ツールやアプリケーションの普及により、仕事はもちろん、個人でもCGや映像を作りやすくなってきた昨今。さまざまな場面でこれらの知識を活かせる機会が増えてきました。
CG-ARTS検定は、CGや映像を中心とした情報分野の知識やスキルを習得できる資格で、近年人気が高まってきています。
資格取得することで、映像業界やゲーム・アプリ制作企業への就職活動の際にアピールすることも可能です。
この記事では、CG-ARTS検定の内容や難易度、受験方法について解説していきます。おすすめの勉強方法も紹介していくので、これから取得を検討している人はぜひ参考にしてください。
目次
1.CG-ARTS検定とは?
CG-ARTS検定はCG-ARTS協会が主催する民間資格で、分野別に用意されている5つの試験の総称です。
- CGクリエイター検定
- CGエンジニア検定
- Webデザイナー検定
- 画像処理エンジニア検定
- マルチメディア検定
試験はそれぞれベーシックとエキスパートの2種類のレベルが用意されています。ベーシックは合格率が60~80%であることから、未経験からでも挑戦しやすい資格であるといえます。
各分野の詳細については後述していきますので、チェックしていきましょう。
2.CG-ARTS検定に合格するメリットとは?
資格取得に向けた勉強をするうえで、メリットを把握することはモチベーションアップにも繋がります。
CG-ARTS検定に合格するメリットとして最初に挙げられるのは、就職や転職で有利になることです。特に、実務経験のない新卒の場合、客観的に知識やスキルを評価できる資格を保有していることは企業に対してアピールする材料となります。
2種類以上の分野でエキスパートを取得すると「マイスター」に認定されるので、就職活動でアピールしたい人はこちらを目指すのもおすすめです。いずれの分野も将来性が高く、今後も発展していくことが見込まれます。CG-ARTS検定を取得することで、将来的にも需要の高いデジタル人材であることをアピールしましょう。
また、将来的にそれぞれの業界を目指している人は、仕事に役立つ知識やスキルを基礎から習得できることも魅力であるといえるでしょう。
3.CG-ARTS検定の5つの分野
ここでは、CG-ARTS検定で用意されている5つの分野について紹介していきます。
受験する試験に悩んだら、将来どのような仕事をしたいのかを念頭において選択すると、取得した資格を有効活用できるのでおすすめです。
一日の試験で午前はベーシック2検定、午後はエキスパート2検定というように、最大4検定まで併願受験することも可能です。興味がある分野を絞り切れない人や勉強に余裕がある人は、複数取得を目指してみるのもよいでしょう。
CGクリエイター検定
CGクリエイター検定は、CGデザインをはじめ2次元・3次元CGや映像制作のための構図、カメラワークに関する知識・技術を習得できる試験です。
テレビやゲームで高度なCG映像を見ていると「CG制作って難しそう」と感じてしまうかもしれませんが、難易度の低いベーシックでは静止画制作の出題が中心となっているので、未経験からでも安心して受験できます。将来的に、CGで映像制作やデザインをする仕事に就きたいと考えている人は、受験を検討してみましょう。
CGエンジニア検定
CGエンジニア検定は、CGや映像制作の他に、ゲームをはじめとするVR・AR、ソフトウェア・システム開発を行うエンジニアとしての知識・技術を習得できる試験です。
表面的な制作について出題するCGクリエイター検定に対し、CGエンジニア検定は、それらCGを動かすためのプログラムに関する出題がされるとイメージすればわかりやすいでしょう。将来的に、CGを用いたアプリやシステム開発にエンジニアとして携わりたいと考えている人は、仕事にも役立てられる資格です。
Webデザイナー検定
Webデザイナー検定は、その名の通りWebページのデザインに関する知識や技術を習得できる試験です。
「Webデザイン」と聞くと、おしゃれでセンスのよい画像や映像を駆使して制作するイメージが強いですが、ユーザビリティ(使いやすさ)の高い構成や制作におけるコンセプトなども含まれます。
また、こうした制作に関する知識だけではなくWebの標準的な知識も求められることから、将来的にWeb業界に進みたい人全般に役立つ資格であるといえるでしょう。
画像処理エンジニア検定
画像処理エンジニア検定は、ロボットビジョンやバーチャルスタジオ、画像や映像系のソフトウェアやシステムといった、画像処理に関する開発知識・技術を習得できる試験です。画像処理はリモートセンシング(遠隔地から調べる)技術でも用いられています。そのため、IT業界だけではなく、医療や工業など幅広い分野での活躍が見込めます。メタバースをはじめ、3DCGで構築された仮想空間が登場していることから、今後はより発展が見込める分野であるといえるでしょう。
マルチメディア検定
マルチメディア検定は、その名の通りマルチメディア(複数の情報をまとめて扱うメディア)に関する知識を習得できる試験です。
ビジネスはもちろん、日常生活や社会においてマルチメディアを活用・応用することが問われ、幅広い知識が求められます。一例ですが、デジタル画像やコンテンツデザインの基礎知識を習得できるので、メディアでの表現方法や的確な情報発信をするスキルの習得に役立てることが可能です。
