消防設備士とはどのような資格?仕事の内容や将来性、資格を取得するメリットについて解説します

建築・まちづくり・エネルギー

消防設備士とは、消火設備や警報設備などの点検整備ができるようになる国家資格です。1965年の消防法改正によって制定されました。この記事では消防設備士の資格内容や資格を持っていることのメリット、資格取得の方法ついて詳しく解説していきます。

消防設備士の知っておきたい基本情報

はじめに、消防設備士の資格について知ってもらうために、基本的な情報から解説します。どのような資格なのかしっかり理解しておきましょう。

そもそも消防設備士とは

人が多く集まる建築物は、ひとたび火災が発生すると甚大な被害が生じます。そのため、一定以上の規模を有するホテル・デパート・劇場などには、消防用設備や警報設備の設置や点検が義務付けられています。これらの業務は、資格を有する消防設備士、消防設備点検資格者が行わなければなりません。

つまり消防設備士の資格があれば、点検整備あるいは設置工事の独占業務に携わることができるのです。

消防設備士の資格には「甲種」6種類、「乙種」が7種類の資格区分に分けられており、消防設備士ができる業務は取得した資格区分によって異なります。資格区分についての詳細は後述します。

消防設備士を活かせる就職先

消防設備士の資格を取得していると、工場や倉庫・消防設備の専門会社・防災関係会社への就職が期待できるでしょう。ほかにも、ビルメンテナンス業務や電気設備業務を担っている会社、あるいは不動産会社へ就職する場合もあります。ただし、不動産会社ではビルメンテナンス業務の担当として雇われることが多いようです。

消防設備士の業務は独占業務なので需要が大きく、未経験者でも優遇されることが少なくありません。また、現場職ではあるものの危険な作業が少ないので、近ごろは女性の有資格者を率先して採用する企業が増えています。

消防設備士の資格を取得するメリット

資格を取得するとさまざまなメリットが期待できます。以下では、消防設備士の資格取得で得られる代表的な2点のメリットについてみていきましょう。

多様な施設・設備において需要がある

消防設備士は、活躍できる仕事の現場が多いというメリットがあります。消防法によって、一般の居住用住宅を除くほとんどの建築物に、消防設備の定期的な点検とメンテナンスを義務付けているからです。

さらに、市町村長の指定する山林、延長50mを超えるアーケード、あるいは総務省令で定める船や車といった建物以外の施設や設備も防火対象としています。このような理由から、消防設備士は多種な施設で仕事ができるだけでなく、その需要も高いです。

有資格者でなければできない業務がある

一般の仕事では、社会変化によって仕事が失われる場合があります。例えば、IT技術の発展によって現在の仕事を人工知能(AI)に奪われたり、業務の流行り廃りで業界自体がなくなったりすることも考えられます。

一方で、消防設備士は業務独占資格です。法律によって定められた業務については、資格を有していなければ携われません。国家資格のため社会的信用度が高いことからも、消防設備士の仕事がなくなる可能性は極めて低いといえます。

消防設備士資格の詳細

消防設備士資格に挑戦してみようと考えたときに、合格率や試験区分など、気になる事があるでしょう。ここからは消防設備士資格に関する具体的な情報やデータをみていきます。

乙種と甲種の違い

消防設備士には「乙種」と、その上位資格である「甲種」の分類があり、それぞれできる業務に違いがあります。

乙種は消防設備などの整備と点検のみができる資格です。対して甲種は、整備と点検にくわえて工事ができます。

なお、上位資格である甲種には「特類」と呼ばれる資格区分があります。特類は他の資格分類では取り扱っていない、特殊消防用設備の点検や工事をするための資格です。

分類による取り扱いが可能な設備

消防設備士の資格は、乙種は1類から7類、甲種は1類から5類と前述した特類に分かれています。それぞれの資格分類で取り扱いが可能な消防用設備は以下のとおりです。

なお、乙種には工事の必要がない6類と7類が存在しています。

  • 特類(甲種のみ):特殊消防用設備等
  • 1類:屋内消火栓設備・屋外消火栓設備・スプリンクラー設備・水噴霧消火設備
  • 2類:泡消火設備
  • 3類:不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備
  • 4類:自動火災報知設備・消防機関へ通報する火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備
  • 5類:金属製避難はしご・救助袋・緩降機
  • 6類(乙種のみ):消火器
  • 7類(乙種のみ):漏電火災報知器

