コンパクトシティとは?新しい街づくりの事例から見るコンパクトシティのメリット

建築・まちづくり・エネルギー

ドーナツ化現象という言葉をご存知でしょうか?これは都市の中心部に住む人が減り、反対に郊外に住む人が増える様子を表した言葉です。

詳しくは後述しますが、ドーナツ化現象をこのまま放置していては取り返しのつかない問題を引き起こします。これを解決する手段として「コンパクトシティ」という考え方が注目されるようになりました。

今回はコンパクトシティとは何か、注目される理由やメリット・デメリットなどについてご紹介します。

コンパクトシティとは?

ご存知の通りコンパクトとは「小さくまとまった」という意味。この言葉からも分かるように、コンパクトシティは郊外に居住地域が広がるのを抑え、できるだけ生活圏を小さくした街を意味します。

なぜコンパクトシティが必要なのか?

まずはドーナツ化現象が引き起こす問題について押さえておきましょう。この問題には日本が抱えている大きな社会問題の1つ、少子高齢化が関わってきます。

少子高齢化の問題点はさまざまですが、その中の1つに「働く世代が減り、支えるべき高齢者が増える」ということが挙げられます。ドーナツ化現象が問題になっているのもまさにここ。

また、この過程の中で行政などの計画的な都市建設がなく、開発業者などによる無秩序な開発が行われると、郊外に虫食い状に宅地が点在するスプロール化が起こります。

スプロール化が起こると、画的な街路が形成されず道路、上下水道、学校や病院等のインフラ整備が立ち遅れて、広範囲にわたって都市機能が低下します。

では、実際に地方自治体の立場になって考えてみましょう。

働く世代が減れば地方自治体の税収が減ります。さらに高齢者が増えれば福祉や介護といったサービスを提供するため、出ていくお金が増えます。収入が減り出費が減ると、当然手元に残るお金は少なくなりますよね。お金がなくなればいろいろと立ち行かなくなってしまうのは家庭も地方自治体も同じ。財政破綻に追い込まれる街だって出てくるかもしれません。

ここに追い打ちをかけるのがドーナツ化現象です。人口が広く分散しているせいでまとまった税収を得ることが難しくなり、行政のサービスを行き渡らせることも大変になります。それなら人口がある程度集中していれば問題は改善するのではないか?というのがコンパクトシティに注目が集まる理由です。

コンパクトシティのメリット

行政のサービスが充実する

コンパクトシティの実現が成功すれば税収は安定し、サービスを行き渡らせるための費用も少なくて済みます。自治体に余裕が生まれることで私たちが恩恵を受けることもあるでしょう。例えば子育ての支援が受けられたり公共施設が充実したりといったことが考えられますし、もしかすると住民税が安くなることもあるかもしれません。

経済が活性化する

人々の住む場所が小さくなれば、公共の施設やデパートなどの施設もある程度集中することになります。施設同士のアクセスが簡単になれば、どこかの施設に寄った際、ついでに他の場所にも寄っていこうと考えやすくなりますよね。こうしてお金を使う人が増えれば企業は儲かり、結果として地元の経済が活性化することにつながります。

環境問題を改善できる

現在郊外に住んでいる人にとって車は必要不可欠なものです。買い物をするにも通勤をするにも車がないと話にならないという地域は珍しくありません。しかし人々が都市中央部に住むようになれば、車を持っていなくても公共交通機関で事足ります。公共交通機関を利用する人が増えれば本数や路線も増えていき、より便利で使いやすくなっていくでしょう。その結果、車を使う人が減り、街全体で排出される排気ガスが少なくなるものと考えられます。

コンパクトシティのデメリット

良いことだらけに見えるコンパクトシティですがデメリットもあります。具体的にどのようなデメリットがあるのかも押さえておきましょう。

居住地域が制限される

コンパクトシティを実現させるためには、郊外にいる人に都市中心部へ移ってもらう必要があります。しかしそれは現在郊外で暮らしている人の生活スタイルを変えるものです。いきなり移動してくれといわれても賛成できない人は多いでしょう。

近隣とのトラブル

人口密度が高くなると近隣の人との距離も近くなります。騒音などのトラブルや、日当たりの問題も出てくるでしょう。このようなトラブルを防ぐためにどうするかという点も十分議論しなければいけません。

郊外から中心部には移動しにくい

もともと郊外に住んでいる人がそこに住んでいる理由の多くは「都市中心部の地価が高いから」です。コンパクトシティになれば都市中心部の地価はますます高まり、経済的に余裕のない人が中心部に移動することはさらに難しくなるでしょう。

日本でのコンパクトシティ事例

富山県富山市

富山市では以前、絵に描いたようなドーナツ化現象が起きていました。通勤する人のほとんどがマイカーを使っており、公共交通機関がかなり衰退していたのです。まさに車がないとやっていけない、という環境です。

このままではダメだとして打ち出した対策が街を「串と団子」の構造にすること。日常生活を営む生活圏を団子、それらをつなぐ公共交通機関を串にたとえています。

まずは廃線になる予定だったJR線を利用して路面電車を作りました。これにより車がなくても生活できる環境が整えられ、公共交通機関の利用者数は次第に増えていきます。続いてバスの路線を充実させるなどの改善も続けていき、自動車を利用する人の数が減っていきました。実際富山市はCO2排出量が減ったことで環境モデル都市にも指定されています。

大分県大分市

大分市では駅ビルをオープンしたことで中心部が活気づきました。さらに複合商業施設をオープンするなどしたことで周辺の市町村からも人が集まったのです。これにより駅周辺はさらに盛り上がり、今ではさまざまなイベントの開催地になるなど、ますます勢いを増しています。

青森県青森市

青森市は除雪費用の軽減などを目的にコンパクトシティへの取り組みを始めました。街をインナー、ミッド、アウターの3つに区切り、それぞれのエリアごとに街づくりを進めていく計画を立てたのです。青森市は駅周辺に複合商業施設「アウガ」を建設したことで一時的に活気を取り戻しました。しかし経営は赤字が続き、最終的にはアウガの運営会社が経営破綻。責任を巡って市長が辞任するという事態に至っています。

国土交通省のコンパクトシティ誘導政策

代表的な取り組みとして「地方都市リノベーション事業」が挙げられます。建て替えを行う施設を都市の中心地へ誘致したり、図書館やコミュニティーセンターを合併させたりといった計画を進めることで都市の機能を中心部に集約させようとしています。

コンパクトシティの今後の課題

コンパクトシティを成功させるためには住民の理解が必要不可欠です。いくら中心部に引っ越せば補助金が出るなどの対策を行っても、昔から馴染みのある土地を離れたくないという方も多いでしょう。納得できない住民とどのように折り合いをつけていくか、どのように理解を進めていくのかが今後の大きな課題となりそうです。

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