就職や転職の際に、Microsoft Office Specialist(MOS)の取得を目指す人が増えています。
Microsoft社のWordやExcelを、業務で使用している企業は多いため、MOSを取得しておけばパソコンスキルの証明にもなるためです。
この記事ではMicrosoft Office Specialistの基本的な情報からメリットまで紹介していきます。これから取得を検討している人、IT系の資格取得をしたい人は、ぜひ役立ててください。
目次
Microsoft Office Specialist の基礎知識
まずは、MOSとはどのような資格試験なのか、概要を把握しておきましょう。
Microsoft Office Specialist とは
MOSとは、Microsoft社が提供する「Word」や「Excel」などの、Microsoft Officeソフトのスキルを証明することができる国際資格です。
正式名称はMicrosoft Office Specialist(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)ですが、頭文字を取って、MOS(モス)という通称で広く知られています。
また、MOS試験は、日本だけでなく世界的な規模で行われています。将来的にどのような職業に就くか決めていない人でも、取得しておいて損はないでしょう。
選べる5つの試験科目
MOS試験では、Microsoft社の5つのOfficeソフトから試験科目を選択することができます。選択できる試験科目は次の通りです。
- Word(ワード):文書作成ソフト
- Excel(エクセル):表計算ソフト
- PowerPoint(パワーポイント):プレゼンテーションソフト
- Access(アクセス):データベース管理ソフト
- Outlook(アウトルック):電子メール、情報管理ソフト
受験する科目に悩んだら、WordやExcelといった需要が高いソフトを選ぶと就職や転職の際にもアピールができるのでおすすめです。特にWordは、大学生でもレポートの作成などで使用する機会があるので、資格の勉強を兼ねて操作方法を習得することもできます。
Officeのバージョンは選択可能
MOS試験は、パソコン上で出題される問題に合わせ、実際に操作をしながら回答します。そのため、実際に操作するOfficeのバージョンを選択することが可能です。選択できるバージョンは次の通りです。
- 365&2019
- 2016
- 2013
どのバージョンを選択するかで悩んだ場合には、最新版である「365&2019」を選択すると良いでしょう。ただし「365&2019」は、Accessはエキスパートのみ、Outlookにはありませんので注意が必要です。
合格すると得られる称号
MOS試験に合格すると、取得した科目やレベル、バージョンに応じて称号が得られます。
・MOS Associate(バージョン:MOS 365&2019)
一般レベル(Excel、Word、PowerPoint、Outlook)の4科目のうち3科目を取得すると得られる称号です。
・MOS Expert(バージョン:MOS 365&2019)
MOS Associate認定および上級レベル(Excel、Word、Access)の3科目のうち2科目を取得すると得られる称号です。
・MOS 2016マスター(バージョン:2016)
必須3科目(Wordエキスパート、Excelエキスパート、PowerPoint)の取得および選択1科目(Access、Outlook)の2科目のうち1科目を取得すると得られる称号です。
・MOS 2013マスター(バージョン:2013)
Wordコース、Excelコース、エキスパートコースの3つのマスターコースのうち、いずれかを取得することで得られる称号です。
Microsoft Office Specialist の資格を活かせる仕事
国内外問わず多くの企業が利用しているofficeソフト。MOSの資格取得により基本的な操作方法を身につけておけば、さまざまな職種でスキルを活かせるでしょう。
ITエンジニア
ITエンジニアと聞くと、専門性が高く、プログラミング言語を駆使するイメージを持たれますが、Excelを頻繁に利用します。例えば、プログラミング言語(ソースコード)を大量に生成やデータの置換、抽出したデータの整形といった作業でも、Excelを使用すると非常に効率的です。
事務職
経理や人事などの事務職では、社内外に使用する文書作成にはWord、データ管理にはExcel、採用活動の資料作成にPowerPointなど、officeソフトを使用する機会がとても多いです。
MOSを取得し、Excelへのデータ入力の際、関数やマクロを自由に扱えるようになっていると、数時間かかる作業も数秒で終わらせられます。
営業職
近頃は、営業職といえどもコミュニケーション能力以外の分野も重要です。例えば、プレゼンをするための資料作成にPowerPoint、契約書の作成にWord、顧客管理にExcelなど、一人で事務作業をしなければならない場合があります。
Microsoft Office Specialist の各科目の出題範囲と難易度
ここではMOS試験の各科目の出題範囲と、それに伴う難易度を解説していきます。
ただし、WordとExcel・Access(365&2019)では、「スペシャリスト」と「エキスパート」の2つのレベルがあるので注意してください。
