工学部で学ぶ数学の内容は?数学を生かして活躍できる工学の分野や勉強法までご紹介

工学教育

進路を考える中で、自分の得意分野や興味のあることを生かせる学部を目指すのはよい選択です。

例えば「数学が好き」「数学が得意だ」という人は、理系や工学系の大学への進学を選択肢に含めるかもしれません。

こちらでは、工学においての数学の意味や、工学部で実際にどのような数学を学ぶのか、工学で学ぶ数学を生かせる仕事について紹介していきます。

工学でなぜ数学を学ぶの?数学の必要性とは

工学で数学を学ぶ理由は、工学を突き詰めていくうえで、数学がその正しさを証明したり、論理的に間違っていないことを証明したりするのに役立つからです。

工学では数学を「道具」として用いることが多いので、数学の知識を得て使い方をマスターすると、工学での学びや習熟をアシストしてくれます。

道具は簡単に使いこなせるものもあれば、使い方をマスターするのに時間を要するものもあります。難解な数学の知識は後者に当たるといえるでしょう。

工学を追求し研究を進めるうえで、難しい数式を理解し、使いこなせるようになることがポイントになるので、工学部では数学教育に力を入れています。

工学部で学ぶ数学は難しい?気になる難易度

工学部で学ぶ数学の難易度ですが、「高校の数学をステップアップしたもの」とイメージしてください。

そのため、もともと数学が苦手な方や、学年が上がるごとに数学の授業についていけなくなっている方は、工学部で学ぶ数学に難しさを感じるようです。

どこまで難易度の高い数学を学ぶ必要があるかは、専攻する分野により異なります。工学部では、研究に必要な計算や応用に役立つ数学を中心に学んでいきます。

工学・数学・科学の違い

混同しがちな工学・数学・科学の3つの分野には、どのような違いがあるのでしょうか。実はこれらの学問は互いに密接に関わっています。

まず工学は、人の生活を便利にしたり、豊かさを実現したりするための技術を学ぶ学問です。

数学や科学を応用し、何らかの形で「実用化する」ことを念頭において学びます。その結果、よりよい研究や製品作りなどが可能になります。

一方、数学は数や量、図形などに関する学問で、基本的なルールを作成したうえで、そのルールから事実を導き出していきます。論理的で緻密さが要求されますが、必ずしも現実の社会につながる必要はありません。

科学は自然を探求する学問です。現実の社会がどのように成り立っているかを研究するのも科学の一面といえます。論理ではなく、実験結果が科学における証明手段となるのが数学との違いです。

つまり、数学や科学は論理や実験によって証明されるルールや実態ですが、工学によって実用化されることにより、私たちの生活にとって意味あるものとなります。

工学部で学ぶ主な数学の分野一覧

では、実際に工学部ではどんな数学を学ぶのでしょうか。こちらでは、それぞれの数学の分野を何のために学ぶのかに加え、工学部とのかかわりや実用化されている分野を交えながら説明していきます。

微分積分学

微分積分は工学部の共通語ともいえる存在です。工学では、問題を論理的に分析するために何らかの数式を用いて表す「モデル化」を行って明らかにします。

モデル化に欠かせないのが微分積分学です。微分積分学の考え方は、物事の変化や積み重ねを表すのに適しています。

一例として、関数を多項式の形に変換する「テイラー展開」を使うと、論理と現実とのバランスを考えるうえで役立ちます。

線形代数学

線形代数学は微分積分よりも新しい学問といえますが、情報やコンピュータの応用と発展には欠かせないため、工学部で学ぶべき数学に含まれています。

線形代数学が利用されているものとして、検索エンジンを用いたときの結果のランキングは有名です。

単にそのページにキーワードがどれほど含まれているかだけでなく、ページ同士のリンクなどで重要度や関連性を数値化できるのは、線形代数学を利用しているからです。

統計学

統計学は工業製品の利用調査や、製品の特性を測定・計測して品質をチェックするのに用いられているため、学ぶ必要性がある学問といえます。

近年、工学分野で注目されているデータサイエンスは、統計学や情報工学の手法を使い、有意義なデータを引き出すのに役立っています。

実際、データサイエンスが大学の学部や学科として設置されていることを考えると、統計学を学ぶ必要性を理解できるでしょう。

行列

2012年度から数学Cという科目が廃止され、高校時代に行列について学ぶ機会がなくなりましたが、工学のほか、物理や経済学などの分野でも欠かせない数学として認識されています。

行列は、理工系の幅広い分野にわたって必須となる線形代数学と切っても切れない関係にあります。

行列は機械工学の分野で頻繁に登場しますが、IT分野のアルゴリズムやAIに関係する機械学習、ディープラーニングなどへの活用を意識した学びも期待できます。

ベクトル解析

ベクトル解析は、電磁波や流体など、空間に広がって時間の経過により変化するものの分析に欠かせない学問です。

電磁気学では必ずと言っていいほどベクトル解析が登場します。工学部では、電磁気学や流体力学などの計算を行う過程でベクトルの応用方法を身につけていきます。

電磁気学や流体力学では偏微分方程式を多用しますが、多変数の微分積分はベクトル解析により明らかにできます。

常微分方程式・複素関数論・フーリエ解

現実をモデル化して分析できる微分方程式の内、常微分方程式は力学や制御理論、回路理論などに利用されるため、習得に力を入れたいものです。

複素関数論は電気や磁気に応用されることが多く、学ぶ必要がある分野といえるでしょう。

フーリエ解析は信号理論や通信理論を学ぶうえで基礎となるもので、アナログとデジタルでの変換を考える際の基本です。

工学部では、理論だけでなく応用を視野に入れて学んでいきます。

ラプラス変換

ラプラス変換は、制御工学の計算に欠かせないものとなっています。

ラプラス変換の公式は積分が含まれるため計算が複雑になりますが、ラプラス変換の計算手順を学び、代数計算と変換公式を適用すると、ある種の常微分方程式を変数だけを使って解くことができます。

