航空業界で理工系の仕事はどのようなものがある?理系・工学部出身者が活躍している航空業界の仕事を紹介

人間が空へ飛び立つことができてから、114年。宇宙へと出かけることができてから、56年。古来より、人は空へのあこがれを少なからず持っているのではないでしょうか?

それは、その進化の過程で、海から陸、陸から空へとそのフィールドを広げて来た、生命体としてのDNAとも言えるでしょう。

航空業界の仕事とは、一言で言うと「人の命を預かる仕事」ではないでしょうか?

安全な飛行機を作る。安全運航を支える。「快適な空の旅」と一言で行ってしまうと簡単なようですが、その背景には多くの人が関わっています。

ここでは、そんな航空業界の仕事をご紹介します。

航空業界の仕事とは

航空業界の仕事は大きく分けて、「旅客」「貨物」があります。

この2つの違いは、「旅客」は人すなわちお客様を飛行機に乗せて安全に目的地に運ぶことがミッション、「貨物」はモノすなわち荷物を飛行機に乗せて迅速に目的地に運ぶことがミッションです。どちらも重要な任務ですね。

また、飛行機を飛ばすための業務、すなわち「運航」を主な業務とするエアライン(航空会社)と飛行機を開発〜製造までを担うメーカーとがあります。

航空業界で理工系の仕事はどのようなものがある?

特に理工系の出身者が多く関わっている航空業界の主な仕事には以下のようなものがあります。

乗務系

・パイロット

基本的に旅客機には、機長と副操縦士の2名が乗務しています。安全で快適なフライトに向けて、航空機を操縦し、運航のすべてを司る、責任の重い仕事です。

出発前に、航空日誌にパイロットはサインをします。フライトの最終的な判断は機長にあり、そのフライトに責任を持つという署名です。

パイロットは、あこがれの職業の一つですが、日頃から訓練や高度な技術な習得、健康維持など、ハードな側面もあります。

・客室乗務員(キャビンアテンダント)

旅客機の運航に欠かせないのが、客室乗務員(キャビン・アテンダント)です。客室乗務員は、運航する航空機の旅客の数により、一回のフライトでの乗員数が決まります。また、客室乗務員にはサービス要員と保安要員の二つの顔があります。

サービス要員としての顔は、お客様に食事や飲み物などを提供するサービスや、気分が悪くなった方のケアなどです。保安要員としての顔は、緊急事態になった際、お客様の命を預かる仕事です。また、緊急時以外でも、常に機内のいろいろな場所に気を配って安全確認をすることも安全運航には欠かせません。

参考サイト

地上系

・グランドスタッフ

グランドスタッフは空港を利用するお客様の搭乗手続きや荷物の預かり、搭乗ゲートから飛行機への搭乗をスムーズにサポートする役割があります。

また、到着後の荷物のサポートまで、まさにお客様の出発から到着までを見届ける仕事です。

・運航管理業務スタッフ(ディスパッチャー)

運航管理者は知る人ぞ知る職業ですが、実は「地上のパイロット」とも言われるほど、重要な任務を担っています。

パイロットは運航前に、自社のオペレーションセンターに出向き、運航管理者とブリーフィング(打ち合わせ)を行います。運航管理者は、パイロットに対し、出発便の飛行経路上の気象情報をもとに飛行航路を選択します。

また、搭乗するお客様の人数や貨物の数から飛行機の総重量を計算し、目的地まで運航するために必要となる燃料の量やその他運航に必要となるデータを機長に提示します。

機長と運航管理者で話し合って、フライトプランを作成し、運航管理者はそれにサインをします。

・航空整備士

航空会社が通常行う航空機の整備には、「機体整備(ドック整備)」と「運航整備(ライン整備)」があります。

ドック整備は車で言う、いわゆる車検にあたります。整備には飛行回数や飛行時間に応じで、整備の項目や整備時間が異なります。また、ライン整備は、毎日の運航前に行う、出発前の点検にあたります。

