航空整備士になるには?航空整備士の仕事内容や適性・求められるスキルとは

航空機を安全に運航するためには、毎日の運航前後及び定期的な整備・点検・修理が欠かせません。「航空整備士」は、航空機の安全運航を支える整備・点検・修理のスペシャリストとして重要な役割を担っています。

航空整備士を目指す上で、仕事内容や求められる適性などをご紹介させていただきます。

航空整備士になるには

航空整備士になる方法

航空整備士になるには、国家資格が必要です。

航空整備士の国家資格は複数あり、取得した資格によって携わることができる業務の範囲が異なります。

専門学校から目指す

航空整備士になるために必要な国家資格取得を目指す最短ルートは、高校卒業後に航空専門学校へ進学する方法です。

国土交通大臣指定の航空従事者指定養成施設である航空専門学校では、在学中に「二等航空整備士」や「二等航空運航整備士」の資格を取得することができます。

日系大手航空会社ANAグループ・JALグループと提携を結んだ専門学校では、実際の現場である空港で大型機を使った研修を行い、最短2年で「一等航空整備士」を目指すことが可能な上、卒業後にはANA・JALグループの整備会社で働くチャンスも与えられます。

大学から目指す

また、高校卒業後に四年制大学の航空整備コースや理工系学部から航空機の整備専門の会社に就職する道もあります。

専門学校ではなく大学へ進学し、航空整備士を目指す上でのメリットは、大学の4年間で工学に関する幅広い知識を身につけることができ、研究に携わることができるという点です。

航空整備士の仕事内容

航空整備士とは、航空機が安全に飛行するために航空機の整備・点検・修理を行う仕事です。

航空機は何万という数多くの部品が組み合わさったとても複雑な仕組みになっています。また、航空整備士が担当する整備業務は、エンジンをはじめとする機体部品だけでなく、機内のシートやギャレー内設備品まで多岐に渡ります。

そのため、航空整備士は各々専門のチームに分かれており、分担して整備・点検・修理作業を行います。

航空整備士の主な仕事には、ライン整備・ドック整備・ショップ整備と呼ばれる3つの仕事があります。

ライン整備

空港内の駐機場(スポット)に駐機された航空機の整備・点検をライン整備と言います。

ライン整備はフライト毎に行われる日常的な業務で、目視や超音波・X線を用いて点検を行います。航空機が駐機場に到着してから出発するまでの短い時間に行われるため、確かな技術とスピードが求められます。

ライン整備が完了し、整備士が「OK」サインを出して初めて航空機は運航されます。

ドック整備

空港内に設置された航空機の格納庫内で定期的に行われる保守整備・点検をドック整備と言います。

ドック整備は、航空機の運航時間が一定の時間に達すると約1ヶ月〜2ヶ月という時間をかけて、エンジン、車輪、コックピット内のすべての部分、航空機を構成する各部品の整備・点検を行います。

ドック整備は長時間かけて行われるほか夜間に行われることもあり、忍耐力と集中力が求められます。

ショップ整備

航空機の頭脳部分であるコンピューターやエンジンの整備・点検をショップ整備と言います。

ショップ整備は、上位資格を保持する航空整備士のみが携わることのできるより深い分野の仕事で、高い専門知識と確かな技術が必要とされています。

航空整備士に必要な能力・スキル

航空整備士は、航空機の安全運航を支える重要な仕事です。

小さなミスが大きな事故につながりかねない業務であるため、高い専門知識と正確な技術はもちろんのこと、強い責任感と集中力を持ち、わずかな異常も見逃さないよう細心の注意を払いながら業務に当たる能力が必要とされています。

航空整備士は一人ではなくチームで業務に携わります。同じ航空整備士だけでなくパイロットや客室乗務員など航空機の運航に関わる多くの仲間との連携も重要になってきます。限られた時間で正確な情報を提供する必要があり、協調性やコミュニケーション能力も必要となります。

航空整備士は昼夜を問わずシフト制で業務に当たるため不規則な勤務時間に柔軟に対応できなければなりません。空港に勤務をする場合には転勤や海外勤務となる可能性もあります。どのような場所や状況においても同じパフォーマンスを維持できる精神力も求められます。

また、航空機の整備マニュアルは英語で書かれていますので英語読解力は必須です。時には、外国から飛来する航空機の整備・点検・修理を行うこともあるため、英会話力も必要になります。

