国際バカロレア(IB)とは?気になるグローバル教育に関する日本の現状と取り組み、今後の課題

工学教育

今後、大学受験を迎える皆さんは、2020年に予定されている大学入試センター試験の改革に関心をお持ちのことと思います。学習塾などでは、小学生向けの保護者会でも毎回話題になっており、筆者も関心の高さを肌で感じているところです。

そして、もうひとつ「国際バカロレア(International Baccalaureate 略してIB)」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃることと思います。国際バカロレアは、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」の中で、「2018年までに国際バカロレア認定校等(ディプロマ・プログラム)を200校に増加させる」という目標が明記されたことで、日本でも注目され始めました。一方で、よく分からないという声も耳にしますので、今回は国際バカロレアについて徹底解剖します。

国際バカロレア(IB)とは

国際バカロレアとは、高校生向けに平たく言えば、国際的に通用する成績証明書です。1968年に国際機関が多く集まるスイスのジュネーブで生まれた国際バカロレア機構が提供しています。

国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)は、1968年、チャレンジに満ちた総合的な教育プログラムとして、世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、生徒に対し、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置。現在、認定校に対する共通カリキュラムの作成や、世界共通の国際バカロレア試験、国際バカロレア資格の授与等を実施。

(文部科学省のサイトより)

http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/1307998.htm

また、国際バカロレアの使命は以下のとおりです。

国際バカロレア(IB)は、多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的としています。この目的のため、IBは、学校や政府、国際機関と協力しながら、チャレンジに満ちた国際教育プログラムと厳格な評価の仕組みの開発に取り組んでいます。IBのプログラムは、世界各地で学ぶ児童生徒に、人がもつ違いを違いとして理解し、自分と異なる考えの人々にもそれぞれの正しさがあり得ると認めることのできる人として、積極的に、そして共感する心をもって生涯にわたって学び続けるよう働きかけています。

(文部科学省のサイトより)

http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/1353422.htm

国際バカロレアのプログラムは小学生から高校生まで年齢に応じて提供されており、「プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)」「ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)」「ディプロマ・プログラム(DP)」「キャリア関連プログラム(CP)」の4種類あります。このうち、日本で最も注目されているのがDP。16歳~19歳を対象とし、所定のカリキュラムを2年間履修した上で、最終試験で所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格「国際バカロレア資格(IBディプロマ)」を取得できます。

DPは1969年に設置され、2015年の受験者数は75,919人、資格取得者61,826人でした。ちなみに同年の日本人の受験者数は761人、資格取得者は701人です。

海外における国際バカロレア(IB)

国際バカロレアの認定を受けている学校は、平成29月1日現在、世界140以上の国・地域において4,846校あります。

国際バカロレア資格は、世界の多くの国々の大学で、正規の入学資格もしくは受験資格として受け入れられています。大学によっては、スコアが何点以上といった基準を示すことで、欲しい学生を明確化するのにも活用しています。

国際バカロレア資格は既に40年以上、大学入学資格として活用されており、国際バカロレアの教育を受けた学生のパフォーマンスの高さも評価されています。大学によっては、国際バカロレア資格の上級レベル科目(HL)で一定の成績を収めた学生は、当該科目に相当する一部科目において、入学後に単位認定しているケースもあります。

日本における国際バカロレア(IB)

現在、日本で教育プログラムが提供されているのは、PYP、MYP、DPの3種類です。以前は、国際バカロレアが認めている言語が、英語、フランス語、スペイン語のみだったことから、日本での導入には大きな壁がありました。それが政府の働きかけにより、2013年にDPの一部科目の授業と試験・評価が日本語で実施できるようになり、2016年度の高校2年生から「日本語と英語によるデュアルランゲージ・ディプロマ・プログラム(日本語DP)」の授業が開始されました。

現在、日本では北海道から沖縄まで46校が認定されています。このうち学校教育法第1条に規定されている学校(1条校)、いわゆる日本の卒業資格が取得できる一般的な学校は20校。残りの26校はインターナショナルスクールです。日本語DP実施校は9校(1条校:8校)。具体的な学校名については、文部科学省のページをご覧ください。