消防設備士の受験資格

受験資格は乙種と甲種で異なります。乙種は受験要件がなく誰もが受けられる試験です。一方で甲種の受験資格は、国家資格の取得、現場での実務経験、学歴(一定の学科や課程を修了した者)といった制限があります。

例えば、大学・専門職大学・短期大学・高等専門学校(5年制)および専修学校等で「機械・電気・工業化学・土木又は建築」に関する授業科目の単位を15単位以上修得しているなら、甲種の受験が可能です。

すでに大学・短期大学・高等専門学校(5年制)を卒業している方なら、「機械・電気・工業化学・土木又は建築」に関する学科や課程をそれぞれの学校で修めていれば、受験資格が認められます。

なお、甲種特類の受験申請には、甲種の4類と5類の資格、さらに甲種1類から3類のいずれか1つ、合わせて3種類以上の甲種資格が必要です。詳しくは以下の公式サイトで確認してください。

参考:一般財団法人消防試験研究センター

消防設備士試験の出題範囲

消防設備士試験は筆記試験と実技試験に分かれています。筆記試験は四肢択一式のマークシート方式です。実技試験は、機器の識別などをする鑑別等と製図があり、それぞれ写真・イラスト・図面等を利用した記述式で出題されます。

甲種と乙種の試験範囲は類似していますが、乙種では工事に関することが出題されません。また、出題範囲ごとに設定された問題数が異なります。

甲種1類から5類の筆記試験は消防関係法令、基礎的知識、構造・機能及び工事・整備です。実技試験では鑑別等と製図が出題されます。甲種特類は工事設備対象設備等の構造・機能・工事・設備、火災及び防火、消防関係法令が問われ、実技試験はありません。

乙種は1類から7類まで出題範囲が同じです。筆記試験では消防関係法令、基礎的知識、構造・機能・整備が問われ、実技試験では製図のみが出題されます。なお、消防設備士のほか、電気工事士・電気主任技術者・技術士などの有資格者は、申請すれば試験科目が一部免除となる場合があります。

消防設備士試験の合格基準

合格基準は、試験の全出題数の6割以上の成績をとることです。ただし、足切りの基準も設定されており、1科目でも出題数の4割の正答数が得られなかったときは合格できません。

試験を一部免除されている場合には、免除されている部分以外で、合格基準を満たさなければなりません。また甲種特類以外では、以上の合格基準にくわえて、実技試験で6割以上の成績をとる必要があります。

消防設備士試験の申し込み方法

受験申請は書面申請と電子申請で受け付けています。書面申請の場合は、一般財団法人消防試験研究センターの各道府県支部(東京都では中央試験センター)に、必要書類・願書・試験料の振替払込受付証明書を一緒に送付します。電子申請は公式ホームページで受け付けています。

なお、試験は住所や勤務地にかかわらず希望する都道府県で受験可能です。合格発表は郵送で送られてくる試験結果通知書、および各支部の窓口や公式ホームページで行われます。

消防設備士資格の難易度と合格率

一般財団法人消防試験研究センターが公開している「試験実施状況」をみると、乙種の消防設備士資格試験の合格率は、2019年度は35.4%、2020年度で39.9%、2021年度では42.3%となっています。

甲種では、2019年度で32.2%、2020年度が36.5%、2021年度は39.4%です。甲種特類は、2019年度が21.3%、2020年度は28.0%、2021年度では32.1%です。消防設備士の試験の合格率が、甲種特類・甲種・乙種の順で高くなっていることがわかります。甲種試験は乙種と比べて試験範囲が広いため、難易度がどうしても高くなる傾向にあります。