- スペシャリストレベル:初学者でも合格が目指せる初級レベル
- エキスパート:実務的・効率的なソフトの使用ができる上級レベル
自身が受験する科目の出題範囲を確認し、問題なく操作ができるよう準備をしてから挑みましょう。
Word(ワード)
Wordのスペシャリストレベル、エキスパートレベルは、それぞれ次のような出題範囲となっています。
スペシャリストレベルの出題範囲
- 文書の作成と管理
- 文字、段落、セクションの書式設定
- 表やリストの作成
- 参考資料の作成と管理
- グラフィック要素の挿入と書式設定
エキスパートレベルの出題範囲
- 文書のオプションと設定の管理
- 高度な機能を使用した文書のデザイン
- 高度な機能を使用した参考資料の作成
- ユーザー設定の Word 要素の作成
上記の通り、スペシャリストの出題範囲は基礎的な操作ばかりなので、Wordで簡単な文書を作った経験があれば、難易度は高くないと感じるでしょう。
一方、エキスパートでは基本的な操作に加えてオプション設定やユーザー設定など、普段あまり使用しない機能についても問われます。そのため、Wordにおける全ての機能を熟知しておく必要があり、スペシャリストと比較して難易度は高くなります。
Excel(エクセル)
Excelのスペシャリストレベル、エキスパートレベルは、それぞれ次のような出題範囲となっています。
スペシャリストレベルの出題範囲
- ワークシートやブックの作成と管理
- セルやセル範囲のデータの管理
- テーブルの作成
- 数式や関数を使用した演算の実行
- グラフやオブジェクトの作成
エキスパートレベルの出題範囲
- ブックのオプションと設定の管理
- ユーザー定義のデータ表示形式やレイアウトの適用
- 高度な機能を使用した数式の作成
- 高度な機能を使用したグラフやテーブルの作成
スペシャリストレベルの出題範囲にも関数やテーブル作成が含まれ、身構えてしまうかもしれませんが、問われる内容は基本的なものです。普段からExcelを使っている人にとって、難易度は高いものではありません。
一方、エキスパートの難易度はスペシャリストよりも格段に上がります。基本的な機能の操作に加え、オプション設定のような普段触らない機能や、高度な機能(関数、マクロ作成、ピボットテーブル)を使いこなせるレベルが求められます。
PowerPoint(パワーポイント)
PowerPointのレベルはスペシャリストのみで、出題範囲は以下の通りです。
スペシャリストレベルの出題範囲
- プレゼンテーションの作成と管理
- テキスト、図形、画像の挿入と書式設定
- 表、グラフ、SmartArt、メディアの挿入
- 画面切り替えやアニメーションの適用
- 複数のプレゼンテーションの管理
プレゼンテーション用アプリであるPowerPointは、WordやExcelと操作が似ているところもありますが、一度も操作をしたことがない人は戸惑うこともあるでしょう。
しかし、出題範囲はプレゼン資料の作成に必要な表やグラフ、アニメーションの挿入に関する基本的な操作であり、難易度自体は高くはありません。
Access(アクセス)
Accessのスペシャリストレベル、エキスパートレベルは、それぞれ次のような出題範囲となっています。
スペシャリストレベルの出題範囲(2013、2016)
- データベースの作成と管理
- テーブルの作成
- クエリの作成
- フォームの作成
- レポートの作成
エキスパートレベル(365&2019のみ)
- データベースの管理
- テーブルの作成と変更
- クエリの作成と変更
- レイアウトビューを使ったフォームの変更
- レイアウトビューを使ったレポートの変更
データベースを管理するアプリケーションであるAccessは専門的な知識・操作を問われるので、MOS試験の科目のなかでも全体的に難易度が高いです。
しかし、取得するとデータ管理をする職種では重宝される資格でもあります。未経験から目指す際には、スペシャリストレベルで基礎的な知識やスキルを身につけてから、エキスパートレベルに挑むようにしましょう。
Outlook(アウトルック)
Outlookはスペシャリストレベルのみで、次のような出題範囲となっています。
- 生産性向上に向けたOutlookの環境の管理
- メッセージの管理
- スケジュールの管理
- 連絡先や連絡先グループの管理
出題範囲はメーラーとしての環境やメッセージ、スケジュール管理といった基本的な内容のため、難易度は高くないでしょう。しかし、スマホのメールアプリやフリーメールサービスを主に利用している人の場合、操作に戸惑うことがあるかもしれません。
Microsoft Office Specialist の合格率
前項でも触れましたが、MOS試験のうち、Word・Excel・Accessには「スペシャリスト」と「エキスパート」の2つのレベルが用意されています。
どちらの合格率も正式公開はされていないものの、各パソコンスクールが内部的な情報として計測しており、その合格率はスペシャリストで約80%、エキスパートで約60%と高いです。
また、合格基準点は受験ごとに異なりますが、一般的に700点以上とされているので、過去問を解く際には目安にすると良いでしょう。
Microsoft Office Specialist の試験概要