整備士はフライト前にこのライン整備を行い、航空日誌にサインをして初めて、フライトができるようになります。

久留米工業大学で航空機の整備について学べる学科

交通機械工学科

・グランドハンドリング

グランドハンドリング(地上支援)は、滑走路に降りた飛行機の安全な誘導やお客様が乗り降りするためのボーディングブリッジ(通路)やタラップを飛行機に取り付ける作業、お客様の手荷物や貨物の積み降ろしなど、地上での運航を支援する仕事です。

・航空管制官

航空管制官は、空港に離着陸する飛行機が安全で効率的に運航できるように、パイロットに地上から無線で指示を与えて交通整理をする仕事です。空港では管制塔とレーダー室とに分かれて、日本中の空域をカバーしています。

航空管制官は国家公務員であり、航空管制官採用試験を受験し、合格する必要があります。その後、航空保安大学校で1年間の研修を受けることが必要です。

・航空貨物

航空取扱貨物業務では、高付加価値であるもの、繊細な取り扱いを必要とするもの、緊急性を有するものを航空機で輸送します。

技術・専門職

・総合技術職(エアラインエンジニア)

主に整備部門の中に総合技術職のエンジニアが所属しています。

機械系、電装系など、それぞれの専門性に分かれていますが、総合技術職の名前の通り、航空機に係るさまざまな技術を体系的に知っている必要があります。

航空整備士の最上位の国家資格「一等航空整備士」を持つことで業務の幅、信頼性が上がるため、多くの人が挑戦します。

・ITエンジニア

日本の大手エアラインでは、IT部門を子会社化しています。今や、飛行機はITなくして安全に飛ぶことはできません。

運航系、整備系のシステムの担当は航空宇宙を始めとした、理系・工学系の専攻出身者も多く活躍しています。

・管理系職種

エアラインの整備部門にはいわゆる現場といって実務を担当する人以外にも管理系の職場があります。品質保証部や安全管理室などがこれに当たります。航空機の規程(マニュアル)の改定や日々の運航データを蓄積して品質管理をする業務です。

マニュアルの改定にもエンジニア的素養が必要ですし、運航データの品質管理には、統計学などの数学的素養も必要となってきます。

・その他

空港の気象観測所職員(気象庁職員)

航空気象観測所では、風向・風速・気温などのデータを自動観測し、また、航空機の運航に欠かせない、視程などを目視で観測し、その観測データを基地気象官署へ報告します。

基地気象官署では、報告された観測データのチェックを行い、航空局や航空会社、気象庁へ情報伝達しています。

飛行機・空港のお仕事図鑑

この他にも、航空に関する仕事はたくさんあります。

以下のサイトは、おもに空港での「裏方」的お仕事にスポットをあてたものです。

参考サイト

空港や航空会社以外で活躍できる理工系の仕事

空港や航空会社以外でも、さまざまな分野に理工系の出身者が活躍できるフィールドがあります。

航空機の設計・開発

日本で現在航空機の設計・開発をしている企業は、MRJを開発している三菱航空機、HondaJetを開発している本田技研工業です。

久留米工業大学で航空機の設計・開発が学べる学科

交通機械工学科

航空部品の開発・製造

・機械系

会社名に「◯◯重工」などが付く場合、航空機の機械系の開発・製造を行っていることが多いです。

・電装系

会社名に「◯◯電機」などが付く場合、航空機の電装系の部品の開発・製造を行っていることが多いです。

・機内装備品

機内装備にも色々ありますが、ギャレーという機内食を提供するための空飛ぶキッチンや、ラバトリー(機内化粧室)を専門に製造しているメーカーが日本にあり、世界でも有数のシェアを誇ります。

その他

・航空専門商社

会社名に「◯◯エアロスペース」などが付く会社が主に航空専門商社であることが多いです。

理工系で航空業界を目指している方へ

空へのあこがれを持ち続け、理工系への進学を考えている皆さん。今、もし理系科目が苦手で進学を迷っていたりしても、必ず道は開けます。ぜひ、その道に迷わず進んでください。夢というのは、「実現するか」、「あきらめるか」の2つしかないと言います。

HondaJetの開発をしているHondaの創始者、本田宗一郎さんはこんな言葉を残しています。

—–「飛行機はと飛び立つときより着地が難しい。人生も同じだよ。」

20年後のみなさんが、日本の空で、世界の空のフィールドで活躍していることを楽しみにしています。