自動運転の実用化はもうすぐ?実用化のメリットと技術開発の今をご紹介します

最近CMやニュースで取り上げられている「自動運転化技術」ですが、実際に自動運転とはどのようなものなのでしょうか?自動運転の車が当たり前のように道路を走っている世の中は訪れるのでしょうか?単純なようで実は分かりづらい自動運転について解説します。

自動運転が実用化されることのメリット

自動運転が実用化されると私たちには具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。

ドライバーの負担が減る

まずは「運転が楽になる」ということがあげられると思います。ドライバーは常に周りに注意をして運転をしなければならないので、車が代わりに周りの状況を判断し、ドライバーのサポートをしてくれればそれだけでドライバーの負担は減ります。また、今までは運転に集中していて車内の会話に入れなかったという人でも、完全自動運転が実用化されればドライバーも積極的に話の輪に入ることができドライブはより楽しいものとなるでしょう。

安全性が上がる

車の安全性の面でもメリットはあります。自動運転が実用化されることにより自動車のカメラやセンサーの機能がより精度の高いものとなります。そうなれば、人間だけでは判断の追いつかない状況において自動車が危険を察知・回避してくれるようになります。衝突防止の自動ブレーキシステムも自動運転化技術の一部ですので、実用化によって自動車事故件数が減少傾向にあるのが安全性のメリットが顕著に表れている例です。

自動運転の実用化はドライバーのストレス軽減だけでなく、歩行者や他車の安全性も高めるメリットがあるといえます。

自動運転技術開発がされている車種

自動運転化技術を搭載した車、これから搭載予定の車は世界にどのくらいあるのでしょうか。

主な自動運転化技術の搭載車種、搭載予定車種をまとめました。

国産車

・トヨタ(ヴェルファイア、アルファード)

2013年に自動運転車を発表したものの、安全技術への応用が目的であるとして自動運転化技術の実現には比較的否定的立場にいます。そのため他メーカーよりは車種が少ないものの、自動運転化技術搭載車自体は発売されています。

・日産(セレナ、エクストレイル、リーフ)

2016年夏、世界で初めてミニバンに自動運転化技術を搭載したことが話題になりました。プロパイロットという名前で発売されています。上記の様々なクラスの自動車に搭載され、自動運転の存在を世の中に広めました。

・スバル(レヴォーグ、WRX S4)

アイサイト・ツーリングアシストという名前で発売されています。自動ブレーキシステムではアイサイトの安全性は国が定める安全基準でもかなりの高評価を受け、今回の自動運転化技術でも期待が高まっています。

外国車

  • テスラ…モデルS、モデルX、モデル3
  • フォルクスワーゲン…ゴルフ、ティグアン、パサート
  • BMW…5シリーズセダン、X3
  • メルセデスベンツ…Eクラス
  • アウディ…A4、Q7、A3、Q2

上記のように、自動運転化技術を搭載した車種は各国で続々と登場しています。世界各国のメーカーが我先にと技術を競い合って開発・販売をしています。まだまだこれから多数の自動車に自動運転化技術が搭載されることが予想できます。

自動運転の技術はどこまで進んでいるの?

近年急速に技術が発達し市販に至っている自動運転化技術ですが、その技術はどこまで進んできているのでしょうか。

飛行機

自動運転化が最も進んでいる乗り物として挙げられるのが飛行機です。すでに現在オートパイロットにて運航している飛行機はあり、離陸した後にはたいていの運航を飛行機が行っています。国によってさまざまですが、ある国では一定高度を超えると手動で飛行することを禁止しています。飛行機はそれほどまでに自動運転の技術が進んでいるのです。

自動車

では自動車に関してはどうでしょうか。後に記載しているレベルで見ると、現在市販されているのはレベル0~5のうちレベル3までですが、レベル3での市販はまだまだ数が少ない現状です。そこで実質的にはレベル2までと考えると、現在では大体半分程度のところまで技術は発達してきているように思えます。

