冷凍空調技士の魅力や資格取得方法とは?将来期待できる専門資格を解説します

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冷凍空調技士は、冷凍・空調設備の設計や製造、研究、調査、工事管理業務全般に携わる技術者を認定する資格です。しかし、冷凍空調技士の実際の仕事内容に加え、資格取得のための要件、方法、難易度など知られていないことも多いです。

ここでは、これらの紹介に加え、類似資格との比較や、冷凍空調業界での将来性についても解説していきます。

冷凍空調技士とは?知っておきたい基礎知識

まずは、冷凍空調技士の資格について知っておいてほしい基礎知識を紹介していきましょう。

冷凍空調技士の概要

冷凍空調技士とは、冷凍・空調設備に係る製造開発、管理、調査などに従事するための専門資格です。国家資格ではなく、公益法人が認定する民間資格に該当します。

冷凍空調技士は、冷凍空調分野におけるスペシャリストとして、主に、冷凍・空調機器メーカーや冷凍食品の流通に関わる企業で必要とされます。具体的な就職先や仕事内容については後述します。

認定団体

冷凍空調技士を認定する団体とは、冷凍分野における日本で唯一の公益団体である「冷凍空調学会」です。同団体は、冷凍・空調分野に携わる技術者が最新の技術動向を継続的に学び、機器・設備の不備がもたらす損失や事故の発生を防ぐという目的で、冷凍空調技士資格を創設しました。

この資格はすでに50年以上の長い歴史を持ち、同学会によると約3,000人の資格保持者が冷凍空調分野で活躍しています。

資格の位置付け

冷凍空調技士資格保持者は、豊富な専門知識と優れた技能が伴っていることから、冷凍空調業界では頼れる専門家として高い評価を集めています。冷凍・空調設備の検査・保安チェックを行うほか、設計職や研究職に就いているケースが目立つのも特徴で、資格取得によって同業界における活躍のフィールドが広がっていきます。

また、冷凍や空調設備へのニーズも年々増加傾向にあることから、中長期的に高い需要が期待できる資格です。

冷凍空調技士の活躍できる場所と仕事内容

前項でも少し触れましたが、冷凍空調技士の資格を取得した場合、どのような企業に就職できるのか、どういった仕事内容に携わるのか具体的に解説します。

冷凍空調技士の就職先

主な就職先として挙がるのは、まず冷凍・冷房機器製作会社です。ここでは、冷凍や冷蔵機器の開発研究にも深く関わるケースがあります。冷凍空調技士として、従来モデルを上回る冷凍・冷房技術の設計・開発が求められるほか、環境への配慮や安全性の向上も期待されるでしょう。

次に、空調・冷凍設備工事およびメンテナンス会社があります。大型オフィスビルや商業施設などで体系的な空調システムを施工する際、中心的なポジションで活躍することが多いでしょう。

工場や大型スーパーといった現場では、業務用の冷凍設備に関わる設置工事などを担います。冷凍食品の冷凍・流通に関わる企業でも、冷凍設備の新たな拡充や、専門性の高い設備の保守管理・メンテナンスといった場面で冷凍空調技士の活躍が必要です。

冷凍空調技士の仕事内容

冷凍空調技士の就職先での仕事は、大まかに以下のものに分類されます。

  • 機器制御仕様の設計
  • 冷凍サイクルの確認や手順の効率化
  • 新技術の先行開発やモデルチェンジの検討
  • 送風機・熱交換器の開発
  • 検査や保安チェック

上記の中で、機器制御仕様設計は以前より格段に重要性が増した業務の一つです。限りある燃料エネルギーを効率よく利用すべき現在において、建物全体の省エネ・低コストの実現に、機器制御仕様設計のクオリティーが大いに影響するからです。専用設備を施設や工場へ一斉導入する際にも、やはり機器制御に関わる知識や技能が不可欠となります。

また、冷凍・冷房機器製作会社では、先行開発や扇風機・熱交換器の開発に取り組むことも多いです。特に、先行開発については、より創造性を伴う成果が求められる研究職に託される業務です。一方、検査や保安チェックは、空調・冷凍設備メンテナンス会社において、頻繁に取り組むことになるでしょう。