4.CG-ARTS検定の試験概要
これから資格試験を受ける人にとって、試験形式や出題範囲はもちろん、その難易度や合格率は非常に気になるものです。ここでは、CG-ARTS検定における5つの試験それぞれの概要について説明していきます。
受験料
CG-ARTS検定の受験料は、分野ではなく受験するレベルによって異なります。
- ベーシック:5,600円
- エキスパート:6,700円
試験日程
試験は年2回で、7月と11月に開催されています。それぞれ申込期間が設けられているので、公式サイトで必ずチェックするようにしましょう。
公式サイト:https://www.cgarts.or.jp/kentei/guidance/index.html
試験会場
試験は20都道府県にある会場で実施されています。最寄りの会場を調べる際は、こちらも公式サイトから確認をしましょう。
公式サイト:https://www.cgarts.or.jp/kentei/guidance/place.html
試験形式
いずれの試験もマークシート方式で出題されます。
出題数
出題数は、いずれの試験も全10問。ベーシックで60分、エキスパートで80分です。
- ベーシック10問/60分
- エキスパート10問/80分
各分野の出題範囲
各分野の試験とも、ベーシックとエキスパート2つのレベルに分かれており、難易度の高いエキスパートの方が出題範囲は広く、内容もより専門性が増します。
ここでは、それぞれの試験の出題範囲を確認していきましょう。
CGクリエイター検定
ベーシックの出題範囲は以下の通りです。
- CGとは
- 表現の基礎
- 2次元CGと写真撮影
- 3次元CGの制作
- 技術の基礎
- 知的財産権
エキスパートの出題範囲は以下の通りです。
- 実写撮影
- 映像編集
- モデリング
- リギング
- CGアニメーション
- シーン構築
- プロダクションワーク
- 知的財産権
- ファイル形式企画
- 数理造形
ベーシック・エキスパートともにCG技術に関する用語や制作におけるノウハウなど、共通する部分もありますが、エキスパートではシーン構成やプロダクションワークなども加わり、広範囲かつ難易度が上がります。
CGエンジニア検定
ベーシックの出題範囲は以下の通りです。
- ディジタルカメラモデル
- 画像の濃淡変換とフィルタリング処理
- モデリング
- レンダリング
- アニメーション
- システムと規格
- 関連知識
エキスパートの出題範囲は以下の通りです。
- CGとディジタルカメラモデル
- 座標変換とパイプライン
- モデリング
- レンダリング
- アニメーション
- 画像処理
- 視覚に訴えるグラフィックス
- CGシステム
- 知的財産権
- 関連知識
ベーシックとエキスパートで、一部出題範囲が重複しているところもあります。しかし、エキスパートはベーシックでの基本的な知識に加え、より広範囲で深い知識が問われます。
Webデザイナー検定
ベーシックの出題範囲は以下の通りです。
- Webデザインへのアプローチ
- Webデザイン
- Webサイトを実現する技術
- 技術の基礎
- 知的財産権
- データフォーマット
エキスパートの出題範囲は以下の通りです。
- Webデザインへのアプローチ
- コンセプトメイキング
- 情報の構造
- インタフェースとナビゲーション
- 動きと音の効果
- Webサイトを実現する技術
- Webサイトのテストと運用
- 知的財産権
ベーシック・エキスパートともに、Webサイト制作における基本的な知識や技術が中心となった出題範囲です。エキスパートではさらに動きや音、テストや運用なども加わるため、より実用的な内容となっています。
画像処理エンジニア検定
ベーシックの出題範囲は以下の通りです。
- ディジタルカメラモデル
- 画像の濃淡変換とフィルタリング処理
- 画像の解析
- パターン・特徴の検出とパターン認識
- シーンの復元
- システムと規格
- 関連知識
エキスパートの出題範囲は以下の通りです。
- ディジタル画像の撮影と画像の性質・色空間
- 画素ごとの濃淡変換と領域に基づく濃淡変換
- 周波数領域におけるフィルタリングと画像の復元・生成
- 2値画像処理と領域処理
- パターン・図形・特徴の検出とマッチング、パターン認識、深層学習による画像認識と生成
- 動画像処理、画像からの3次元復元、光学的解析
- 画像符号化
- 知的財産権
ベーシックが基本的な知識・技術に関する出題であることに対し、エキスパートは画像処理に関する専門性が非常に高くなります。
マルチメディア検定
ベーシックの出題範囲は以下の通りです。
- マルチメディアの特徴
- ディジタル端末
- コンテンツ制作のためのメディア処理
- インターネットと通信
- インターネットで提供されるサービス
- インターネットビジネス
- ディジタルとネットワークで進化するライフスタイル
- 社会に広がるマルチメディア
- 知的財産権
エキスパートの出題範囲は以下の通りです。
- 人間の知覚とヒューマンコンピュータインタラクション
- マルチメディアの処理技術