しかし考え方を変えると見方は全く変わってきます。すでに販売がされている車ではレベル2が大半ですが、現在国内で実走行試験がされている車はレベル4の段階まで来ているのです。走行試験ができるということは、技術的開発が十分なところまで来ているということです。技術は常に発達し続けています。ここ数年で自動ブレーキシステムが一気に普及したように、高度な自動運転化技術も急速に発達する可能性があります。

自動運転の実用化・研究開発に関するニュース

世界では様々なメーカーが自動運転化について技術を切磋琢磨しています。

いくつか自動運転の技術についてのニュースを集めてみました。

① NEC:走行中の自動車同士がお互いの位置情報を即座に確認できる技術を開発

上記は2018年2月に発表されました。この技術は自動運転には欠かせない情報の取得の面でかなり貢献しているといえます。2020年代前半に交通インフラへの応用を目指しています。

② 日本での自動運転実験を実施

国土交通省が日本国内でバスの自動運転実験を行うことが決まりました(2018年2月時点)。実験は5日間で、そのうちの1日を運転手不在のレベル4での実施をするそうです。この実験での技術が認められれば、過疎地域での移動手段として実用が見込まれそうです。

上記のどちらも自動運転の発達・実用化に大きく貢献しているといえるニュースです。

自動運転に関するニュースは世界で毎日のように経済新聞等に掲載されています。それだけ急速に技術が発達しているということですので、これからも目が離せません。

自動運転のレベルとは?

自動運転には0~5までのレベルが存在します。レベルごとに簡単に解説します。

レベル0(自動運転化技術なし)

すべての操作をドライバーが行う自動車です。自動運転化技術が一切搭載されていない自動車になります。

レベル1(運転支援)

加速(アクセル)・操舵(ハンドル)・制動(ブレーキ)のいずれか一つをシステムが支援してくれる状態の自動車です。衝突防止の自動ブレーキなどが該当します。現在の国産車では多くの自動車に自動ブレーキが搭載されていますので、自動運転レベル1をクリアしていることになります。

レベル2(部分運転自動化)

加速・操舵・制動のうち複数の操作をシステムが行ってくれる状態の自動車です。

現在国産メーカーから販売されている自動運転化技術搭載車(トヨタセーフティセンス、日産プロパイロット、スバルアイサイト・ツーリングアシスト)がこのレベル2に該当します。

レベル3(条件付運転自動化)

限定された条件下でシステムがすべての操作を行ってくれる状態の自動車です。しかし、システムがドライバーに運転操作を要請した時にはドライバーが応答しなければなりません。

2017年夏に発売されたアウディA8が世界初となるレベル3の自動運転システム搭載車として話題になりました。

レベル4(高度運転自動化)

基本的にはレベル3と同じですが、違いはシステムからの要請に対してドライバーの応答が不要だということです。現在このシステムは無人ダンプなどの特殊な環境で運用されているもののみで、市販はされていません。

レベル5(完全運転自動化)

いかなる状況下でもすべてのシステムを操作することができる自動車です。もちろんドライバーの介入は必要ありません。

ここまで自動運転のレベルについて解説しましたが、わかりづらいのはレベル2とレベル3ではないでしょうか。どちらもほぼシステムが操作をする、という面では同じですが、大きな違いは万が一の際の責任がどこにあるか?ということです。レベル2に関しては責任がドライバーに、レベル3に関しては責任がシステムにあります。ただし、レベル3についてはシステムからの要請があった際には責任はドライバーになります。

実用化の時期は?

既にレベル3までの自動運転化技術搭載車が発売されていますが、レベル5の自動車が実用化されるまでにはどのくらいかかるのでしょうか。

実は国土交通省が発表している方針には、レベル5の実現時期の記載は一切ありません。政府方針では、高速道路でのレベル4の実用化を2025年までに実現するというシナリオを策定しています。

しかし、一般道でのレベル4の実現シナリオは発表されていません。方針発表が2017年、高速道路での自動運転実現が2025年と8年かかる見通しになっていることを考えると、レベル5が一般道で走る日はまだ少し遠い未来の話に感じるかもしれません。

ただ、前述したようにレベル4の車がすでに走行実験の段階まで来ています。技術は急速に発達しているのです。もしかすると数年後には一般道を自動運転の車が走っているのかもしれないのです。

自動運転の安全性は?

