文部科学省によると、工学部の学科は660以上あります。
自分に向いた学科を見つけるのは、その大学の学科のHPをよく見ることが重要です。しかし、日本には沢山の大学があるので、一つ一つ吟味するのはとても骨が折れます。
大まかに主流な学科を分類してご紹介しますので、みなさんがこの記事を読むことで、自分に興味のある学科を発見できれば幸いです。
機械系学科
主に機械に関することを学ぶ学科です。特に機械を設計することを目的としている場合がほとんどです。
世の中には、ありとあらゆる機械があります。石油コンビナートなどのようなプラントと言われる大きな機械類から、スマホや時計といった小さな精密機械もあります。ロボットや家電製品、自動車や工場の機械、身近にあるものを想像するとキリがありません。
機械系学科では、機械に関する基本的な知識を学び、さらに設計に関する知識を学んでいきます。マシンを作りたい!という人にオススメです。
自動車・輸送機器系学科
飛行機・自動車・船舶・鉄道といった輸送機器にそれに関わる交通システム関することを学ぶ学科です。輸送機も機械なので、機械系学科の一部と言えます。ただ、輸送機器を中心に専用に設けられている学科が多いのでご紹介させていただきました。
輸送機を設計すること、また輸送機にまつわること(交通や環境など)を詳しく学ぶことをメインにした学科もあります。
久留米工業大学で新たに開設される交通機械工学科の先端交通・航空宇宙コースを例に挙げてみましょう。このコースには3つの領域があります。
航空宇宙開発領域では、航空宇宙機設計やその製造について学ぶことができます。
航空機整備領域では、航空整備士になるための勉強をすることができます。(※航空整備士の資格取得には、3年程度の実務経験を経て、学科試験と実地試験に合格することが必要となります。)
先端交通機械領域では、自動車の設計・開発をはじめ、ノリモノ全般の設計・開発。また、AI技術を取り入れた自動運転システムや電気自動車をはじめとしたエコエネルギーの利用に関することなども学べます。
IT・情報系学科
コンピュータにかかわることを学ぶ学科と言えます。IT・情報系と言えば、現代の人気学科のひとつと言えるかもしれません。
IT技術というと皆さんは何を思い浮かべますか?例えば、初音ミクといったヴォーカロイドも、信号処理技術を利用した音声合成ソフトウェアで、IT技術から生まれています。また、最近では自動運転システムや、囲碁のトップクラスの棋士に勝った人工知能などもIT技術によるものです。
IT・情報系学科ではこのような内容を学ぶ学科とイメージしてもらえるとわかりやすいかと思います。
建築・設備系学科
建物を構築すること、また、その建物の外や中の環境に関することを学ぶ学科です。
建物を設計する知識も重要ですが、その際、町の環境、その建物で過ごす人の環境などを考えることも重要です。
例えば、オフィスビルを設計する際、安全で丈夫な建物である必要もありますし、電気設備、空調設備や給排水といった衛生設備等も考える必要があります。オフィスビルの建設場所が観光地であれば、その街並みに合わせた外観である必要も出てきます。
このように、建築・設備系学科は建築物にまつわるあらゆることを学ぶことができる学科です。
電気・電子系学科
エレクトロニクスというと何となく想像しやすいのではないでしょうか?