  • 国際バカロレアの認定校:文部科学省

http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/1356266.htm

日本の大学において国際バカロレアのスコア等を活用した入試の実施状況が文部科学省の調査により公開されています(平成29年10月現在)。東京大学、筑波大学、慶応大学などで取り入れられており、こちらの資料によると、国立大学が17校、公立大学が6校、私立大学が31校、合計54校です。そして全学部で実施しているのが31校、残りは一部の学部で活用されています。

  • 国際バカロレアを活用した大学入試(例):文部科学省

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/13/1353392_4.pdf

国際バカロレア(IB)の教育プログラムを受けるメリット

国際バカロレアの教育プログラムは、国際的な視野を持った人材を育成することを目的としています。得られる主なメリットは、次の3点です。

海外の大学に進学しやすくなる

前述した通り「国際バカロレア資格(IBディプロマ)」は、世界各国の多くの大学で正規の入学資格や受験資格として認められています。このため海外の大学への進学を考えている方にとっては、1条校に進学することで、日本の高校卒業資格と国際バカロレアの両方が取得でき、有利に事を運べるでしょう。もちろん試験で満点に近いハイスコアを獲得するに越したことはありません。

グローバルに活躍するための力を身に付けられる

国際バカロレアというと、どうしても大学入試と結びつけがちですが、国際バカロレアの教育プログラムを受けることで、グローバルに活躍するための力が身に付きます。クローバルと言っても、英語がネイティブ並みであることが重視されているわけではありません。国際バカロレア機構は、小中学校では母語による授業を推奨しています。国際バカロレアの教育プログラムが目指しているのは、「人類に共通する人間らしさと地球を共に守る責任を認識し、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する人間の育成」です。

日本の受験勉強はどちらかというと知識を増やすことに注力されていますが、国際バカロレアの教育では教科の枠を超え、グループ・ディスカッションなどを行い、思考力やコミュニケーション能力を鍛えます。下調べをしたうえで、常に自分はどう考えるのかといった見解を示さなくてはいけません。また社会奉仕活動も必須です。その勉強は、非常にハードであり、忍耐力や精神力も必要になってきます。

国際バカロレア(IB)卒業生の事例

一般社団法人 世界で生きる教育推進支援財団のサイトにIB卒業生の声として、東京大学に進学された学生の声が紹介されています。

  • 国際バカロレア卒業生の声

https://www.sekaideikiru.com/ib-cwvt

イギリスでMYPとDPを学び、国際バカロレアバイリンガル資格および国際バカロレア資格45点満点を取得。学生生活は、「毎日やるべきことのリストが手元になければ的確に課題を把握できないくらいの課題と期日の量があった」そうです。勉強と生徒会副会長としての仕事、行事の出し物やボランティア活動、サマーコースなどの課外活動を両立させることで、短期的、長期的な計画を立てる力が養うよい機会となったと言います。記事では勉強の記録などが写真とともに紹介されていますので、生の声を知りたい方の参考になるでしょう。

また、朝日新聞が運営する「GLOBE+」には、国立大学として、最も早く、国際バカロレア資格と書類審査のみ(学部によっては面接試験もある)の入試を取り入れた岡山大学の事例が取り上げられています。大学としての取り組みなども紹介されていますので、あわせてご覧いただくと理解が深まると思います。

  • 国立大初のバカロレア入試は岡山大学 狙いは「コミュニケーション力」

https://globe.asahi.com/article/11646383

今後の課題

2017年5月に発表された「国際バカロレアを中心としたグローバル人材育成を考える有識者会議 中間取りまとめ」では、推進に向けた考え方や基本的案施策、教員確保、大学に関することなど、主に6つの視点から課題が挙げられています。

  • 国際バカロレアを中心としたグローバル人材育成を考える有識者会議 中間取りまとめ

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/05/26/1385712_001_1.pdf

その中でも、今後さらなる拡大のためには、教員の確保が欠かせないでしょう。国際バカロレアの教育は、教えるための免許があるわけではありませんが、今後は大学等におけるIB教員養成コースの普及や指導法の開発といったことが検討されています。

日本での国際バカロレアの取り組みは始まったばかりです。いつの日か当たり前に日本でバカロレアの教育プログラムが受けられる日がくるかもしれませんね。

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