消防設備士資格取得後の注意点

消防設備士の資格を取得した者は、定期的に都道府県知事が行う講習を受ける必要があります。

1回目の講習は、免状交付を受けた日以後で最初の4月1日から2年の間です。その後は、受講した講習以降で、最初の4月1日から5年以内に講習を受けなければなりません。

講習の内容は消防用設備等の工事または整備に関する事柄で、講習区分は取得した資格分類に応じて4つに分かれています。

消防設備士と関連する資格

消防設備士と並行して取得しておくと役立つ資格には、電気工事士・防災管理点検資格者・危険物取扱者資格などがあります。

電気工事士は、電気工事の作業に従事するための専門知識や技能に関する国家資格で、電気工事が多い消防設備関連の仕事と相性がよいでしょう。防災管理点検資格は、法律によって定められた大規模建造物の防災管理点検ができるようになる資格です。危険物取扱者資格は、火災や爆発などを起こすおそれがある危険物を、一定量以上取り扱う際に必要な資格です。

これらを取得していれば、点検できるものの種類が広がるため仕事の間口が広がります。

消防設備士資格でおすすめの分類

初めて消防設備士資格に挑むなら、受験資格に制限がない乙種の6類と4類がおすすめです。

乙種6類は消火器に関わる資格分類です。消火器は設置数が非常に多いため、この資格でできる点検の仕事も多くあります。乙種を受験する方のおよそ3割はこの資格区分の受験者です。

乙種4類は乙種6類と同じく仕事が多い資格区分として知られています。特にビルメンテナンスの仕事では、自動火災報知設備の点検や整備が欠かせないため、非常に需要が高いです。これらの資格を持っていれば就職活動が有利になるかもしれません。

消防設備士を取得する方法

消防設備士の甲種資格を得るには、受験資格の要件を整える必要があります。この項では代表的な受験資格を得る方法として、学校で学ぶ方法と実務経験を積む方法について解説します。

大学・短大・専門学校で学ぶ

学習課程や学科によって学べる内容に違いはあるものの、学校で学ぶと体系的な知識が身につきやすいというメリットがあります。独学で学習できないわけではありませんが、個人で受験レベルまで知識を得るのは容易ではありません。

また、試験範囲にある「機械・電気・工業化学・土木又は建築」に関する知識を取り扱っている大学・短大・専門学校で学べば、必要な知識を学ぶと同時に受験資格が得られます。特に、技術者向けの学科や講座を開設している学校は、資格取得をサポートしていることが多いので、より合格までのハードルが下がります。

参考:久留米工業大学の資格取得支援

学校卒業後に実務経験を積む

仮に、学歴や必要な学習課程を修了していなくても、消防設備士甲種の受験は可能です。しかし、そのためには実務経験を積まなければなりません。消防設備士乙種に合格している場合には2年以上の実務経験が必要です。保持している資格がない場合は、消防用設備などの工事補助者として実務経験を5年以上積むことで受験資格が得られます。

また、学校卒業後に消防機関や市町村役場等の行政機関の職員として働いているなら、消防用設備等に関する事務を3年以上務めることで受験要件を満たします。

消防設備士の年収と将来性

取得した資格分類によっても異なりますが、2021年の時点での消防設備士の年収は約400万円から500万円です。消防設備士の資格は、資格区分を多く取得するほど従事できる業務が増えるため、さらなる年収のアップも期待できるでしょう。また、業務に応じて消防設備士に関連する資格を取得することで、キャリアアップも望めます。

また、近ごろでは多発する自然災害によって、建物や施設の防災設備が注目を集めるようになりました。それに比例して消防設備士の需要も高まりを見せています。求められる施設の増加により将来性も見込める資格といえるでしょう。

消防設備士は取得の努力に見合う資格です

消防設備士は、消防設備の点検や設備工事において必要とされる国家資格です。資格を取得して消防設備士として働くには、相応の努力が欠かせません。消防設備士はその努力に見合うだけの将来性があるだけでなく、人の安全を守れる、やりがいのある仕事です。今後、社会で活躍する場を探すのなら、資格取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

消防設備士の資格取得を応援している学科

  • 資料請求はこちら
  • 受験生対象 久留米工業大学 LINE@ 受験情報を発信!

  • 受験生対象 久留米工業大学 LINE@ 受験情報を発信!
  • 資料請求はこちら

最新の記事


よく読まれているページ