自動運転車の安全性はどうなのでしょうか。現在自動車事故が起きている原因の9割はヒューマンエラー、つまりドライバーのミスによる事故だそうです。事故原因であるドライバーが関与しないレベル4,5の自動運転技術搭載車は安全性がかなり高くなりそうです。

しかし、ドライバーの応答が必要なレベル3までの自動車はどうでしょう。特にレベル3は緊急時にドライバーに応答を促します。気を抜いていたドライバーが急に要請を受けて適切な判断とハンドル操作等をできるかを考えると難しいのでは、という指摘があります。確かに人間よりもはるかに優れるであろうコンピュータができないことを人間が瞬時に判断、反応することは難しいかもしれません。

現在市販されているレベル3までの自動運転化技術搭載車種は、あくまでドライバーの補助的システムであることを念頭に置いて運転することで非搭載車と比較すると安全性は格段に上がるのではないでしょうか。

実用化に向けての課題

ここまで自動運転車について解説をしてきましたが、実用化するためには見過ごせない3つの課題があります。

法整備

まずは法律の整備です。現在の日本の法律では、運転者による車両の操縦を義務付けられています。つまり、いくらドライバーの操作が必要ない自動車が開発されたとしても、法律の問題でそれを市販することができないということです。このほかにも、万が一自動運転技術が搭載された自動車が事故を起こした時の損害賠償責任なども見直しが必要になります。

事故の際、責任が運転者にあるのか、自動車の欠陥が原因で製造者に責任があるのか、はたまたコンピュータなどに攻撃をした第三者に責任があるのかなど、事故ごとに過失割合が複雑化し、損害保険にも影響がでるのではないか、という懸念もあります。この賠償責任の問題に関しては、警視庁・国土交通省・経済産業省がそれぞれ有識者会議を開催し検討が進められているようです。

システム開発

自動車が自動運転をするために最重要なのはなんといってもAIの発達です。しかし、技術発達が急速に進む中AIの発達というものはそう簡単にはいきません。人がその道のプロになるために何年も経験を積み重ねることが必要であるように、AIにもありとあらゆる状況での運転を学ばせる必要があるからです。AIが自ら考え、数多の選択の中から最善の答えを選ぶためには、膨大なデータが必要になります。AIが安全に運転できるほどのデータが集まるまでには、しばらくの時間が必要かもしれません。

もう一つ重要なのは車が周囲の状況を把握するために必要になるカメラやセンサーの開発です。すでに存在するシステムの高度化が必要になります。より距離感などの誤差を縮め、障害物などを見極められるような技術が必要です。そのためには車を生産するメーカーだけでなく、より高度なセンサーやカメラを開発することのできる企業との提携は欠かせません。

インフラの整備

そして三つ目に、インフラ整備の課題があります。車がその瞬間の道路の状況を把握するためのリアルタイムなマップや、道路そのものの工事が必要な場合もあります。

人間が目で見て車線を把握するように、自動車もカメラで白線を認識して走行します。ではその白線や標識が認識しづらい状況にあったらどうなってしまうのでしょうか。

まずは白線などの外部の情報がしっかりしていないと、車は混乱してしまいます。レベル3の自動車であればドライバーに操作を要請することができますが、レベル4になってくるとそうはいきません。レベル4,5になってくると、車のカメラ、センサーの発達はもちろん、基本的な道路の状況も整えなければならないのです。

自動運転の実用化はもうすぐそこ!

いかがでしょうか。自動運転化技術は私たちが思うよりも複雑で、ずっと奥が深いものだと思います。

今ではエアバッグが当たり前に車に装着されていますが、1980年代後半はエアバッグがついていない車のほうが当たり前だったのです。同じように、現在はまだ自動運転化技術の搭載されている車は珍しいかもしれませんが、十数年後にはついていない車のほうが珍しいという時代が訪れるかもしれないのです。

現代の自動車の技術は急速に発達していますが、自動運転が市街地を走る未来を創造するには、自動車の技術だけでなく、周りの環境も自動車の技術に追いつき、それをサポートしなければいけないのです。