- コンピュータの仕組みと技術
- ネットワークと通信
- マルチメディアアプリケーションの実現
- インターネットの応用
- 社会に広がるマルチメディア
- 知的財産権
ベーシック・エキスパートともに、マルチメディアをビジネスや社会に活用するための知識を問われます。エキスパートでは、これらに加え、ハードウェアやクラウドといったコンピュータの仕組み・技術などIT要素が濃い出題範囲となります。
各分野の難易度・合格率
各試験の合格率や難易度、応募数は以下の通りです(2021年前期)。
ベーシック
区分 | 応募者 | 合格率 | 難易度 |
---|---|---|---|
CGクリエイター検定 | 1,879 | 63.9% | ★☆☆☆☆ |
Webデザイナー検定 | 659 | 67.5% | ★☆☆☆☆ |
CGエンジニア検定 | 1,201 | 62.6% | ★☆☆☆☆ |
画像処理エンジニア検定 | 510 | 66.5% | ★☆☆☆☆ |
マルチメディア検定 | 818 | 65.3% | ★☆☆☆☆ |
エキスパート
区分 | 応募者 | 合格率 | 難易度 |
---|---|---|---|
CGクリエイター検定 | 1,271 | 20.8% | ★★★☆☆ |
Webデザイナー検定 | 361 | 43.7% | ★★★☆☆ |
CGエンジニア検定 | 760 | 33.1% | ★★☆☆☆ |
画像処理エンジニア検定 | 524 | 32.6% | ★★☆☆☆ |
マルチメディア検定 | 622 | 28.1% | ★★★☆☆ |
各試験の合格基準点は100点満点中70点以上(難易度によって多少前後あり)です。上記の一覧から合格率はベーシックで約65%、エキスパートで約20~45%であるといえます。
IT資格のなかには、合格率が10%を切るものも数多く存在します。またマークシート形式で記述する必要がないことから、比較的容易に取得できる資格であるといえるでしょう。
5.CG-ARTS検定の効率的な勉強方法
未経験者のなかには「どうやって勉強したらいいの?」と悩んでしまう人もいることでしょう。ここでは、CG-ARTS検定の各試験の効率的な勉強方法を、ベーシックとエキスパートに分けて紹介していきます。
ベーシックの勉強方法
ベーシックは、基本的な知識やスキルが問われるレベルとはいえ、専門用語や馴染みのない理論が数多く出てきます。そのため、まずは受験する分野の参考書から体系的に学ぶことが重要です。
また、見慣れない用語を詰め込んで覚えるのではなく、3D制作ソフトを利用して、実際に手を動かしながら学習を進めていくこともおすすめします。一通り用語や理論について理解したら、過去問を繰り返し解いて知識を定着させていきましょう。
エキスパートの勉強方法
ベーシックの勉強方法に加え、実践的なスキルを習得するためにソフトを使用して学習を進めていきます。ソフトの使用方法はインターネットでも調べられますが、エキスパートの場合は検索した情報だけでは不十分であることもあります。
勉強に詰まってしまう場合には、スクールの利用もおすすめです。プロの講師に質問でき、ピンポイントで疑問を解決できることは非常に効率的であるといえるでしょう。また、スクールには目標を同じとした生徒がいるので、勉強のモチベーションアップにも役立ちます。
6.CG-ARTS検定合格者の就職先は?
CG-ARTS検定に合格すると、どのような就職先で役立つのでしょうか。各分野で役立てられる主な職種は次の通りです。
分野 | 職種 |
---|---|
CGクリエイター検定 | ・CGディレクター ・CGモデラー ・CGアニメーター ・CGデザイナー ・ゲームクリエイター ・グラフィックデザイナー など |
CGエンジニア検定 | ・CGプログラマー ・ゲームプログラマー ・ソフトエンジニア ・CADエンジニア ・テクニカルディレクター など |
Webデザイナー検定 | ・Webデザイナー ・Webプロデューサー ・Webディレクター ・Webプランナー ・Webプログラマー ・コーダー ・広報 ・営業/販売 など |
画像処理エンジニア検定 | ・エンジニア ・プログラマー ・開発/研究者 など |
マルチメディア検定 | ・学生やビジネスパーソン |
上記の一覧はあくまで一例であり、IT技術の進歩によって活躍できる分野は今後も拡大していくことが予想されます。
働き方が多様化してきている昨今において、パソコンとインターネット環境があれば場所を選ばず仕事ができることは、選択肢を広げることに繋がります。就職以外の道でも役立てられるでしょう。
7.CG-ARTS検定でクリエイティブなスキルを身につけよう
CG-ARTS検定は、CG制作やメディア制作に必要なスキルを問われる資格試験の総称です。クリエイティブなスキルは年々需要が増加しており、資格を取得することで就職や転職活動の場で有利となる可能性が高いです。
また、ツールやソフトが普及した昨今において、就職以外に副業や趣味など個人で制作する機会も増えています。資格取得はこれからの活動の選択肢を広げてくれるでしょう。
CGやWeb制作、映像業界に興味がある人は、資格取得を目指すところからはじめてみてはいかがでしょうか。