工学部の大学院で学べること、院に進学するメリットとデメリットとは

「卒業後は大学院に進むのか、進学しないで就職するか」。多くの大学生が進路に悩みます。工学部の場合、大学院への進学率は約37%。他の学部よりも進学率が高いと言えます。

工学部の大学院はどのようなところなのでしょうか?大学院進学のメリットとデメリット、入試内容などを交えて解説します。

工学部の大学院で学べること

一般的な大学院には、2つの課程があります。修士課程(2年間)と博士課程(3年間)です。博士課程は、修士課程を終えた後、より高度で専門的なことを学びたい場合に進む課程です。

最近では、博士前期課程(=修士課程)とそれに続く博士後期課程(=博士課程)と呼ぶことが多くなっています。

普通、「院に進学する」というと修士課程に進むことを意味します。

大学院では、学部で学んだこと基礎に、更に深く広く専門知識を学ぶことができます。

具体的には、学部生の時と同じように、院生用の講義を受けたり、実習を行ったりして単位を取る必要があります。しかし、学部生よりも研究に力と時間を多く注ぎます。

また、教授から直接指導を受ける機会も大幅に増えます。日本各地、場合によっては海外の学会に参加して論文を発表することもあります。

カリキュラムには記載されていないことを学び、経験することができるのです。

工学部の大学院に進学するメリット

個人的な意見ではありますが、工学部の場合、大学院の進学はメリットがたくさんあると言えます。

就職の選択肢が増える

「院に進むと就職が大変」と言われることがありますが、工学部はそんなことはありません。むしろ就職時の選択肢の幅が広がります。

工学は、学んだ知識や技術を活かしてモノを作ることで、人や社会を豊かにすることが目的の学問です。他の学部よりも、より実益性が高い学部と言えるため、学んだことをより仕事に結びつけられるとも言えます。

また、大学院の2年間で世の中の様々なことを学ぶ機会が増えますし、就職先についてじっくり考えることができます。

初任給が高い場合がある

会社によって異なりますが、一般的に学部卒よりも大学院卒の方が初任給が高い場合が多いです。公務員の場合も、大学院卒の方が初任給が高く設定されています。

ただし、大学院卒は学部卒に比べて2年間働いていないので、その分の給料が学部制に比べてマイナスだという考え方もあります。

プレゼンが上手くなる

学内外で論文や研究成果の一部を発表する機会が大幅に増えます。人前で説明し、質問を受けたら答える必要があるので、自然とプレゼン能力が上がり、度胸も身に付きます。

教授たちからの指導

「常に最前線で活躍しているトップクラスの研究者=教授」から学べる機会が増えるのは、何よりのメリットです。人生でこのような機会に恵まれることはなかなかありません。教授からは、知識や技術だけではなく、ものごとの捉え方や考え方なども学ぶことができます。

海外など、様々な場所に行くチャンスがある

研究室によっては、国際的な学会に参加することができます。また、研究のために海外の大学へ行くという院生もいます。私の研究室には、研究データを取るために大西洋のど真ん中で約1カ月間、大型船に乗って過ごすという興味深い体験をした院生もいました。

工学部の大学院に進学するデメリット

メリットの多い大学院への進学ですが、逆にどのようなデメリットがあるのでしょうか?

お金がかかる

大学院の入学料と授業料が必要です。また、専門書等の購入、研究室によっては学会出席のために交通費がかかったりと、地味にお金が必要になってきます。

就職が2年間遅れる

学部生と比べて、2年間働く期間が減ります。2年間の社会人経験をデメリットと考えるか、大学院の経験をメリットと考えるかの違いですから、ここは人それぞれです。

工学部の大学院入試の内容は?

大学院とその分野によって異なりますが、一般的には

  • 筆記試験:専門分野の知識問題と専門英語の問題
  • 口頭試験(面接):出願時に提出した出願理由や研究計画書、卒業論文などを中心に問われる

が課されます。

これらに加え、最近では、TOEIC、TOEFL(iBT, PBT)又は IELTSといった英語資格試験のスコアを一般英語の成績とする大学院が増えているようです。

そのため、大学院に行くと決めたら、早めに英語資格試験を受験しておく必要があります。院への進学を考えている人はHPなどで募集要項をチェックしましょう。

大学院卒業後に考えられる進路

修士課程(=博士前期課程)終了後、就職する人が多いと言えます。もちろん、博士課程(博士後期課程)に進学することができます。

就職先は大学卒の進路とほぼ変わりません。研究開発関係の仕事を意識する人が若干増えるといったくらいです。やはり人気の就職先はメーカーやIT企業。エンジニアとして働きたいという学生が多いようです。

就職率も大学卒、院卒で違いはあまりありません。工学分野卒は、総じて就職率が良いと言えます。

院の場合は、学会などで企業の人と交流する機会も増えます。また、教授から推薦を受けられることが多いので、就職に困ることはあまりないと言えます。

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