるでしょう。
このような未経験領域へキャリアを進める際に役立つのが資格の取得です。
資格の取得はこの記事でもお伝えしてきたように、基本的な知識から身に付けることができ、それを習得していることの証明にもなります。
活躍できるプログラマーになるために
活躍できるプログラマーとは、資格を有する人のことではなく、常に知識や技術を学び、それらを仕事に生かすことができる人のことです。
これは受験勉強に置き換えると分かり易いでしょう。
テストで良い点数を取るためには、参考書を読むだけでは難しいです。受験する学校の出題される頻度や傾向を把握し、繰り返し過去問を解くことで合格率を高めていくことができます。
プログラマーも同様で、知識を身に付けるだけではなく、実際にプログラムを構築することでスキルを磨くことができるのです。
資格取得の学習の際は、試験合格のためだけに学ぶのではなく、開発環境を整え、システムやアプリケーションを作成すると、知識が定着し力を付けていくことができます。
資格習得はゴールではなく、プログラマーとして活躍するための第一歩と捉えておきましょう。
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