冷凍空調技士を取得するメリット

冷凍空調技士を取得するメリットは、いかなる業務を担当するにせよ、所属チームにおいて主導的な役割を担い、リーダーとして期待される可能性が高いという点です。

例えば、大規模な空調システムを導入するような場面でも、同分野で際立った専門性を持つ冷凍空調技士の視点やアドバイスは、プロジェクトの成功を引き寄せる要として期待されます。

また、開発職や研究職への道が開けるのも資格取得のメリットです。こうした、専門色の強いポジションに就くことで、収入面でもポジティブな成果が期待できます。

冷凍空調技士と冷凍機械責任者の違い

冷凍空調技士と比較的よく似た資格として、国家資格の「冷凍機械責任者」があります。冷凍機械責任者資格を取得した場合、高圧ガス保安法に規定される、冷凍に関わる高圧ガス製造を行う施設での保安業務が認められます。

国家資格ゆえ、法定業務は独占的に冷凍機械責任者が携わることができます。しかしながら、業務範囲は冷凍空調技士であれば、冷凍のみならず空調に関する設備の製造・設計・管理に関わるので、冷凍機械責任者が対応できる分野は限定的であることがわかります。

冷凍空調技士の資格の詳細

ここからは、冷凍空調技士の資格の詳細や、取得の際に把握しておくべき項目を具体的に確認していきましょう。

受験資格

冷凍空調技士の資格は、第一種と第二種の2種類に分かれています。それぞれ受験資格が異なるため確認しておきましょう。

第一種

  • 冷凍や空調機器に係る製造・開発・管理などの関連業務経験、または高圧ガス保安法に規定される冷凍施設での経験が通算4年以上ある人
  • 大学(院)、短期大学、高等専門学校において工学または理学を修了し、実務経験が通算2年以上ある人
  • 通算3年以上の実務経験がある第二種冷凍空調技士
  • 工業高校卒業後、通算3年以上の実務経験がある人
  • 日本冷凍空調学会の通信教育を優秀な成績で修了し、通算2年以上の実務経験がある人

第二種

  • 実務経験や学歴を問わず(技師の認定には合格後2年以上の実務経験が必要)

試験科目

試験科目は、第一種と第二種ともに違いはありませんが、いずれも理論と技術のカテゴリ―に分かれています。各分野2時間ずつ、トータル4時間を要する試験です。

理論

  • 冷凍サイクルと圧縮機
  • 熱および熱交換
  • 冷媒・冷凍機油・ブライン
  • 圧力容器の強度
  • 空気調和(I)
  • 空気調和(II)

技術

  • 冷凍装置の設計計算
  • 冷凍装置の自動制御
  • 冷媒配管・付属機器
  • 冷凍装置の運転と保守
  • 保安
  • 空気調和機器

試験日と合格発表

通常、願書申込期間は12月上旬~1月下旬です。試験日は例年の傾向として、2月中旬~下旬の日曜日となっています。

受験地は東京、大阪、名古屋、福岡の4カ所から選べます。受験料は第一種と第二種共通で10,000円(税込)です。

※上記は執筆時の情報です。最新の情報は認定団体の公式サイトで必ず確認してください。

合格基準と難易度

冷凍空調技士に合格するには、第一種・第二種ともに全体の60%以上の得点を取らなければなりません。

難易度としては第二種が大学工学部卒業程度とされ、試験問題は全問択一式の解答形式です。第一種は、冷凍空調装置の設計業務に従事できる実務レベルの難易度とされています。また、解答方法は一部択一式を含むものの、計算過程の記述や用語説明など筆記のウェートが高くなります。

合格率は第二種冷凍空調技士で50~65%程度、第一種の場合は40~50%程度を推移しているのが近年の傾向です。以上の特色や合否に関するデータを見る限り、冷凍空調技士の第一種は、やや難しい試験の部類に該当すると判断できます。

検定試験合格後の注意点

冷凍空調技士合格後は、登録申請の手続きを滞りなく進めなければなりません。期日までに間に合わなければ、失効するケースもあるので注意してください。登録料は第一種の場合7,000円、第二種の場合は5,000円と定められています。

さらに、合格時に認定団体の会員に未加入の場合、入会金1,500円と年会費9,600円の費用も併せて発生します。納付とともに、受験資格に応じて実務経歴書など必要書類を学会へ送り、登録申請の手続きはすべて完了です。

冷凍空調技士の第一種と第二種ではどちらがキャリアアップできる?

