車は個人が所有するものであり、自分や家族が利用するもの。少し先の未来ではそんな考えは古いなんて言われてしまうかもしれません。そこまでの変化を引き起こすのではないかといわれているもの、それがMaaSです。
そこで今回はMaaSとは何か、それにより世界がどう変わっていくのかについてご紹介します。
目次
MaaSとは
MaaSはMobility as a Serviceの略。日本語ではサービスとしての移動と訳されます。
「つまりバスやタクシーのこと?」なんて思ってしまうかもしれませんが、それは移動に関するサービスの一部でしかありません。MaaSは移動することそれ自体をサービスにするという概念。バスやタクシーはもちろん、電車や飛行機など様々な交通手段が1つのサービスに集約されることを意味します。料理で例えるなら和食や洋食、中華を1つの店舗(=サービス)で楽しめる食べ放題のようなものとイメージしてください。
MaaSが普及すれば車を所有する必要がなくなり、急に故障して交通手段がなくなってしまうなんてことはなくなります。交通手段がサービスとして提供されることによって結果的により移動が自由になるというのがMaaSの目指す世界です。
MaaSの実例
カーシェアリング
カーシェアリングサービスを利用すれば、車が必要な時でもわざわざ購入せずに乗ることができます。
というとレンタカーと同じものと感じてしまうかもしれませんが、レンタカーの場合は自分とレンタカー会社が1対1で取引をする、カーシェアリングの場合は1つの車を複数人で共有するという点で違いがあります。
カーシェアリングであれば利用したいと思った時にレンタカーのような手続きは必要ありませんし、10分など短時間での利用も可能です。
配車サービス
配車サービスというと世界的に有名なのはUber(ウーバー)。一般の人でもドライバーとして働くことができる革新的なサービスです。現状日本では一般人がタクシーのようなサービスを行うことに規制がかかっていますが、海外では徐々に広がりつつあるビジネスモデル。日本で解禁されるのも時間の問題かもしれません。
ライドシェア
最近は自動運転技術にも注目が集まっています。もし自動運転が完全に達成されれば人が運転する必要はなくなります。となればタクシーの運転が自動化され、近い目的地へ向かう人同士でマッチングするというライドシェア、いわゆる相乗りの文化も生まれてくるでしょう。
海外の事例
ここまで説明してきた内容はどれも車に関するサービスでした。正直にいうとこれではまだMaaSのコンセプトに及ぶものではありません。
しかしフィンランドではMaaSのコンセプト通りのサービスがすでに展開されています。それはMaaS Global社が提供しているWhimというサービス。アプリの画面を表示するだけで電車やバス、タクシーやバイクを利用することができます。
じつはこのWhim、近いうちに日本へ進出する可能性があると同社CEOのサンポ・ヒエタネン氏は述べています。あなたが社会に出る頃にはすでにMaaSが一般的なものになっているかもしれませんね。
MaaSが解決する社会問題
環境問題
自動車の排気ガスによる環境問題についてはあなたも聞いたことがあるでしょう。
10人がそれぞれ車に乗れば10台分の排気ガスを排出しますが、ライドシェアが普及し1台に5人乗るようになれば車の台数は2台で事足ります。やや過激な例えではありますが、この場合では排気ガスの排出量は80%の減少。使われる資源の量が減るなど、環境問題解決の糸口になるかもしれません。
地方、過疎地域の交通問題
地方、過疎地域では交通機関の利用者が少なく、バスや電車が相次いで廃線に追い込まれています。といっても少数ながら利用している人はいるわけですので、そんな方たちの交通手段をどうサポートしていくのかという問題はたびたび取り上げられています。
MaaSにより交通手段が多様化し、今ある交通手段というリソースを最大限有効活用できるようになれば必要な場所に必要なだけ再配分できるようになり、このような交通問題も解決してしまうかもしれません。
個人の費用軽減
車を保つ必要がなくなればこれに伴う費用、すなわちガソリン代や駐車場代、自動車税がなくなります。個人の負担が減ることで本当に必要なことだけにお金を投資することができるようになるでしょう。
MaaSで変わる自動車業界
自動車メーカーの動き
車に関わる革新ということで、自動車メーカー各社もMaaSへの対応を進めています。
例えばトヨタは車両制御インターフェイスを開示し、MaaS事業者に対して技術的な支援をすることで利益につなげようと取り組んでいます。また海外でもメルセデス・ベンツで有名なダイムラー社はバスや地下鉄、車といった交通手段をまとめて提供するmoovelというサービスの提供を始めました。
自動車メーカー各社が本気で新事業を立ち上げているところからもMaaSへの注目度の高さが伺えます。
車を作る製造業から、サービス産業へ
これまでは車を作ることこそが自動車メーカーの仕事でした。そのためメーカーへの就職では機械工学や電気工学など、車の設計に関わる技術を持っているかどうかが重視されていました。
しかしMaaSというコンセプトの登場によってこれまでの常識が崩れかけています。作ってさえいれば良いという状況ではなくなってきているため、今後の採用では工学以外の幅広い知識も求められるようになるかもしれません。