理系の就職先や職業から考える!理系大学の学部選びのポイント

高校で理系を選択したものの、大学の学部選びで迷っている方もいらっしゃるでしょうか。10代は、外からの刺激をたくさん受け、目標や考え方が変わることの多い年齢でもありますし、悩むことで大きく成長する時期でもあります。ぜひ大いに悩み自分自身と向き合い、将来について考えてみてください。

今回は理系の主な学部と主な就職先をまとめました。学部選びの参考にしていただければ幸いです。

理系は就職に有利というのは、本当?

「理系は就職に有利」と言われることが多々ありますが、近年は少し状況が変わってきています。厚生労働省が発表している「平成30年3月大学等卒業者の就職状況」によると、大卒における文系の就職率は98.2%(前年同期比0.9ポイント増)、理系の就職率は97.2%(同1.5ポイント減)。つまり、文系も理系も就職率は、ほぼ同じとお考えいただくといいでしょう。以前は理系のほうが就職率は高い傾向にありました。でも現在は、売り手市場が続いていることもあり、就職内定率に大きな差はありません。ただ、理系の就職のほうが時代に影響されにくく、安定しているとは言えるでしょう。

また理系は就職先として専門的・技術的職業を選ぶ人が多い傾向にあります。文部科学省が発表している「学校基本調査(平成30年度速報)」をもとに算出すると、工学部の80%、理学部の56%、農学部の42%が専門的・技術的職業従事者として就職。一方、代表的な文系の学部である人文科学部だと15%、社会科学部だと12%にとどまっており、この点も大きく理系と文系では異なります。

※専門的・技術的職業従事者に関する数値は、大学院等への進学者のうち就職した者も含みます

学部別 理系出身者の主な職業

多少大学により名称が異なる場合もありますが、理系の主な学部は、「工学部」「理学部」「農学部」「医学部・薬学部」です。このうち、工学部はモノづくりのためのより実践的な知識や技術を学ぶ学部、理学部は高校で学んでいるような理科や数学をさらに深く学ぶ学部だとお考えください。

まずは、学部別に理系の学生が卒業後に進む業界や業種、職業をご紹介します。

工学部

学科により卒業後に進む業界が大きく変わってくるのが工学部です。主なところとしては、自動車・輸送機器、電機・機械、鉄鋼といった「製造業」、家やビルを建てたり管理したりする「建設・不動産業」、IT関係の事業を行う「情報通信業」、自治体職員や教員といった「公務」が挙げられます。

職業としては「研究」「エンジニア」「品質管理、生産管理」「自動車、航空整備士」「建築士」「プログラマ、システムエンジニア」などを選択する人が多いです。高校生の皆さんにとってはもしかしたら少し意外かもしれませんが、理科や数学の教員、工業高校の教員になる人もいます(何の教員免許が取得できるかは大学により異なりますので、進学する際はご注意ください)。

※こちらも参考になります

理学部

「学校基本調査(平成30年度速報)」によると、理学部の場合、全体の22%が「情報通信業」、15%が「製造業」を就職先として選んでいます。一方、工学部とは異なり、事務(17%)や販売(19%)といった職業を選ぶ人も同程度いるのが特徴です。また9%が教員になっています。

数学や物理を専攻した学生は、論理的思考が身に付いていたり、分析能力に優れていたりしますので、こういったスキルを武器にエンジニアやアナリストの道を選びやすいでしょう。化学系の場合は、メーカーで化学繊維や薬、食品などの研究開発にかかわったり、高品質な製品を安定的に供給できるよう品質管理に携わったりする人が多いです。新薬情報担当者(MR)などは、特に化学系の出身者が歓迎される職業のひとつ。生物学、生命科学系だと、製薬メーカーや食品メーカーの研究開発や製造技術にかかわるほか、大学のカリキュラムによっては臨床検査技師を目指す道もあります。

農学部

農学部の中でも獣医学科は当然多くの人が獣医師になります。その他の学科については、幅広い業界へ就職。専門以外の分野に就職する人が58%と理系の中では多いのが特徴です。専門性をいかす場合、製造技術者や農林水産技術者、土木・測量技術者の道が選ばれる傾向にあります。一方で、工学部・理学部で多かった「情報通信業」に就く人は4%程度とあまり多くありません。専門分野以外だと、販売が27%、事務が17%です。

種苗メーカーの研究職や育種、大規模農園などで、学生時代に学んだ知識を活用して働く道のほか、農学部出身者に人気があるのが食品業界。品質管理や製造技術職、研究職、営業職など多方面で活躍されています。

医学部・薬学部

医学部や薬学部といった保健関連学部は91%が専門性をいかして就職。医師や歯科医師、薬剤師、保健師、看護師などとして医療機関に勤務する人が多数ですが、専門性をいかして企業や自治体に就職する道もあります。製薬会社で新薬の研究開発に携わったり、医療系ベンチャー企業を起業したり。また厚生労働省には医師免許を持つ国家公務員として「医系技官」という立場の人がいます。医系技官は、保険医療に関する制度づくりの中心となって働きます。

理系学生に人気の企業

学部ごとのイメージがつかめたところで、具体的にどういった企業が人気なのか、マイナビの「2019年卒 大学生就職企業人気ランキング 」をもとにご紹介していきます。比較的安定したイメージの誰もが知る大手企業に票が集まっています。

第1位:ソニー

1番人気のソニーは、文系でも第7位に入っており、文系理系問わず就職を希望する学生の多い企業です。テレビやデジタルカメラ、スマートフォン、ウォークマンなどの定番商品に加え、近年は、ペットロボット(自律型エンタテインメントロボット)aiboが話題になるなど、技術力の高さに定評がありますね。

第2位:味の素

第2位は味の素。理系女子に限定すると1番人気でした。味の素に限らず、食品・飲料メーカーは理系女子の人気もあり、多くの企業が票を集めています。なじみのある商品が多く、メディアなどで技術力の高さをアピールしていたり、商品開発秘話が公開されたりと、理系学生にとって身近な存在となっているのでしょう。

第3位:明治グループ

第2位の味の素に続き、第3位も食品メーカーがランクイン。明治グループは「きのこの山」などのお菓子や、「R-1」などの乳業といった誰もが知っているような商品に加えて、Meiji Seika ファルマ株式会社で医薬品の提供も行っています。幅広い事業展開と優れた研究開発力は学生にとって魅力のひとつとなっているのでしょう。

第4位~10位

第4位以降は、4位カゴメ、5位サントリーグループ、6位森永乳業、7位NTTデータ、8位資生堂、9位トヨタ自動車、10位アサヒビールと続きます。ここでも食品・飲料メーカーが入ってきています。トヨタ自動車とNTTデータは、理系男子に特に人気です。NTTデータは、NTTグループの中核を担っているシステム・インテグレーター専業大手で、積極的に海外市場への拡大を進めています。

まとめ:理系に進学予定の皆さんへ

今回は文部科学省の資料を中心に学部ごとにどういった分野に就職しているかご紹介しました。理系のほうが文系よりも、学生時代の専攻に就職先が影響する傾向はありますが、どの学部に進学しても可能性は無限にあることがお分かりいただけたでしょうか。

今、高校3年生で就職先のイメージまで持てず、進学先に迷っている場合も、焦る必要はありません。自分の好きなこと、学びたいことを優先して進学し、大学に入って学びながら将来について真剣に考えるのもいいでしょう。今の時代、就職先を日本に限る必要もありません。今はない新しい職種が生まれる可能性もあります。

もちろん、将来の職業を決めている人は、より目指す道に近い学部・学科を選び、夢を叶えてください。