ここでは、これからMOS試験を受験する人に向けて、受験資格や受験方法について解説をしていきますので、申し込みの際の参考にしてみてください。
受験資格
MOS試験には特に受験資格は設けられておらず、年齢や国籍を問わず受験することが可能です。
ただし、2回目以降の受験の場合には、次のように再受験に関するルールが設けられています。
- 同科目を2回目に受験する際には、前回の受験から1日(24時間)待つ必要がある
- 3回目以降の受験の場合には、前回の受験から2日(48時間)待つ必要がある
ルール違反をすると、取得済の資格取り消しや受験資格を失う可能性があるので注意しましょう。
受験方法
MOS試験の受験方法は「全国一斉試験」と「随時試験」の2つがあり、自分の予定や都合に合わせて選べます。
それぞれについては次の通りです。
全国一斉試験 | 随時試験 | |
---|---|---|
試験実施日時 | 毎月1~2回 | 各試験会場が設定している日程 |
試験会場 | 全国にある一斉試験の会場から選択 | 全国にある約1,700の会場から選択 |
申し込み方法 | インターネット申し込み | 各試験会場に直接申し込み |
また、MOS試験は一般受験者で約10,000~13,000円ですが、学生には学割が適用されるので、一般受験者よりも約2,000円安く受験できます。そのため、学生のうちに取得しておくのもおすすめです。
Microsoft Office Specialist の勉強方法
独学でも取得可能な MOS試験ですが、どうしても時間と労力がかかります。そこでこの項目では、別の方法をいくつか紹介していきます。効率的に学びたい人はぜひ読み進めてください。
スクールで対策講座を受講する
パソコンスクールではMOSの対策講座が開かれています。受講するメリットは次の通りです。
- 仕事や学校と両立して効率よく勉強できる
- 受験科目に合わせて受講できる
- 時間や場所を選ばず勉強できるオンライン講座がある
上記でわかるように、受講生に合わせた授業内容が魅力です。費用は、受講する科目数やオンライン受講または実際のスクールに通うかで価格は変わります。オンライン講座(通信講座)で計30,000円~50,000円、実際のスクールに通う場合においては計50,000円~100,000円(+スクールまでの交通費)が相場でしょう。
また、勉強にかかる時間は、1回90分のクラスが10回あるとすれば、合計15時間です。復習をする時間も含めると、およそ30時間程度で合格を目指せることになります。
学校で体系的に学ぶ
大学・専門学校・短大でもMOSの試験対策を行なっている場合があります。これらの学校で勉強するメリットは次の通りです。
- MOS試験以外の資格対策がある
- 勉強できる環境が整っている
- 他の学問も学べるので見識が広がる
学校に通って学ぶことの最大のメリットは、体系的に勉強することができることです。パソコンスクールの場合、資格取得に特化しているので、短期的に取得を目指せますが、それ以外のことを学ぶためには都度費用がかかります。
一方、学校に通って勉強する場合には、資格対策だけではなく幅広い知識を学ぶことができます。もちろん学費は大学で約450万円、専門学校で約250万円と決して安くはありませんが、無事に卒業できれば学歴も得られます。
また、さまざまな資格支援の制度があることはもちろん、各分野の講師が在籍しているので、意欲があればいくらでも学べるのが魅力です。
Microsoft Office Specialistを取得するメリット
ここでは、MOS試験に合格することで得られるメリットを3つ紹介します。メリットを把握し、勉強時のモチベーションアップにつなげていきましょう。
パソコン・Officeスキルを証明できる
MOS試験に合格すれば、その科目のソフトを「問題なく操作できる」「試験に合格するだけの知識やスキルを有している」ことを客観的に証明できます。
自分がどのレベルのスキルを有しているのか、ある程度認識しておけるのもメリットでしょう。目標に到達できれば、自信につなげることもできます。
就職・転職が有利になる
履歴書の資格取得欄に記載できるのはもちろん、採用面接の場でアピールすることができます。
特に、実務経験のない学生や、デスクワークが不要だった職種から転職活動をする人にとって、「Officeソフトを問題なく操作できる」ことを証明できるのは、内定獲得に有利に働きます。
世界的に通用する国際資格に挑戦できる
世界的企業であるマイクロソフト社によるMOS試験は、日本に限らず世界中で試験が行われている国際資格です。その評価は日本国内に限らず世界中で通用します。
ちなみに、年一回、高校生以上の学生を対象に「MOS世界学生大会」が開催されています。世界的規模のパソコン大会なので、学生のうちに挑戦するのも面白いでしょう。
おわりに
Microsoft Office Specialistは、他のIT系の資格と比較して取得しやすく、多くの企業で使用されているofficeソフトのスキルや知識を習得できる資格です。
5つのうちどの科目を受験するか悩んでいる人は、まずはWordやExcelから受験してみましょう。最初はスペシャリストレベルでコツを掴み、自信がついたら上位レベルのエキスパートレベルにチャレンジしてはいかがでしょうか。
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