例えば、スマホの中にある集積回路や半導デバイス、電気・電子工学の技術が支えています。発電所で電気がつくられ、コンセントを挿せば電気が利用できるのも電気・電子工学の技術によるものです。
このように、電気・電子系学科は、現代の産業や生活の基盤となる重要な科学技術です。
これらに関わることを学ぶのが電気・電子系学科です。
化学(物質)系学科
物質そのものやそのエネルギーに注目し、それをモノづくりに生かすことを目的とした学科と言えます。
物質を原子や分子レベルで解析し、新しい物質や素材を作り出したり、その素材を生産するシステムなども考えたりします。例えば、あたらしいフィルムが開発されたり、スマホの電池のもちが長くなったりしたのも、化学レベルでの研究によるものです。
化学が好き!化学をもっと学んで、それを世の中の役に立てたい!といった人にオススメです。
生物系学科
生き物を対象として研究していく学科です。
生き物の学問として最近話題なのが、遺伝子工学です。ほかにも細胞工学、生命工学なども生物系学科の分野です。
理学部や農学部でも遺伝子や生命にかかわることを学べますが、工学なのでその技術をモノづくり等に活かすことを目的としているところが特徴です。例えば、微生物や植物を利用して、工場の排水などをきれいな水に戻す研究や、遺伝子組み換えにより環境に強い食物を開発するといったことをします。
生物が好き!生物の知識を活かして世の中の役に立ちたい!といった人にオススメです。
その他
上記にざっくりと学科を系統分けしてご紹介しましたが、いろんな学科をミックスしたような学科は沢山あります。
例えば、ロボットに関する学科では、IT技術や電気系の技術、機械システムの技術を全て学べたりします。
また、最近では、下記のように、工学の基礎知識を学び、その楽しさを生徒たちに教えれるような先生になることをメインにしたユニークな学科もあります。
工学部と他の学部の違い
理学部との違い
理学と工学は同じ理系ですが、目的が全く違います。よく言われるのが、『理学の目標は真理の探求、工学の目標は人類の幸福』という言葉です。
理学は自然科学の謎を追求することを目的としています。一方、工学はあらゆる知識を新しいモノづくりに役立てることを目的としています。
例えば、雨の日はなんでじめじめしてて湿気が多いんだろうか?という理由を探るのが理学です。そして、理学から分かった湿気の知識から、除湿器を作り出すのが工学です。
なんとなくイメージがついたでしょうか?
工学部でも追及し続ければ、理学の分野に足を踏み入れる必要がでてきますし、逆に理学の内容を応用していくと工学の分野に足を踏み入れることになります。
ですから、工学部に入学しても、理学部のようなことを学ぶ学科もあれば、逆のパターンもあります。
理工学部という学部があるくらいなので、学科によっては理学と工学の垣根が曖昧な場合もあります。
理工学部との違い
理工学部は理学と工学をミックスした学部です。
詳しくは、こちらの記事をお読みください。
文系学部との違い
自然科学ではなく人文学を学ぶのが文系です。
人文学とは主に文化・風俗・法律にまつわるもので、人間の作ったルールや考え方を分析したり、新たに作っていく学問です。自然科学に根ざしたものではなく、人間に根ざしたものを考えることが特徴です。
ただ、人間自体は自然に影響されて生きています。そのため、最近では自然科学(理系)と人文学(文系)の両面から分析していく学部も設けられるようになりました。
例えば、総合人間学部といったような学部がそれにあたります。
このように、最近では、理系と文系の垣根が曖昧な学部も沢山あります。
工学部を卒業した後の主な進路と学科による違いは?
進学する人の割合が高く、就職率も高い工学部
文部科学省の平成28年度 学校基本調査によると、工学部を卒業した学生の37%が進学していることがわかります。これは理学部の42.5%の次に高い進学率です。
また、正規職員に就かなかった人の割合も一番少なく、就職活動した学生のうち、正規職員に就いた人の割合がとても高いと言えます。
※平成28年度 学校基本調査 図7 分野別卒業者の進路状況より
工学部卒業者の就職先
全国的な統計をご用意できませんが、工学部で学んだことを活かして就職する場合が多いと言えます。特にメーカー企業に就職する人が多いのではないでしょうか。
例えば、民間企業への就職希望者に対する就職者割合は98.8%の久留米工業大学卒業者の進路先は下記のようになっています。
機械システム工学を学んだ学生は機械系の企業に、建設系を学んだ学生は建設業やハウスメーカーに…と、学んだことを活かして就職している傾向が伺えます。
こちらにも、工学部の就職先や業界についての記事がありますので、よろしければ参考にお読みください。
また、最近の学生に人気の職業のランキングもありますので、気になった方は是非チェックしてみてください。