

ハイブリッドエンジンから電気自動車、
そして自動運転へ。環境への対応や自動化、
無人化の波のなかで、クルマは新たな“道”
を模索しつづけている。まさに地球規模の社会問
題だが、日々のカーライフにおいてもやっかいな問
題が横たわっている。
パーキングである。クルマであふれた駐車場に入ってし
まい、空きスペースを探してダラダラとさまよう。「あッ、
あそこが空いてるッ」と喜んだのもつかの間、別の1台に
スーッと入られて苦笑い。あげく、入り口まで戻って、片っ端
から空きを探してノロノロ運転に時間を費やす。ドライバーな
ら誰もが一度は経験する日常的な、しかし大きな問題である。
あの無駄な時間、あのストレス、あのイライラをどうにかでき
ないものか……。
“いま、そこにあるニーズ”に応えて、新たなプロジェクトが
動き出した。
駐車場の空きスペースを見つけて、無駄なく、無理なく、安全にとめる。そのために開発されたのが「AIスマートパーキングシステム」である。
これは、本学の情報ネットワーク工学科と株式会社キューオキ(以下キューオキ)とのコラボによって開発された。中心となったのは、AI応用研究所長でもある千田陽介教授である。
開発の重要なキーワード、そのひとつが「エッジコンピューティング」である。これは、カメラやセンサーを活用して当該の環境から必要な情報を収集し、そのデータをコンピュータでダイレクトに解析するというもの。遠隔的な処理ではなく、データの発生現場に近い場所(エッジ)で情報処理を完結する。これが重要なポイントである。
特長は、データ伝送の簡素化と解析時間の短縮化。クラウドや離れた場所に置かれたサーバーを経由しないため、遅延の少ないリアルタイムなデータ解析が可能となる。これを実現したのが、沖電気工業株式会社が開発し、キューオキが提供しているAIエッジコンピュータ「AE2100」である。
「AE2100」は、幅およそ25センチで高さ約5センチ、奥行きも16センチほどしかない。ちょっとした菓子箱ほどのボディである。「この小さな筐体で高度なAI処理を可能にしたのが画期的」と千田教授は語った。
駐車場に設置された数台のカメラで各エリアの混雑状況をキャッチ。収集された画像データが「AE2100」でAI処理される。各車室の空き状況が駐車場のマップ(俯瞰図)に色分けで表示され、「このスペースが空いている」「ここを曲がればいい」「このスペースは別のクルマも狙っているから、こちらのスペースに向かうほうがいい」といった具体的なアドバイスとなってドライバーに提示されるのである。
駐車場の経営者や管理者のメリットも見逃せない。従来、このようなシステムを構築しようとすれば、駐車場の天井や地下に大きなデバイスを設置するなどの大規模な工事を要した。消費電力も小さくない。しかし、「AIスマートパーキングシステム」に必要なのは、監視カメラと「AE2100」と管理用のサーバーのみ。つまり、人件費や管理費が抑えられるうえ、各スペースの稼働率の集計も簡単なのである。
さあ、安心してとめるがいい。しかし、クルマと駐車システムの進化は止まらない。