冷凍空調技士は第一種の資格を取ることで、「冷凍装置検査員」や「特別冷凍装置検査員」の資格要件を同時に満たします。また、第一種は受験の際に実務経験が必須となるだけでなく、業界において需要が高いという側面もあります。こうした面でも業務の選択肢が広がっていくのは明白です。

冷凍空調業界でキャリアアップを目指すのであれば、通過点で第二種を取得するとしても、最終的にはスペシャリストに相応しい、第一種合格を目指すことを強くお勧めします。

冷凍空調技士の資格を取得する方法

それでは、将来的に冷凍空調技士の資格を取得するための方法を見ていきましょう。

大学・短大・専門学校で学ぶ

大学や専門学校経由で目指す場合は、進学先選びが非常に大切です。なぜなら、技術者に興味がある人向けの学科や講座を開設している学校を選ぶと、資格取得をサポートしてくれる場合が多いからです。学べる内容は多少学校によって違いますが、基礎力のほか体系的に必要な知識や技術を取得できるメリットがあります。

冷凍空調技士に関連する学部・学科の一例を挙げると、工業大学の機械システム工学科などがあります。機械設計の基礎やデザイン力を養い、将来のキャリア設計や冷凍空調技士の資格取得などを学科全体で後押ししてくれます。

・久留米工業大学 機械システム工学科
https://www.kurume-it.ac.jp/gakubu/kikai_shokai.html
https://www.kurume-it.ac.jp/gakubu/kikai_course1.html

学校卒業後に実務経験を積む

理学や工学を修めて学校を出なくても、専門性のある実務を4年以上積むことで、冷凍空調技士を受験できるチャンスは巡ってきます。早々に資格取得を目指さなかったとしても、厳しい実社会で身につけた実務経験は、将来の仕事・資格試験の両面で大いに役立つはずです。

実務でキャリアアップを重ねたタイミングで、冷凍空調技士を取得すれば、業務経験と専門性を併せ持つスペシャリストとしてより評価も高まるでしょう。

受験準備講習会に参加する

冷凍空調技士の認定団体である日本冷凍空調学会は、冷凍空調技士の受験準備講習会を主催しています。資格試験と同様、全国4カ所で受験対策講座を受講できます。認定団体自らが企画しているという点からも、かなり有用な学習の機会が得られるのは確かでしょう。興味がある人は、今からでも参加しておくと貴重な発見があるかもしれません。

冷凍空調技士の将来性

最後に、冷凍空調技士の将来性について整理していきましょう。冷凍空調技士は、冷凍空調業界において必要とされる資格であることは、いくつかの他団体資格の認定要件になっていることからも分かります。

高圧ガス保安協会が認定する「冷凍空調工事保安管理者」と「冷凍機器溶接士」、さらに、日本冷凍空調設備工業連合会が認定する「第一種冷媒フロン類取扱技術者」が該当しています。また、第一種のみですが、「冷凍装置検査員」と「冷凍特別装置検査員」の要件にもなっています。

冷凍食品流通量が年々増加しているばかりか、業務用空調システムを整備する需要が高まっている状況を加味しても、冷凍空調技士が将来有望な資格という評価は揺るぎないものでしょう。

おわりに

本記事を通じ、冷凍空調技士について、より身近に感じられるようになったのではないでしょうか。冷凍空調技士は、産業構造の変化や社会情勢と照らし合わせても、需要が高まる一方です。特に、冷凍空調の機械工学に興味がある人には、ぜひ頭に入れておいてほしい専門資格です。

 

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