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ボイラーとは、熱エネルギーで温水などをつくる熱源機器のことで、主にビルや工場などで使われています。ボイラーは正しく取り扱わなければ、重大な事故にもつながるため、ボイラー技士による適切な管理が求められます。
この記事では、ボイラー技士の仕事内容や資格の種類などについて解説します。
ボイラー技士とは?仕事内容を確認
ボイラー技士とは、伝熱面積(熱を伝えられる範囲)が3平方メートル以上あるボイラーの、管理・点検・修繕などを行う国家資格と、その有資格者を指します。
ボイラー技士の主な仕事内容は、ビルや工場の給湯設備や機械が不具合なく稼働するための保守・点検です。
ボイラーは火気や高温ガスを使用してエネルギーを生み出します。このため、専門的な知識や技術を持つボイラー技士は、施設の事故防止のために欠かせない存在なのです。
なお、伝熱面積が0.5平方メートル以下の簡易ボイラーや、1平方メートル以下の小型ボイラーは資格を必要としませんが、こういったボイラーが扱えるのは、事故リスクの低い施設に限られています。たとえば、比較的小規模の病院や自治体の所有する施設などが該当します。
ボイラー技士が求められる場所
ここでは、ボイラー技士が必要とされる場所について詳しく解説します。実際にどのような場所で活躍しているのか見てみましょう。
ビルの設備管理
ビルの設備管理は、ボイラー技士の需要が高いことで知られています。ビルの規模に関係なく、給湯設備や空調管理にボイラーが必要であることと、大都市を中心としてビルの数が多いことが理由です。
ボイラー技士として就職すると、管理会社が契約しているビルに出向いて、定期的にボイラーの点検やメンテナンスを行います。これは、法令で規定されている重要な仕事です。
ビルによっては、ボイラー技士が管理室に常駐して、ボイラーの運営や管理を行うこともあります。
施設内のボイラー管理・点検・修繕
ホテルや病院などの施設にあるボイラー管理・点検・修繕にも、ボイラー技士が求められます。
大規模なホテルでは、空調はもちろん大浴場や温水プールなどを運営しているため、規模の大きいボイラー施設が必要です。こういったホテルでは、ボイラー技士が常駐してボイラー管理・点検・修繕を行っています。
大規模な病院の場合も空調や医療機器、調理などに多くの熱エネルギーが必要なため、地下などに規模の大きいボイラー施設が設けられています。
建設現場での立ち合い
ボイラーを設置する施設の建設時には、ボイラー技士の立ち会いが必要になります。ボイラーを設置する位置の確認や、どのような種類のボイラーを設置するのかといった、専門家の見立てが必要だからです。
立ち合いでは、ボイラー技士は依頼された現場に出向いて、専門家の立場から的確なアドバイスを行います。ボイラー技士がいなければ建設が進まないため、この仕事も重要な役割の1つです。
ボイラー技士の資格の種類
ボイラー技士の資格には、2級・1級・特級という3種類の階級があります。階級によって伝熱面積、受験資格、難易度、合格基準が異なります。ここでは、それぞれの違いを紹介します。
2級ボイラー技士
2級ボイラー技士は、ボイラー技士の資格の中でもっとも低い階級ですが、1級や特級へステップアップするには、取得する必要があります。
2級ボイラー技士が扱えるのは、ごく一般的な給湯設備や、冷暖房器具などをエネルギー源として利用するボイラーです。これらの設備は、多くの小規模施設に設置されているため、活躍の場は多いでしょう。
ボイラー技士の基礎的な経験を積むために、2級ボイラー技士として長く働いてから、1級ボイラー技士へと進む人もいます。
- 対応できる伝熱面積:25平方メートル未満のボイラー
- 受験資格:特別な受験資格は不要
- 難易度(合格率):2019年度合格率は50.8%で、難易度は中程度
- 合格基準:4科目(各10問)それぞれの得点率40%以上と、全科目の得点率が60%以上
1級ボイラー技士
1級ボイラー技士は、2級ボイラー技士として実務経験を積んだ人が、次のレベルを目指すために取得する資格です。
1級ボイラー技士の資格を取得すると、中規模の病院やビル、工場などに設置されているボイラーを扱うことができます。そのため、必然的に2級よりも1級ボイラー技士への需要は高くなり、給与のアップや待遇面の向上などが期待できます。
2級ボイラー技士として実務経験を積んでいれば、1級ボイラー技士の資格取得はそれほど難しくありませんが、それでも日々の勉強は欠かせません。また、特級ボイラー技士を目指す人にとっては必須の資格であるため、初めから1級ボイラー技士の取得を視野に入れて勉強している人もいます。
- 対応できる伝熱面積:25平方メートル以上500平方メートル未満のボイラー
- 受験資格:2級ボイラー技士免許の保有者で、大学・高専・高校のボイラーに関する科目を修了・卒業し、1年以上の実地修習を経た者などの資格が必要
- 難易度(合格率):2019年度合格率は52.5%で、難易度は中程度