工学部では、電気回路や制御工学などでの利用を念頭に置き、ラプラス変換を使って計算する方法を学びます。

数理工学

数理工学は、世の中で起きる現象を数理モデルとしてとらえ、数学や物理を使い論理的な解釈を付す学問です。

古典的な数学手法では説明できなかった現象を新しい考え方を使って解決に導くことができるので、工学に限らず抽象的な現象の解明にも使われています。

数理工学は大学の研究分野の中にも組み込まれ、実用を視野に入れた取り組みが始まっています。

その一例が、久留米工業大学の「地域課題解決AI教育プログラム」です。地域創生に携わる中核となる人材の教育に効果的であるとして、文部科学省に認定されています。

久留米工業大学「地域課題解決AI教育プログラム」

工学の分野で数学を生かして活躍できる仕事

工学分野で学ぶ数学は多岐にわたりますが、学んだ数学を活用してどのような分野で仕事ができるのでしょうか。

こちらでは、工学部で学ぶ数学を生かして活躍できる仕事の例をご紹介します。

数学の教員

一つは数学の教員です。工学部で数学を学ぶと、数学の持つ力や魅力を感じられるはずです。

数学が実生活に役立つことを実感し、それを人に伝えたいという思いがある人や、教えるのが好きな人は数学の教員に向いているといえるでしょう。

数学の教員を選択肢に入れたい方は、工学部であっても教員免許が取れるカリキュラムがある大学に進むのがおすすめです。

数学の免許を取得できる学科

エネルギーシステム分野

工学部出身者は、電力やガス、石油や地熱などのエネルギーシステム分野に携わる企業や国の機関、自治体などに就職することもできます。

エネルギー業界では工学部の出身者が技術職や研究職に就くことが多く、資源にかかわる研究や開発、保守やメンテナンスの仕事を任されるようです。

エネルギーシステム分野では、限りある資源エネルギーを効率よく利用することが喫緊の課題となっていますが、問題に立ち向かう上で学んだ数学は力になります。

例えば、微分積分といった工学部で学ぶ基本を使うと、効率よくエネルギーを変換させる最適値を算出するのに役立ちます。

情報ネットワーク分野

情報通信やネットワーク分野の企業に就職する工学部出身者は多くいます。

特に情報工学を専攻していると、プログラミングを必然的に学ぶことになり、数理的な理論やネットワークに加え、ソフト・ハードなど幅広い分野の知識が身に付きます。プログラミングを学ぶ過程で英語力もアップするでしょう。

IT業界では、プログラマや上流工程を担うシステムエンジニアなど、技術屋としての活躍が期待されるに違いありません。

画像処理に応用される線形代数学や、アナログとデジタルの変換や通信理論にかかわるフーリエ解析は、仕事の習熟度を上げるのに役立つでしょう。

工学における数学の勉強法とは

高校と大学では数学の学び方が違うという声を多く聞きます。実際、同じ数学であっても、高校と大学では学び方のアプローチがかなり違っています。

こちらでは、工学部でどのように数学を勉強していくとよいかを解説します。

基礎をおさらいする

工学部での数学のカリキュラムは、論理の習得に当たる講義と、計算練習となる演習の2本の柱で成り立っています。

このうち講義では数学の理論を一つ一つ習得し、使いこなすことが目的となります。講義で学んだことは演習のためのベースとなるので、定義などを理解し反復して覚える必要がありますが、数学の基礎がないと積み上げは難しいでしょう。

もし、高校レベルの数学が身についていないと感じる分野がある場合は、基礎からのやりなおしが求められます。

参考書やテキストを読みこむ

数学の論理を習得しないと応用して使うことはできないので、定義や定理を覚えることを重視して勉強する必要があります。

学ぶ段階では意味が分からなかったとしても、定義をしっかり覚えてから演習に取り組むと、流れや関連性が理解できるようになります。

参考書やテキストなどを使って学んだり、わからないことは図書館で調べたりすると知識の習得や理解が進みます。

学んだことをアウトプットする

インプットに加えてアウトプットを重視すると、学んだことを定着させたり理解を深めたりする助けになります。

アウトプットは計算問題などを解くという方法もありますが、他の人に説明するのもおすすめです。

例えば、同級生や後輩などに学んだ数学の問題を解説してみます。理解した内容を自分の言葉で語ることになるので、理解度が飛躍的にアップするに違いありません。

工学で学ぶ数学と将来の展望

工学は、数学や科学などの応用を極める学問です。私たちの生活に欠かせない製品づくりやサービスの基本となっている数学やその使い方を学べるのが魅力といえます。

工学部で学ぶ数学のレベルは高校よりも高くなりますが、学んだことは将来の仕事に役立つはずです。

エネルギーシステムや情報ネットワークといった、最先端かつ重要な分野に携わることもできるでしょう。

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