航空整備士に関する資格

国家資格

航空整備士になるためには国家資格の取得が必要です。

整備対象とする航空機や業務の範囲によって航空整備士の国家資格は主に4種類あります。

航空専門学校在学中に国家資格を取得し、さらに上位の資格は航空整備士としての経験を積みながら取得を目指します。

大型機に関する国家資格

航空会社などで使用されている航空機の整備に携わるためには大型機に関する国家資格が必要です。

一等航空整備士

一等航空整備士は、大型機の整備業務全般に携わることができます。20歳以上で4年以上の航空機整備経験を有する人が取得可能です。一等航空整備士は、B777やB787というように航空機の形式限定となっているため、整備に携わる航空機の種類が限定されます。現場にて経験を積みながら取得を目指します。

一等航空運航整備士

大型機のライン整備及び軽微な修理に携わることができます。18歳以上で2年以上の航空機整備経験を有する人が取得可能です。一等航空運航整備士は、一等航空整備士同様に航空機の形式限定となっています。

小型機に関する国家資格

セスナ機やプロペラ機などの小型機の整備に携わるためには小型機に関する国家資格が必要です。

二等航空整備士

小型機の整備業務全般に携わることができます。19歳以上で3年以上の航空機整備経験を有する人が取得可能です。

二等航空運航整備士

小型機のライン整備及び軽微な修理に携わることができます。18歳以上で2年以上の航空機整備経験を有する人が取得可能です。

航空整備士に向いている人のタイプ

航空整備士は、航空機の安全運航に直接関わる重要な役割を担うため、航空機を飛ばすための知識や法律を学ぶだけでなく、機体を扱う訓練を重ね技術を磨かなければなりません。

航空機は日々最新機器へとアップデートし続けていますし、上位資格取得には一定の航空機整備経験が必要になるため、働きながらも日々勉強を重ねスキルアップを図る必要があります。

航空整備士は、 航空関連技術職の中でも「一生勉強」と言われるほど勉強が必要と言われていますので、向上心と成長意欲を持ってコツコツと学び続けられる人に向いています。

また、最新の科学技術や複雑な航空機の仕組みに触れられることや、チームで協力しながら航空機の安全運航を支えることなどから、機器に触れるのが好きな人や、誠実さを持って仲間と協力し合う姿勢で業務に臨める人には最適です。

航空整備士の給料・待遇

航空整備士の給料は勤務する会社によっても多少の差はありますが、基本給+諸手当が一般的です。

航空整備士の給料の例を挙げると、ある程度の経験を積んだ30代で年収400万円前後、40代では年収600万円前後となっています。賞与は年2回支給される場合が多いです。

航空整備士は資格を有する専門技術職であることから、上位資格を取得してより高い技術を身につけていくことが昇給に繋がります。

航空整備士の待遇・手当は、シフト手当・夜勤手当・時間外勤務手当・資格手当等 があります。

大手航空会社のグループ会社の場合には、寮や社宅の用意をはじめ優待航空券の利用等充実した福利厚生制度が設けられています。

航空整備士の将来性・需要

航空整備士の将来性・需要は、拡大傾向にあります。

国内では、近年のLCCの就航をはじめ各航空会社が路線拡大及び保有機材の増加に力を入れており航空業界全体の需要が高まっています。また、世界的に見ても航空需要が増え続けており、日本だけでなく世界中で航空整備士の需要が高まっていると言えます。

かつては男性の仕事というイメージが強かった航空整備士ですが、近年では女性の航空整備士も多数活躍しています。航空機がより身近になる中で、航空機の技術進歩と航空需要の高まりから、航空整備士が活躍できる場はより一層増えていくでしょう。

航空整備士や航空分野の仕事に興味がある方へ

航空機が駐機場を離れて滑走路へと進んでいく様子を見送っている航空整備士の姿を目にしたことがあるという人も多いと思います。

「航空整備士にとって航空機は自分の子供のように大切な存在。」「それぞれの航空機が異なる性格を持っており、それをわかってあげるのが自分の仕事。」と、航空整備士は口を揃えます。

航空整備士が「離陸OK」のサインを出さない限り、その航空機は飛行することができません。航空機の安全は、航空整備士の手にかかっていると言っても過言ではないのです。

非常に大きなプレッシャーの中で働く仕事ですが、一機一機誠実に向き合って整備を行い、その航空機を無事に送り出すことができたときには、やりがいと達成感を感じることができます。

新人もベテランも一緒になって各々の役割を正確に担いながら航空機の安全を支える航空整備士の仕事はやりがいや魅力の多い仕事です。

高校生のうちから今後進みたい方向性を考え、航空整備士に必要な能力やスキルを磨き、コツコツと勉強を続けることとで、将来現場に出たときには即戦力として活躍することができるでしょう。

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