- 合格基準:4科目(各10問)それぞれの得点率40%以上と、全科目の得点率が60%以上
特級ボイラー技士
特級ボイラー技士は、3種類あるボイラー技士の資格の中で、最高位に該当します。特級ボイラー技士になると、大規模な工場に設置されているボイラーを扱うことができます。
大規模な工場で事故が起きると被害が大きくなるため、それらを防ぐための運営・管理やメンテナンスを行う特級ボイラー技士は、大きな責任を担います。特級ボイラー技士の数は2級・1級のボイラー技士と比べて少なく、大規模な工場が主な勤務先となることから、給与や待遇も安定的でしょう。
特級ボイラー技士になるためには、2級と1級のボイラー技士としての実務経験だけでなく、学科の勉強にも力を入れなければいけません。合格するのは簡単ではありませんが、特級ボイラー技士になれば仕事の幅が大きく広がるため、挑戦しがいのある資格です。
- 対応できる伝熱面積:500平方メートル以上のすべてのボイラー
- 受験資格:1級ボイラー技士免許保有者で、大学・高専などのボイラーに関する科目を修了・卒業し、2年以上の実地修習を経た者
- 難易度(合格率):2019年の合格率は30.3%で難易度は高い
- 合格基準:4科目(各6問)それぞれの得点率40%以上と全科目の得点率が60%以上
ボイラー技士とボイラー整備士の違い
ボイラーを扱う士業には、ボイラー技士とボイラー整備士があります。この2つは、できる仕事の範囲が異なるという明確な違いがあります。
ボイラー技士はボイラーを操作して高温の蒸気や温水を作り、そのエネルギーで施設内の機器を動かしたりお湯を供給したりする仕事です。一方でボイラー整備士は、ボイラーや圧力容器を点検・整備する仕事です。定期的にボイラーを分解して清掃を行うことも仕事に含まれます。
ボイラー技士とボイラー整備士では、仕事の範囲が異なるので、資格も別になっています。そのため、「ボイラーの清掃・整備を行う」、「ボイラーを運転する」といった業務に従事する場合は、両方の資格を取得する必要があります。
ボイラー技士になるには
ボイラー技士になるには、主に2つの方法があります。また、1級や特級の資格を取得するには一定の実務経験が必要です。具体的に見ていきましょう。
大学や専門学校で学ぶ
大学に進学する場合は、「設備工学科」などでボイラー技士について学べます。また、工学系の専門学校でも、ボイラー技士になるための必要な知識や技能を学ぶことができます。
ほとんどの学校では、資格取得から就職までサポートしてくれるのが特徴です。将来の目標が明確でない場合は、選択肢の一つとして、ボイラー技士について学んでおいて損はありません。
さらに、1級や特級を目指すのなら、受験資格が得られる専門学科を選択するのも一案です。
通信教育で学ぶ
通信教育で学ぶのも効果的な方法の1つです。大学や専門学校に通う時間や費用がかけられない場合でも、ボイラー技士資格試験の合格に必要な基本的な知識を学ぶことができます。
自宅で気軽に学べるため、コストを抑えたい人や2級から始めようと考えている人にはメリットの大きい方法です。通信教育の受講に必要な費用相場は、2万3000円程度です。受講修了までにかかる期間は、おおむね4カ月程度となっています。
実務経験を積む
1級・特級のボイラー技士資格試験を受験するには、それぞれ実務経験を積む必要があります。1級ボイラー技士の資格試験を受験するには、1年以上の実務経験が必要です。
特級ボイラー技士資格試験の場合は、2年以上の実務経験が必要とされています。この実務経験は、ボイラー取扱いの応用能力を養うために行われます。
実務には、1級や特級のボイラー技士が指導員として付き、その指導のもとに行われます。実務程度が不十分と評価された場合は、さらに追加の指導が課されます。
ボイラー技士の将来性
ボイラー技士資格は、国家試験に合格した人だけに与えられる業務独占資格です。業務独占資格を得ると、その資格の保有者だけが、独占的に従事できる仕事に就くことができます。
そんなボイラー技士ですが、2級ボイラー技士の求人は若干減少傾向です。一方、1級や特級のボイラー技士に関しては、タワーマンションや高層ビルの増加によって求人数が増える傾向にあります。
また、大規模工場のボイラーを扱える特級ボイラー技士は、常に安定した求人が望めます。したがって、できるだけ上位資格を取得することで、キャリアアップを期待できるでしょう。
1級や特級のボイラー技士になって安定したキャリアを目指そう!
現在、ボイラー技士の求人が多いビル管理業界では、1級ボイラー技士の需要が高い傾向にあります。また、特級ボイラー技士になると大規模な工場だけでなく、規模の大きな病院やホテルなどの施設に好条件で就職することが可能です。
そのため、ボイラー技士に興味がある人は、まずは在学中に比較的易しい2級を目指して資格を取得しましょう。
その後、興味のある設備で働くには、どのレベルのボイラー技士資格が必要かを考えて、ステップアップしてはいかがでしょうか。